意識が変わると、職場が変わり
企業価値が上がる

働き方改革優良事例11 株式会社大京 広島支店

やる気や誇りをもって働ける職場・組織に
従業員自ら問題提起し解決する「職場改善プロジェクト」

 大京グループでは、平成33年3月期までの中期経営計画として、「Make NEW VALUE 2021~不動産ソリューションによる新・価値創造~」をテーマに、既存事業の強化とさらなる事業拡大を図っており、これまでにも増して“人財の確保”と“生産性の向上”が急務とされていた。大京広島支店の働き方改革は、そうした背景を受けて始まるのだが、久保支店長は取組が始まった経緯を以下のように語ってくれた。

「新しいことを取り組む際、頼りになるのは従業員一人一人の力です。彼らに思う存分力を発揮してもらうには、職場・組織そのものが変革する必要があります。では、働きがいのある職場はどうやってつくればよいのか。われわれの働き方改革は従業員へ問い掛けることからスタートしました」

 そう語る支店長の言葉からも分かるように、“どうするか?”を考える主体はあくまでも従業員自身である。つまり同社では、従業員一人一人が働きがいのある職場づくりを真剣に考えることによって、やる気や誇りがみなぎる職場・組織に変えていこうとしているのだ。

 そして、その具体策として行われているのが、「職場改革プロジェクト」である。大京グループで進められている「職場改革プロジェクト」とは、職場改革を実現するために、従業員自ら職場の問題や課題を洗い出し、解決するために必要な施策を取りまとめ、経営層へ提言する全社的な活動である。実際に活動を推進するチームは支店ごとに編成され、「わくわくワーク委員会」や「誇れる会社委員会」といった名前で呼ばれている。

 ちなみに、従業員の提言により始めた広島支店独自の活動には、ノー残業デーやプレミアムフライデー該当日の「ポスター掲示」、定時退社の意識定着を図る「定時退社宣言カード」、職場の枠を超えた毎月初めの「グループ全体朝礼」、広島エリアのグループ会社の女性従業員による女性の働きやすさなどについて気軽に話し合う「ランチミーティング」の開催などがある。個々の職場だけでなく、グループ企業全体でのコミュニケーションが円滑になるよう取組を工夫している。

意識の“見える化”で定時退社や有給取得を促進
定時退社宣言カードの導入やイントラネットによる一括管理

 前述の取組の中から、いくつか紹介する。
 久保支店長が「女性陣の力作です!」と紹介してくれた「定時退社宣言カード」は、スケジュールや定時退社の“見える化”に大きく貢献している。これは定時退社をする際、従業員が机の上に提示するカードだが、定時退社の他に直帰や食事中など、さまざまなバージョンが色分けされ、同社のオリジナルキャラクターのイラスト付きで作成されている。カードごとに色を変え、カラフルにすることによって、遠目からでも「今日は残業なしだな」とすぐ分かるので、時間に対する本人の意識付けはもちろん、周りからの協力も得やすくなるそうだ。

 ノー残業デー(フレッシュアップデー)やプレミアムフライデーには、従業員の意識付けを目的とした「ポスター」が掲示されるが、単身赴任者の多い同社では、プレミアムフライデーの導入は「帰省しやすくなった」と大歓迎されているようだ。

 こうした取組の効果もあり、大京広島支店では月平均の残業時間が8.41時間減少(前年比)。有給休暇取得についても、これまで下期に残した有給休暇を消化しきれない傾向があったため、上期に3日以上の取得を推進し、各自年間スケジュールを確認した上で、閑散期に前倒しで休みが取れるような計画年休日を作成。それをイントラネットに入力し、支店全員に年休取得状況の“見える化”を図った。また、毎月月初に年休の取得状況を上司を含め、全従業員と共有する。計画通り年休を取得できなかった従業員にはヒアリングの上、次回は必ず取得できるよう働きかけている。その結果、前年28.3%だった有給休暇取得率が67.7%にまで改善された。

 休めるようになったことも成果だが、組織内でどこに業務が集中しているかが見えるようになったのも大きなメリット。今後はこれをヒントに、業務の平準化・効率化を図り、より休みも取りやすい環境づくりに努めていきたいと考えている。

 「ランチミーティング」は、広島エリアのグループ会社を含めた全女性従業員を対象に開催されている。ランチミーティングで出た意見は議事録としてまとめられ、その後の支店運営にも活用されている。例えば、前述の「定時退社宣言カード」の作成もだが、広島支店ではそれまで女性従業員が担当していた受付清掃業務を、男性・女性・役職に関係なく、全従業員が当番制で担当するようになった。このように、本来業務以外の部分の小さなことから平準化につなげている。その他にも、このランチミーティングがグループ他社との情報交換の場となり、他社の好事例を自社に取り入れるなどしている。久保支店長は、「清掃当番はもちろん私にも回ってきますが、全然苦になりませんよ。当たり前のことです」と笑顔で語る。このような空気がつくれるからこそ、職場の意識改革も自然と浸透していくのだろう。この他にも、グループ従業員のために用意した「リフレッシュルーム」も居心地のいい空間になっており、職場でのオン・オフやちょっとしたコミュニケーションを取れる場所として、風通しの良い風土づくりに一役買っている。

企業のブランド価値に結び付く働き方改革
意識付けの次は従業員個々のレベルアップ

 今後の展開について、次のように久保支店長は語ってくれた。
「これまでの取組は、どちらかというと意識改革に重点を置いたものでしたので、意識付けはある程度できたと考えています。しかし、従業員から提言された課題をどう克服するかというと、現在の取組では十分とは言えません。私どもではES(Employee Satisfaction:従業員満足)なくして、CS(Customer Satisfaction:顧客満足)はないと考えております。これからは、従業員がリフレッシュできる時間の増加と業績アップが比例するよう、業務効率化と生産性の向上に取り組んでいきたいと思います」

 取組と業務を両輪として、それぞれの質を上げていくことが重要だと、久保支店長は考えているようだ。具体的には、「働き方改革を通して生まれたゆとりと業務の効率化を活用して、従業員がレベルアップを図ること」だという。

 一例として広島支店では、業務改善により、削減できた時間を活用して、営業職の従業員が集まって、建築について学ぶ勉強会を開催しているが、これも働き方改革とともに業務の改善を行っているからこそできるものだという。その結果、従業員の自己研鑽が進み、ひいては企業のブランド価値を引き上げることに結び付いていく。そのように長い目で見た成果を考えて、働き方改革をステップアップさせていくことが、これからの課題だと久保支店長は捉えている。

 従業員を代表して、総務経理担当の小井さんから、「定時退社宣言カードを導入してから、社内の意識も随分変わりました。早く帰りたい日はカードを提示していれば、自然と周りが協力してくれるので助かります。私自身も以前より効率を意識して働くようにもなりました」と、組織の変化と自分の中の変化を実感しているようだ。

 最後に久保支店長にメッセージを求めたところ、「広島支店における意識改革は、なんとか定着しつつあるように思います。これから取組を始めようとされる企業の皆さんも、まずは“早く帰る”、“休みを取る”といったカタチ(=制度を整える)から入ることをきっかけにしながら、一人一人の意識変化を促してみてはどうでしょう。本当に働きがいのある職場をつくるには、従業員が主体的に考える姿勢が大切です」と語ってくれた

会社概要

株式会社大京 広島支店
所在地:広島市中区中町6-13
URL:http://www.daikyo.co.jp/
事業内容:不動産開発・不動産販売・都市開発
従業員数:24名(男性21名、女性4名(派遣社員を含む))※広島支店のみ

情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com