年間休日増や子育て世代の応援で、
社員が幸せに働ける環境整備を推進
株式会社繁山興業
取り組んだ背景は?
~「ワーク・ライフ・バランス」の本格実現を目指して
福山市で土木工事・建築工事を手掛ける総合建設会社として、約30年の歴史を持つ同社。アスファルト舗装、上下水道工事など公共工事を中心に、事業内容は幅広い。そのため、年度末をはじめとした繁忙期は特に休みを取りづらいという問題を抱えていた。忙しい業界だからこそ、社員の「仕事とプライベートの両立」には以前から配慮しており、振替休日の取得推進などにより、2016年には「ふくやまワーク・ライフ・バランス」にも認定されている。
「これまでの取組を土台に、今後の当社がさらに良い方向に向いていけばと思い改革に着手しました」と代表取締役の繁山和典氏。
取組導入のプロセス
~年度末のミーティングで全社員に改革方針を発信
同社では、年度末に翌年度の年間休日等が記された会社カレンダーを社員に配布する。そのタイミングに合わせて、18年3月末、トップである繁山氏から働き方改革に取り組む旨を発信した。取組の3年間目標には、「ノー残業ウィークの実施(4・7月に各1週間ずつ)」と「有給休暇の取得を増やす(リフレッシュ休暇を年1回以上取得)」という働きやすい職場づくりに向けた、さまざまな取組を進めている。
主な取組と工夫点
~社員の声から、年間休日の大幅アップが実現
◆ヒアリングで社員の要望を吸い上げ休日大幅増
6月と12月に社員と個別に話す機会を設け、要望の吸い上げに力を入れている。同社の年間休日は、かつては92日しかなく、個別ヒアリングの際、女性社員から「休みが少なすぎる」という声が上がっていた。
「子どもの行事などで休暇を取っても、それでも少ないと感じていました」と話すのは、総務部の繁山さん。
同業他社の状況を調べると、多い会社は年間100日強であったため、これを参考に、18年度には年間休日を105日に設定。休日に出勤した場合は振替休日を取ることも徹底した。
また19年度からは、総務部に完全週休2日制の導入が決定した。年間休日は125日に増える予定だ。さらに、工務部も段階を踏みながら年間休日を増やしていく方針で、最終的には120日という目標日数を掲げている。
◆制度の柔軟な対応で子育て世代を応援
総務部の女性社員には子育て世代が多く、「子どもの都合に合わせて、半日だけ休みたい」という要望も前々から寄せられていた。そこで、16年度から半日単位で有給休暇を取れる制度を導入。事前申請とすることで現場の調整もしやすくなった結果、工務部内などでも利用する社員が増えた。参観日をはじめとした子どもの行事には、100%出席できるようになったという。
さらに、子どもの病気などで急に出勤が難しくなった場合も、有給休暇に振り当て、安心して休めるように配慮している。子育て世代だけでなく、親の介護などに直面した社員に対しても、同様の措置を取っている。
◆ノー残業ウィーク(4・7月)を導入
同社では、工事は原則17時終了のため、現場の社員の退社時間は比較的早く、残業自体はもともと少ない点が特徴だった。しかし、案件が多くスケジュール的にも厳しい年度末は、帰社してからの書類整理などに追われ、時間外の業務も自然に増えることも。そこで、メリハリのある働き方を目指し、19年度から繁忙期を除いた4月と7月に、1週間の「ノー残業ウィーク」を導入することとしている。事前の掲示やアナウンス、個別の声掛けなどを行い、「全員で一斉に定時退社する」という意識の浸透を図る予定だ。
◆各種費用負担で資格取得をサポート
同社の業務には、土木施工管理技士、建築施工管理技士、舗装施工管理技術者などの資格が必要になるが、それらの受験代や1カ月に1回実施される講習会の費用などは会社が全額負担している。試験に何度失敗しても支援を続けることで、社員の「資格を取ろう」という意欲の維持・向上を応援している。コンスタントに挑戦するメンバーが増え、18年度も3名が1級土木施工管理技士を受験している。
取組の中での課題
長い時間をかけて成熟してきた建設業界において、さらなる業務の効率化は一朝一夕にできることではない。一方では、工期に追われるという側面も持つ。そのため個別ヒアリングの中では、「休みを増やすと仕事が追い付かない」「やるべき仕事があるのに休めない」という意見が多く上がった。
「今後は書類のデータ化などから地道に効率化を進め、給与や賞与を維持しつつ休暇を増やせるように注力していきたいと考えています。社員たちとも、仕事とプライベートを両立することに、目標を統一していきたいです」と、繁山氏は話す。
取組の成果
18年4月からの新規カレンダーで、年間休日を105日と定めたため、休日は13日増加した。「2・3月の繁忙期を過ぎたら、8月ぐらいまでに振替休日を取るように」という総務部の熱心な声掛けで、現場の社員の中にも「休みをしっかりと取る」という意識が高まってきた。取引先企業からは「何となく会社の印象が変わったね。和やかになった」という声が寄せられている。
◆労働時間(直近1年間)
・常用雇用者の総実労働時間(1カ月平均)が156.8時間
社員からの評価
18年6月に入社した総務部の山口さんは、
「子どもがまだ小さいので、熱が出て急な休みをお願いすることがありますが、いつも状況をくみ取ってもらって助かっています。周りの方にも、子育ての大変さを理解してもらえていて、普段から何でも話しやすいです」と語る。19年度から完全週休2日制になることに関しては、
「すごくうれしいです。家族との時間も増えるし、プライベートが充実した方がメリハリを付けて働けると思います」と、新制度の導入を喜ぶ。
勤続26年になる常務取締役の久安氏は、主に工務部の管理業務を担当している。
「入社当時は、日曜日以外ずっと働くのが普通でしたが、今は休むことが重視されるようになり、環境がガラリと変わったと思います。実際に年間休日も増えて、気持ちにゆとりが持てるようになりました。休みが増えても給与が変動しないので、新しい取組に納得しています」と話す。
現場の業務に関しても、休日の調整も考えながら、工事に遅れや支障が出ないよう、普段から段取りや調整を心掛けるようになったという。
今後の目標など
19年度から「年5日以上の有給休暇取得の義務化」が始まるが、同社でも、各社員に早めに有給休暇の希望日を聞くなどの準備を進めている。また、工事の受注体制そのものも再検討している。施工に無理が生じない範囲で案件を請け負う方向性に、少しずつシフトしている。
「これらの取組が、採用面でも効果的に働いてほしいと思っています。建設業界は常に人材不足です。環境・制度面の整備が、会社のイメージアップにつながることを期待します」と繁山氏。
「仕事だけでなくプライベートの時間も充実させて、社員に幸せな毎日を送ってほしい」というのが一番の願いだと話す。
取材日 2019年2月
会社概要
株式会社繁山興業
所在地:福山市千田町3-48-13
URL:http://shigeyama.co.jp/
事業内容:総合建設業
従業員数:18名(男性15名、女性3名)
(2018年10月現在)
情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com)