長年培った助け合いの精神のもと、
働きやすい職場づくりを推進

社会福祉法人ともえ会

取り組んだ背景は?
 ~職員の育成と定着に向けて、働きやすい職場づくりを前進

 1973年に設立し、三次市内で医療療育センター、障害者支援施設、特別養護老人ホームを運営する同法人。「根気・のん気・元気」をモットーに、設立当初から働きやすい職場づくりに取り組んできたが、人手不足の深刻化に伴い、介護職員や看護職員の採用が年々難しくなっている。退職あるいは育児休業などの長期休業に関しても、欠員補充や休業中の代替職員の確保が難しい状況にある。   

 

 理事長の添田龍彦氏は、
「これを解消するための手段として、人材の確保に力を入れるだけでなく、採用後の職員の育成と定着のため、取組の見直しが必要だと感じました。各施設内での業務内容の改善や有給休暇のさらなる取得促進を図ることで、少しでも職員の負担を軽減し、長く勤めてもらえる環境づくりに取り組んでいます」と語る。 

主な取組と工夫点
 ~助け合いや相互理解で良い関係づくり

◆有給休暇の計画的付与で、休みやすい環境づくり
 同法人は、以前より計画有給休暇のしくみを取り入れ、有給休暇を取得しやすい環境を整えている。看護部長の安部氏は、次のように話す。
「例えば、看護現場で勤務する職員約80名の毎月の勤務シフトを私が作成していますが、担当する入所利用者の状況はもちろん、プライベート面も含めた職員の状況や有休希望日を把握した上で、各職員の有給休暇の半数程度を事前に勤務シフトに入れています。その上で、残りの有給休暇については職員本人の希望も踏まえながら、積極的に取得を勧めています。残業に関しても、削減していくことはもちろん、サービス残業が生じないように各部署の責任者が常にチェックしています」。
 これらの取組により、職員の有給休暇の取得率は高い水準を維持し、残業は低水準に抑えられている。しかしその裏側で、各施設では24時間365日、常に誰かが入所利用者を見守る必要がある。
「職員に緊急事態が起こった場合でも、他の職員が交代して必ず勤務体制を維持しなければなりません。だからこそ職員の間にも、お互いが譲り合い、助け合う精神が宿っていると思います」と安部氏。

◆男性育休の取得促進など、子育て世代の支援
 女性職員が多い同法人は、子育て世代の支援にも力を入れている。女性職員の育休取得は100%だが、
「男性職員の育休に関しても、上司から積極的に取るように勧めています」と安部氏。直近3年間の男性職員の育休利用は2名となっている。さらには半日や1時間単位の有給休暇制度も導入しており、子どもの急な病気などにも対応しやすくなっている。

◆イベントやクラブ活動でコミュニケーションを活性化
 3施設で、約260名が働く同法人。日頃は顔を合わせる機会がない職員同士の交流を深めようと、施設を超えて参加するイベントやクラブ活動にも力を入れている。例えば社内イベントでは、年1回、全3施設の職員が集まって「ともえ会合同花見会」を開いている。クラブ活動では「ともえどんちゃんず」「フィッシングクラブ」の2つのサークルが活動している。「ともえどんちゃんず」は、毎年夏に三次市内で開かれる「三次きんさい祭」に有志を募り、家族と一緒に出場している。本番2カ月前から練習し、地元の祭りの盛り上げに一役買っている。「フィッシングクラブ」も同様で、有志が定期的に集まって釣りに出掛けることで、普段は顔を合わせない他施設の職員同士がコミュニケーションを図る場にもなっている。

◆資格取得などの目標を共有し、人材育成を図る
 職員のさまざまな資格取得を推進しており、取得する資格によっては、費用負担も行っている。また1年に2回、各職員に対する面談を直属の上司が行い、資格取得など働く上での目標を共有するのはもちろん、日頃の悩みについても相談に応じている。さらに各職員のスキルアップのため、福祉サービスにおいて必要とされる知識をウェブ上の映像講座で学ぶeラーニングの導入も検討している。空いた時間に、パソコンやスマホを使って手軽に学習できる。

◆職員の理解を得た上で、各種規程を改正・周知
 就業規則はもちろんのこと、給与や勤務条件等に関する規程を改正する前に、改善内容を各職員に分かりやすく提示する。その後、職員からの意見を募った上で必要に応じて変更を行うなど、職員の理解を得た上で改正する。経営側と職員側がそれぞれ理解し、合意した上で決定していくことで、両者のより良い関係づくりを目指している。
 さらに改善した内容は、職員全員が閲覧できるグループウエア上に掲載するほか、同法人のホームページにも掲載して、周知する。内部のみならず外部にも周知することで、同法人の取組に対する理解促進を図っている。

取組の成果

 同法人は、厚生労働省の「ユースエール」認定も受けており、働き方改革を進めることで、対外的な法人イメージが向上。魅力あふれる職場づくりに向けて、経営側と職員側双方の取組に対する意識が一層高まっているという。 

◆労働時間・休暇(直近1年間)
・常用雇用者の総実労働時間(1カ月平均)が173.8時間
・常用雇用者の年次有給休暇の平均取得率が84.6%、平均取得日数は15.4日

◆高齢者(65歳以上)
・定年65歳を超える従業員の再雇用制度を8人が利用(平成30年4月1日時点)

従業員からの評価

 

 「有給休暇はほぼ毎年使いきり、残業はほとんどありません。休暇については、職員の皆さんが、お互いさまの気持ちで受け止めているため、子どもの体調不良などで急なことがあっても休みやすく助かっています」「半日や1時間単位で有給休暇が取れるので、急な用事にも対応しやすいです」「無駄の削減など個人の仕事量を減らし、残業が出ないよう効率化について施設全体として考えてきたことで、業務改善に関する意見が出やすくなったと感じます」といった声が上がっている。 

今後の目標など

 人手不足で人材確保が困難な今、働き方改革を実践し、より良い職場づくりを推進することで、今後も職員の職場定着を図るとともに、新たな人材確保につなげていきたいという。また同法人には、全国的にも数の少ない重症心身障害児(者)を対象とした施設もあるが、人材不足の原因の一つとして、これらの施設の重要性や事業そのものの認知度が低いことを挙げる。働く場所を求める人にとって、いかに魅力あふれる働きがいのある職場をつくることができるのか、さらに自分たちの取組を外部に向けてどう発信していくのかを検討し、法人や施設、業務に対する認知度を上げていきたいという。 

「24時間365日、常に頭にあるのは利用者のことです。その一点のために、経営側と職員は、何をしないといけないのか。その歩み寄りが、結局は魅力あふれる職場づくりにもつながっていくと思います」と、添田氏は締めくくった。 

取材日 2019年2月 

会社概要

社会福祉法人ともえ会
所在地:三次市粟屋町11664
URL:http://www.pionet.ne.jp/~tomoekai/
事業内容:障害者または高齢者の福祉施設の経営
従業員数:262名(男性111名、女性151名)
(2018年11月現在)

情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com