「ムダ取りシート」生かして、働きやすい職場へ
カバー体制と個別対応で、制度利用のハードル低く

働き方改革優良事例15 株式会社オガワエコノス

ボトムアップで現場のアイデアを集約
「ムダ取りシート」で業務改善のフローを構築

 小川勲代表取締役が経営方針として掲げる「良い社員」「良い仕事」「良い会社」を実現するための方策の一つが業務の効率化と平準化による働きやすい職場づくりだ。そのためのアイデアを従業員から集め、具体策につなげる仕組みとして平成28年10月に始まったのが「ムダ取りシート」の活用だ。以前から現場の「ムダ」を見つけ出す取組自体はあったが、提案を生かすための運用面の仕組みがなかったため、毎月総務部にシートを提出するようにフローを整え、会社としてバックアップする環境を整えた。
 シートは各課等の単位で作成し、まずは個々の従業員がムダと感じている内容とその原因を指摘するとともに、改善案を提案。部課長を中心に「案のまま行っていいか」、「もっといいやり方があるか」などを相談。ほかに支障が出る可能性なども検討したうえで最終的に改善案を決定する。こうした流れはすべてシートに載せ、決定欄には原案通り進めるか、一部変更して対応するかなどの情報も記載し、職場に掲示する。

 「働き方改革を始めて実感するのは帰る時間が早くなった」(堀千奈美総務人事啓発グループ課長)という点。本社のスタッフ部門では昨年の同時期には午後8、9時になっても電気がついていたが、今は午後7時頃には電気が消えるようになったという。部門単位の平均残業時間が減るまでには至っていないが、堀課長は「業務の偏りが改善され平準化が進んできた」と分析する。
 それぞれの部門ごとの固有の問題もあり、ムダ取りシートで生まれた改善策を部門を超えて共有することは難しいが、活性化している部門のシートを参考に送付して、横展開も図っている。部門により濃淡はあるが、上司が提案を褒めるところほど、提案が出ているといった面も浮き彫りとなっており、従業員からの声を掘り起こす仕組みが回り出している。

「率先垂範」と「カバー体制」で休みやすく
上司が率先、後ろ姿見せ、制度利用のハードル下げる

 働き方改革につながる制度構築と並行して進めているのが制度を利用しやすくする社内の雰囲気づくりだ。
 重視しているのは「単なるトップダウンで利用を指示するのではなく、上司が後ろ姿を見せること」。工場長自らが率先して家族の工場見学に参加し、午後には有給休暇を取得するなどにより、子育てに時間を割いている姿を見せることで、「工場長がしているなら」という職場の空気が生まれ、制度利用の心理的なハードルも下がったという。
 ムダ取りシートの取組を始めた際、最初はチームリーダーが推進担当だったが、提案数が少ないと見るや担当を上位のグループ長に移管。グループ長が率先して働きかけ提案の提出を促したことで、現場が活性化し、提案も集まり出したという。

「1役2名・1名2役以上」でカバー体制

 休暇を取得しやすくするためのもう一つの環境整備が「1役2名・1名2役以上」という取組だ。取組の趣旨は一人が複数の仕事をこなせるようにすることで、どんな仕事でも複数名が対応できるようにするというもの。ある人が休んでも代わりに誰かが対応できる環境を整備することで、休暇も取得しやすくなる。
 事務部門では計画的にジョブ・ローテーションを組むことで人材を育成しており、カバー体制の構築はほぼ完了。
 工場でも職場内訓練(OJT)を通じて人材の育成を進めているが、ネックは仕事量が増えていること。人材育成には半年から1年程度の期間が必要で、仕事増に合わせて人材は確保しているものの、カバー人材の育成を計画通りに進めることが課題となっているという。

 こうしたなか、効率的な人材育成策として打ち出しているのが工場間の人材交流だ。年間計画で別の工場に2週間出張してもらう人材を決め、お互いの良いところを学び合うという仕組みを構築している。オガワエコノスではRPF製造事業への参入で工場が本社のある広島県府中市だけでなく、岡山県、宮城県にも拡大。いずれも現地採用ということもあり、働き方改革に向けた方向感を共有しながら、育成計画などは工場での個別対応も必要となる。意識的な人材交流を通じて、忙しい業務が特定の人に偏らない環境を整備しようとしている。

「制度の適用条件」は個別で対応
育児や治療などと両立しながら働き続けられる制度へ、個々の理由を勘案して適用

 「働きやすい環境を整えないと、せっかくの人材が失われ、企業にとっての損失になる」との理念のもと、療養アフターケアやファミリーサポート休暇といった独自の休暇制度を創設してきたオガワエコノスだが、堀課長は「導入する制度は決まっても、適用対象や日数など条件をどこまでにするかといった点でとても苦労した」と制度設計時の苦労を振り返る。
 こうした経験から打ち出されたのが、制度の利用については個々の事情に応じて柔軟に対応するという弾力的な運用策だ。例えばフレックスタイム制度は出産、育児、介護などを対象としているが、実際の適用は「学童保育の送り迎えの時間に対応した勤務」といった個々の事情に応じた時間設定可能にしたほか、子供が入院した際にはそれぞれの家庭の事情に合わせてファミリーサポート休暇を適用するなど、制度そのものを利用しやすくすることで働きやすい状況を作っていくように工夫しているという。

会社概要

株式会社オガワエコノス
所在地:府中市高木町502-10
URL:http://www.o-econos.com/
事業内容:廃棄物収集、中間処理、RPF製造
従業員数:230人(2017年6月時点)

情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com