充実した福利厚生・社内制度をベースに、
さらに人財を大切にする会社を目指す
株式会社エネルギア・コミュニケーションズ
取り組んだ背景は?
~従来の制度・取組を「働き方改革」に生かす
中国地方全域を事業基盤とし、地域密着の情報通信サービス(電気通信事業・情報処理事業)を展開している同社。新製品・サービスが続々と登場し競争も激しい業界である中、「人財を大切にする」ことをモットーに、以前から従業員の働きやすさと働きがいを高める仕組みづくりに力を入れていた。
「それまで当社が行ってきた活動を包括して、さらなるステップアップを図ろうと、2018年4月に、トップから全従業員に向けて『本格的に働き方改革を進めていこう』というメッセージを発信しました」と、常務取締役総務品質本部長の清水憲治氏は語る。
取組導入のプロセス
~労働時間縮減と有給休暇取得の目標数値を定める
働き方改革の目的を明確にするために、同社では「労働生産性の向上」と「ワークライフバランスの向上」の両立を目指す取組方針を設定。17年度からの3年間で、所定外労働時間の縮減(16年度実績比30%減)と、有給休暇の取得促進(年間12日以上)という目標数値を定めた。
従業員の意見の把握に関しては、自己申告制度や意見交換の場に加えて、隔年で実施している「従業員意識調査」を活用している。そこから制度や労働環境などに関する従業員の率直な声を吸い上げ、総務品質本部のメンバーが中心となって取組に反映していった。具体的には、3つのテーマ「労働時間の縮減」「柔軟な勤務制度の整備」「オフィス・ICT環境の整備」に沿って取組を展開した。
主な取組と工夫点
~制度面・環境面の両サイドからより良い働き方を探る
◆21時以降の残業禁止+週2日のノー残業デー
所定外労働時間を30%減らす具体策として、17年度より原則21時以降の残業禁止と、週2日のノー残業デーを導入した。当初は不安視する声も聞かれたが、業務プロセスの見直しと従業員の意思統一で「やる気があればできる」という意識が浸透しはじめている。この他にも、タイムマネジメント研修の実施、モデル職場によるペーパーレス化の推進、業務の見直しの一環として、同社がプログラミングから手掛けたRPAサービスも導入するなど、生産性向上に向けた取組を推進している。
◆1時間単位で取得できる有給休暇を導入
10年以上前から5日以上の連続リフレッシュ特別休暇取得(分割取得も可能)を推進してきたため、従業員の有給休暇取得への意識がもともと高かった同社。これに加えて19年4月から、要望が多かった1時間単位の有給休暇取得制度を導入する予定。短時間で対応できる私用があるときなどに、休暇を取りやすくなり、より柔軟な働き方につなげていく。
◆法定以上の期間を設けた育児休業・育児短時間勤務
同社の育休取得率は100%を維持。男性従業員の育児休業取得者も増加している。一方で、昨今の保育園不足の状況から、育休後の仕事復帰に不安を持つ従業員も多く、育児休業の延長制度を18年11月から導入した。2歳になる誕生日の前日まで延長可能(法定では1歳半に達した時点で再申請により最長2歳まで延長できるが、同社では1歳の時点で2歳まで延長申請が可能)とした。さらに、それでも入園先が決まらない場合には、3歳まで延長できる制度も設けている。育児短時間勤務については、同社では法定以上の小学校3年修了の年度末まで利用可能としている。
◆テレワークによる在宅勤務を導入
18年11月より、部署と利用者を限定して、テレワークによる在宅勤務を試行。現在約70人が利用している。メリットとして「家事と仕事の両立が図れる」「自宅で仕事をすることで集中力が高まる」などの声が寄せられており、今後はセキュリティー面の整備を図り、全従業員を対象にした制度に拡大していく方針である。
◆オフィス・ICT環境の整備
情報通信サービスを柱とする同社では、ITのスピーディーな進化に合わせて、前述のRPAサービスの導入をはじめとした業務環境のリニューアルを進めている。オフィス自体の整備プロジェクトも進行しており、19年4月以降に順次実行する予定だ。オフィス環境の整備に当たっては、ショールームやオープンスペースなどを持つ東京の企業に見学に赴き、快適性・空間の遊び心などについてイメージを膨らませたという。
「当社はICTを商材とする会社。他社の参考にしてもらえるように、今後はオフィス全体をPRポイントの一つにしていきたいです。環境の一新で、従業員の意識や行動にも変化が表れることを期待しています」と、清水氏は語る。
◆「不妊治療」の支援制度
不妊治療中の女性従業員を対象に、治療に専念できるよう1年を上限とした休職制度を導入している。総務品質本部人事労務部の福永さんは、
「この制度ができたことを友人に話したら、とてもびっくりされました」と振り返る。
「まだ導入している会社は少ないようで、少数派の女性従業員を対象にした制度を、他社に先駆けて採り入れてくれたことを誇らしく思っています」と話す。
取組の成果
17年度の実績を見ると、1人当たりの月平均の所定外労働時間が19%減、有給休暇取得日数の全社平均が6.7%増(いずれも前年度比)と一定の成果を上げている。一人一人が早く帰る意識を持つようになったことで、週2日のノー残業デーも約60%の実施率になった。また年間の休暇取得計画をチームで作成・共有するようにしたことで、以前よりも休みを申請しやすくなり、有給休暇の取得率向上に結び付いた。
◆休暇(直近1年間)
・常用雇用者の年次有給休暇の平均取得率が72%、平均取得日数は14.2日
・常用雇用者のリフレッシュ特別休暇(年5日)の平均完全取得率が98.6%
◆育児(直近3年間)
・育児短時間勤務制度の利用者が47名
・配偶者が出産した男性従業員のうち、育児休業を取得した者が4人
◆若年者(直近3年間)
・正社員として就職した新卒者等のうち、同期間に離職した者の割合が0%
従業員からの評価
同社では21時以降の残業を原則禁止としている。総務品質本部人事労務部の吉中さんは、
「初めは抵抗を感じましたが、次第に社内に定着して、メリハリをつけた仕事の進め方に変わりました。無理だと思っても、行動に移してみないと分からないものです」と話す。
「周囲に対して、早く帰ることに気を遣わなくなりました」と言うのは、総務品質本部総務部の大野さん。
「子どもたちの迎えがあるときなど、気兼ねせず退社できるのでありがたいです」というコメントを寄せてくれた。
今後の目標など
「所定外労働の縮減」の実践期間は17年度からの3年間。現在は、制度の見直しに続いてオフィス・ICT環境の改善を進めている最中である。
「オフィス関連のリニューアルは、採用面でも生かせるはずです」と、清水氏は期待を込める。
同社は広島県の「仕事と家庭の両立支援登録企業」でもあるが、最近の学生は「いかに働きやすい会社か」ということを多面的に見ていることから、「当社の取組そのものを積極的にPR材料にしていきたい」と、清水氏は語る。
働き方改革に挑戦するというメッセージを発信した当初、同社は最終的に従業員全員にアンケートを実施する予定であることを発表した。その時には、約1,000人の従業員から「働き方改革に取り組んで良かった」という満足の声が届くことを願って取り組んでいるという。
取材日 2019年2月
会社概要
株式会社エネルギア・コミュニケーションズ
所在地:広島市中区大手町2-11-10
URL:https://www.enecom.co.jp/
事業内容:情報通信事業(電気通信事業と情報処理事業)
従業員数:934名(男性708名、女性226名)
(2018年10月現在)
情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com)