AIで栽培ノウハウ確立へ
世界ライセンス販売図る

村上農園

 スプラウト(発芽野菜)で全国トップの村上農園(佐伯区五日市中央4-16-1、村上清貴社長)はコンピューター管理やAIの活用で栽培ノウハウを蓄積し、ライセンスとセットにすることで海外展開を目指す。国内の生産体制を急ピッチで拡充する一方、世界中に自前の植物工場を構えることは難しい。2035年に世界トップの施設野菜メーカーを目標とする中、誰にでも高品質な商品を生産できるノウハウの確立がキーポイントとなる。
 現在、ブロッコリースーパースプラウトや豆苗(エンドウの若菜)などを栽培する全国の生産センターと本社のコントロールセンターをICTで結び、徹底した栽培管理を行っている。今後は、ウェブカメラで生育状況を観察したものをビッグデータに蓄積。光や気温、散水量といった「環境データ」と栽培装置制御などの「管理データ」に関して、機械学習(AIによる分析・予測)に向けた準備を進めている。半面、植物は生物の特性上、同じ環境と栽培方法でも少しずつ違いが出てくる。こうした「生体データ」を高感度カメラや画像解析装置を使って蓄積することで、21年内にAI分析を確立したい考え。AI分析とは別に、同社のノウハウを指導する体制は整えており、台湾の企業とライセンス契約を交渉中。実現すると、同社の大半の品目が現地生産される予定。
 同社は〝ブレーンビジネス〟として農業を捉えた〝脳業〟を掲げる。11月には、外部環境と完全に遮断した人工光型植物工場で専用の栽培装置をコンピューターが自動制御する新拠点「スーパースプラウトファクトリー」(山梨県北杜市)のテスト稼働を始めた。敷地約9470平方㍍に延べ床9480平方㍍。吸水させた種子を入れた後に、ゆっくりと回転しながら水と光と酸素が苗に行き渡り、数日で収穫できる栽培装置を用いる。同装置は528基に上るため、スタンドアローンではなく中央制御する。見学用通路なども設けた。これまでブロッコリースーパースプラウトは大井川生産センター(静岡県焼津市)だけで栽培していたため、山梨の新拠点で増産するとともに天災時などのリスクヘッジを図る。
 これで生産センターは沖縄村上農園含む国内10カ所となる。21年後半には宮城県黒川郡大郷町、22年に北海道伊達市に新設予定。関西でも土地を探している。19年12月期の単独売上高は前年比8・3%増の107億1900万円を計上し、今期も増収を見込む。