不動産の空室を個室貸切型ジムに
アイデアを形にする過程が新たな社会価値生む

ハコジム

ハコジム
代表取締役 永田 秀晶

プロフィール

 熊本大学工学部卒。中四国地方初のMBAプログラムの県立広島大学大学院経営管理研究科の第1 期生として在学中に創業。1978年11月8 日生まれ、福岡県春日市出身。

 広島の学生が県内企業の経営者に「働く」をテーマにインタビューした。第13回は、24時間営業の個室貸切型フィットネスジムを展開するハコジムの永田秀晶社長。新たなスタイルで注目を集めている。起業に至る経緯や経営に対する考えなどを聞いた。
-事業概要を教えてください。
 月額3800円で利用できる完全個室の無人フリーウエートジム「ハコジム」を運営しています。現在、市内に6店舗展開しており、予約システムを使って1日60分まで好きな時間に好きな場所でトレーニングできるのが特徴です。完全個室なので器具の空き状況や周りの目を気にする必要もありません。仕事帰りや休日など気軽に利用してほしい。出店エリアは利用者の利便性を考慮して選定しています。広島からスタートし、全国へ店舗展開を加速させ、将来的には海外にも進出したい。ジムに来ても何をしたら良いか分からないという利用者のために、オプションでパーソナルトレーナーも用意しています。ニーズに合わせて活用してください。
-起業に至った経緯を教えてください。
 エンジニアとしてアメリカに駐在中、運動不足が原因で体調を崩してしまい、ジムに通い始めたのがきっかけです。これまで料金が高い、遠い、忙しくて通えないという理由で敬遠してきたジムでしたが、アメリカでは会費は安いところだと月10㌦程度で、仕事の昼休み時間に利用する人も多く、気軽に通える環境が整っていました。私も毎日15分程度のトレーニングを約8カ月間続け、白血球などの数値が良くなりました。こまめな運動とそれができる身近な環境の必要性を強く感じ、日本でも低価格で気軽に運動できる環境をつくりたいと思いました。
-利用者のフィットネスの習慣付けについて教えてください。
 トレーナーを付けていただくのが一番ですが、どのようにトレーニングをすればよいか分からず、ユーチューブなどの動画を見ながらトレーニングをされている方も多くいます。オススメの動画について尋ねられることも多々ありますが、トレーニングメニューは一人一人違うため、一概にお答えできません。そこで現在、自社でコンテンツを開発中です。トレーニングを通じてどのようになりたいかなど、目標に関する質問を5つほど用意し、そのためにどのようなトレーニングをすれば良いかを提案するものです。トレーニング結果を報告してもらい、グラフ化することで自分がどれだけ成長できたかを確認できるようにし、モチベーションの向上につなげます。
-アイデアの構築とその実現どちらに重きを置かれますか。
 私はアイデア自体を磨き上げることよりも、ひらめいたアイデアを実現化することのほうが価値のあることだと思っています。
 理由の一つとして、現在の日本で起業するハードルは低いこと、仮に失敗したとしても餓死することのない豊かな環境が整っていることが挙げられます。アイデア実現についてさらに言えば、実現化する過程が一番大切だと思います。発想を基に具現化する際、さまざまな課題を乗り越えて当初考えていた形と全く違う結果になるといったことは当たり前に起こります。実際、ハコジムでも全国展開を目指す中、宣伝力の不足という課題に直面しています。このような壁を乗り越えてアイデアを実現していく、この過程を私は大切にしています。
-無人だと安全面が心配ではないですか。
 運営にあたって安全の確保は大事なことです。初回利用の際に、スタッフが必ず安全バーをつけるよう指導しています。それだけでなく、全部屋にセキュリティーカメラと呼び出しボタンを搭載して、手の届くところにボタンを置いてトレーニングしてもらっています。危険を感じて呼び出しボタンを押すと約8分以内に警備員が駆け付けます。さらに、突然心臓が止まって動けなくなった場合や混乱してボタンを押すことができない時などに対応するため、カメラに骨格の動きを検知して異常な動きが見られたら自動的に連絡が行くシステムの開発を計画しています。
 ハコジムはスタッフがいない環境なので、現状に満足することなく安全面に対する開発を続けています。  
-MBAで学んだことについて教えてください。
 MBAで学んだ内容の細かい部分は、今となってはほとんど覚えていないのが正直なところですが、有意義な経験は多々ありました。まず1つ目は、自分にはまだまだ知らないことがたくさんあることを知れたことです。2つ目は、経営上何かの壁にぶつかった時や知りたいことが出てきた際に、どのように勉強すればよいか分かったことです。3つ目は、人脈です。ハコジムを支えてくれている2人の役員とは県立広島大学で知り合いました。ビジネスについて真剣に学ぼうとする仲間と出会えたことは大きなメリットでした。4つ目は、起業を応援してもらえる環境に身を置けたことです。最後に5つ目は、リスクヘッジができたことです。仕事を辞めてMBAへ通うことで、起業をしなければならないという環境に身を置けたのは大きな力になりました。
-新型コロナを受けて今後の展開は。
 ハコジムは完全個室ですので密は避けれる環境ですが、全国的にフィットネスジムでのクラスター感染が話題になったこともあり、少なからず影響を受けました。
 外出自粛の影響で、運動不足が危惧されています。会社の存続はもちろんですが、このような状況下では一時的な利益よりも社会的責任を果たすことが大切と考えています。社会貢献活動の一環でトレーニング器具600個を無償配布し、自宅でできるトレーニング動画を配信しました。
 弊社のようなスタートアップにとってはピンチこそが成長の機会であり、潮目が変わるタイミングこそがチャンスと捉えています。8月には福岡への出店を計画しており、同時にトレーニング動画サービスをリリースします。運動不足に陥る人は間違いなく増えているので、その解決方法について知恵を絞っています。

学生の声

・インタビューを通して深く印象に残っているのが、「アイデアは実現することやその過程に価値がある」ということです。起業をするならこんなアイデアというのは数々考えましたが、実現した後の価値はどれも未知数です。その意味を鋭く、実体験をもとにお話しいただきました。今後の私自身の行動も、考えを実現する過程を大切にしようと思うことができました。(古本)
・現状に満足せず、サービス品質のさらなる向上を常に考えている社長の姿勢がとても印象的でした。常に高いところを目指すことはビジネスにおいてだけでなく、人生全てにおいて当てはまることだと思います。これから社会に出て行くにあたり、常に自分を成長させ、その成果で社会に貢献できる存在でありたいと強く思いました。(中野)
・永田社長のインタビューを通して後悔したくない生き方にすごく感銘を受け、一度きりの人生を楽しむためにどうしたら良いか考えるきっかけになりました。今後の就職活動で後悔のない選択をできるように積極的に行動したい。(森近)

会社概要

 2017年5 月に創業。24時間365日オープンの無人の個室フィットネスジムを運営するベンチャー企業。19年2 月に広島ベンチャーキャピタルとドーガン・ベータを引受先とする第三者割当増資を実施。(2020年7月時点)