Vol.5 株式会社ニシキプリント
~委員会活動を通じ、社員主体で働きがい醸成
企業理念への理解を深化、時代を先駆けるCSR企業へ~
★☆★2023年 広島県における「働きがいのある会社」優秀企業★☆★
広島県は、「働きがい」の民間専門機関であり、世界約100カ国で従業員意識調査を行うグレート・プレイス・トゥー・ワーク(GPTW)の「働きがいのある会社」調査に参加する県内企業に対して、調査費などの補助事業を行っています。本連載では、GPTW2023年版広島県における「働きがいのある会社」優秀企業など5社の取組を紹介します。
企業インタビュー動画
01. 取り組んだ背景
― 多くの社員が働きがいを感じる会社へ西区に本社を構え、書籍の制作や製本などの印刷業を手掛ける。同社は1967年の創業時から障害者雇用を進めており、『社員の誰もがイキイキと働ける会社にしたい』という創業者の思いが脈々と受け継がれている。代表取締役の宮﨑真氏は「印刷業は納期の調整が難しいことが多く、社員に負荷が掛かりやすいといった課題があります。理想としてきた『誰もがイキイキと働ける会社』の実現に向け、2012年に就労継続支援A型事業所を別法人で立ち上げたことを機に業務の棚卸しに着手し、残業時間の削減や有給休暇の取得日数の向上などに積極的に取り組みました。
働きやすい環境が整備されてきたと社員が実感してくれ始めた18年頃、今後は『社員のやりがい』を高める取組が時流になると考え、働きやすさの整備に加えて働きがい向上の取組に着手し、社員が働く価値を感じて意欲的に仕事に打ち込める環境づくりを目指しました」と話す。社員とともに働きがいを高めるノウハウを学ぶため、広島県主催のセミナーなどに参加。他社や異業種の取組事例を知り、これまでの取組だけでは不十分だったと再認識できたという宮﨑氏。「働きやすさにつながる待遇面の改善だけではなく、社員が当社で働く意義を感じ、やりがいを実感できる会社にしたいと思った」と語る。
02. 主な取組と工夫点
制度づくり(ハード)の取組委員会活動を通じ、社員主体で働きがいを醸成
社員の意見を組織運営や業務改善に反映させる委員会活動を通じて、社員の働きがいを創出することを目指している。性別や部署、雇用形態、障害の有無などさまざまな立場の社員10人ほどで構成する「多様な働き方推進」、「環境厚生」、「生産性向上」など5つの委員会で社内改善に向けたアイデア出しを行う。宮﨑氏は「組織として目標に向かって改善を進めても、経営層と社員の立場の違いからギャップが生まれることもあります。こうした中で一方的に経営層の意見を押しつけても社員に浸透しませんし、主体性も生まれません。社員主導で日々の課題を見つめ直したり、要望を取りまとめて解決策まで検討することが働きがい向上には必要だと考えました。その結果、半日単位の有給休暇制度や、全員のスケジュールをクラウド上で管理し仕事の割り振りに生かすなどの体制が整いました。さらに部署の垣根を越えた交流も生まれ、若手が積極的に意見を出すようになるなど、相乗効果が生まれています」と成果を語る。
社員に権限委譲し、意見を即座に反映
社員の主体性を育むためには、会社が社員の要望を的確に把握し、スピード感を持って判断することが重要と語る宮﨑氏。委員会活動での意見や提案は社長や役員を介さず、課長などの部門長がその場で判断できる権限委譲を行った。「これを機に、部門長だけでなく社員一人一人が経営に関わる意見を言えると実感し、意欲的に面白いアイデアをたくさん出してくれるようになりました。委員会活動で決定した取組には私も全力で協力します。先日は私の知らないところで社長(私)の企業PR動画への出演が決まっていました。社員に任せているので、もちろんその決定事項には従いましたね。また、委員会活動を通じて育まれた社員の能力は、日々の業務でも生かされています。例えば社長や役員の不在時に製造工程で問題が起きた際、部門長を中心に現場で原因の究明や今後の対策を考えるなど、迅速な対応ができるようになりました」と話す。
企業理念「創始の精神」の理解を深め、朝礼唱和で浸透図る
同社は創始の精神として引き継いできた企業理念「愛・信・恕(じょ)」の考えを大切にしている。宮﨑氏は「働きがい創出の一環で、社員とともにこの理念の解釈を深め、『人として相手も自分も愛しみ、人としてお互いがお互いを信じあい、人として最高の行為である恕(許)し合う気持ちを持つ』という言葉にし、朝礼時に全社員で唱和しています。社員自らが創始の精神の意味を改めて考え、理解を深めることで当事者意識が芽生え、ひいては当社で働く誇りにつながると信じています」と力を込める。
03. 取組の中で感じた難しさや課題
― 失敗を恐れず、挑戦し続ける組織運営
社員の裁量で経営や組織に関わる事柄を決めさせることには少なからずリスクがある。しかし、社員に任せることで得られるメリットはそのリスク以上に大きいと宮﨑氏は話す。「本当に社員のためを思うのなら、失敗を恐れず挑戦し続ける力を付けてもらうことが重要だと考えます。社員に当事者意識があれば、失敗しても何が原因か、どう改善するのかなど、それぞれが自発的に考えて動いてくれます。その都度学んで反省・改善を繰り返すことで、さらなる働きがいにもつながるはずです。経営者には相応の胆力が必要と思われますが、失敗を恐れて現状維持に甘んじる方が恐ろしい。むしろ私は改善していく過程を見守ることが楽しいと考えています」。
04.取組の効果や成果、今後の目指すべき姿
― 時代の先駆けとなるCSR企業へ
社員の働きがい向上をCSR(企業の社会的責任)の一環と定義し、時代とともに変わる社会のニーズに応えながら企業としての成長を目指すと意気込む宮﨑氏。「時流に乗り遅れると当然会社は立ち行かなくなります。さまざまな感性を積極的に取り入れつつ、時代の変化に先駆けて対応することで地域から必要とされる会社になれるはずです。今後も、社員と一丸となって時流の先端を走るCSR企業を目指します」と話す。
社員の声
以前は属人化していた業務が多かったため、子育てをする社員は、サポートする社員への負担を考えて、休暇取得のしづらさや申し訳なさを感じていました。委員会の活動を通じて社員の声が反映され、業務の自動化や属人化解消が進んだことで、休暇取得などの制度を利用しやすくなりました。また不安や負担感が取り除かれたことで、コミュニケーションも取りやすくなったと実感しています。
取材日:2023年9月
会社概要
株式会社ニシキプリント
所在地:広島市西区商工センター7-5-33
URL:https://www.nishiki-p.co.jp/
業務内容:印刷業
従業員数:32人(男性22人、女性10人)
情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍 取組サポートサイト「ヒントひろしま」http://hint-hiroshima.com)