Vol.4 株式会社広島県リースタオル
~コロナの苦境を逆手に現場主導の業務改善
社員同士の「尊重と自主性」を重視~
★☆★2023年 広島県における「働きがいのある会社」優秀企業★☆★
広島県は、「働きがい」の民間専門機関であり、世界約100カ国で従業員意識調査を行うグレート・プレイス・トゥー・ワーク(GPTW)の「働きがいのある会社」調査に参加する県内企業に対して、調査費などの補助事業を行っています。本連載では、GPTW2023年版広島県における「働きがいのある会社」優秀企業など5社の取組を紹介します。
企業インタビュー動画
01. 取り組んだ背景
― 今やらないと生き残れない危機感で推進飲食店などで使うレンタル用おしぼりの回収からクリーニング、包装、配送までを手掛ける。1967年の創業以来、「連携・継続・挑戦・スピード」のスローガンを掲げ、現在は広島、山口、鳥取、島根、福岡にまたがるサービスネットワークを築いている。社長の田畑裕生氏は「当社の顧客の中心は飲食業のため、店舗によって営業時間がさまざまで、その開店準備に合わせて商品を配送したり、現金取引のために配送時に出先で集金をするケースが生じます。顧客志向が求められる中、『長時間勤務』や『現金の取扱い』という業務負担が日常的にあり、社員の働き方に漠然とした危機意識は持っていました」と話す。
転機は2016年、最新設備を導入した新工場の稼働。施設整備に加えて社員の働きやすい環境づくりも進めなければいけないと考え、課題の整理を始めた。
その後、こうした取組を加速したいと、19年に県主催の『働き方改革 社内キーパーソン養成セミナー』に参加。社内の推進人材を起点とした取組の進め方などのヒントを得たという。さらに、同年に働き方改革関連法が施行されるなど、雇用を取り巻く環境が大きく変わる中、「『働きやすさの整備』と並行して、社員の『働きがい向上』に向けた取組も行わなければ人材の確保や定着が今後一層に難しくなるという強い危機感を持ちました」と働きがい創出に取り組んだ経緯を話す。
02. 主な取組と工夫点
制度づくり(ハード)の取組現場主導で業務改善を推進
20年に新型コロナウイルスが流行。取引先の飲食店の相次ぐ休業で業績にかなりの影響があったというが、これを逆手に取り『業務改善の時間ができた』と前向きに捉えた。田畑氏と2人の若手社員を中心とした、〝働きがい向上チーム〟を結成。まずは課題をあぶり出すため、現場社員との面談を行った。「意見として多く挙がったのは、先に述べた労働時間と休日取得の問題です。当社のような中小企業はギリギリの人員で一連の業務に当たるため、社員の希望する休暇取得に応えることに難しい面がありました。社長の判断で社員を休ませたところで、業務量は変わらず、本質的な問題は何も解決しません。このような課題を解決し、社員の働きがいを高めるために、現場が主体となってまずは業務効率化に取り組みました」と話す。
課題感の大きかった労働時間に対しては、社員からの改善提案を基に配送ルートの見直しを進めた。現場の意見を細部まで吸い上げたことで勤務時間の削減に成功。休みやすい環境も整い、配送担当の男性社員から初の『育児休業の取得』という好事例も生まれた。また、主にパート社員が担うおしぼりの包装作業でも改善を実施。作業手順や合格基準を明記した作業標準表を作成し、管理担当の社員が作業内容や手順を丁寧に説明することで品質管理が改善し、不良品の発生数が半減。さらに、社員同士のコミュニケーションが促進されたことで、ミスが起こりづらくなるという好循環も生まれたという。集金業務でも顧客の理解を得た上で相当数をコンビニ支払いに変更するなど、負担が大幅に軽減された。
日々の対話で理念を共有
経営計画や3カ年目標といった方向性を積極的に社員に共有しているという。「当社の経営理念や目標は経営陣が一方的に決めたものではなく、ボトムアップによる提案が根幹にあります。そうすることで経営陣と現場の方針が一致し、全社をあげて同じ目標に向かえます。『社員を大切にし、共に成長し続ける』、『お客様に喜ばれ、感謝される』という二つの理念は、社内掲示だけでなく、経営幹部が社員との日々の対話の中で意識的に共有しています。こうした小さな『共有』の積み重ねが当社のマネジメントの肝です」と田畑氏は力を込める。
社員同士の尊重と自主性を重視
社員同士が互いを認め、尊重し合う社風が強みだと話す田畑氏。「会社が無理やり仕事を与えても社員には響きません。大切なのは他人の良いところを認め、苦手をフォローし合える風土です。当社は障害者の雇用にも積極的に取り組んでいますが、彼らには明確に得手・不得手があります。しかし、それらをうまく生かすことが組織として最も馬力が出る方法だと考えています。
例えば、イラストが得意な社員に会議資料の作図をお願いすれば、苦手な社員が時間をかけて作業するより生産性は上がりますし、質の高い資料ができて参加者の理解度も高まります。一石二鳥ですよね」。
また、同社では社員の自主性も尊重している。社員からの「健康経営に取り組みたい」という意見を基に、会社の健康診断の検査項目を拡充。社員の健康への意識醸成のみならず、21年の「Teamがん対策ひろしま」で県知事賞を受賞するなどの成果をもたらした。「社員から会社に対して意見・提案ができる」そして「全員参加で取り組む」という社風が育まれている結果だ。
03. 今後の課題、目指すべき姿・展望
― 厳しい時代だからこそ働きがいを高める
今後も「取組の継続」を目指すという田畑氏。「今年に入って飲食業界の活気が復活し、私たちも忙しくなってきています。多忙な中でも現場からの声を拾い続けられるかどうかが継続のカギになると考えます。『問題が上がってこないのが問題だ』という意識を忘れず、自ら聞きに行く姿勢を貫きたい」と意気込む。また、「コロナ禍には社員の前向きな姿勢に勇気をもらいました。今後も社員の働きがいをさらに高め、より強い絆のある組織にしたい」と話す。
社員の声
社長と一緒に県主催のセミナーに参加したことで、自社の業務内容を見つめ直し、改善点に気付くことができました。全社員が共通の目的意識を持ち、取組を進めることが重要だと考えます。簡単ではないと思いますが、今後もさまざまな人を巻き込みながら改革を継続、浸透させていきたいです
取材日:2023年9月
会社概要
株式会社広島県リースタオル
所在地:広島市南区東雲1-12-27
URL:https://www.kenlease.co.jp/
業務内容:おしぼり・清拭タオルレンタル、紙おしぼり・業務用消耗資材販売
従業員数:110人(男性45人、女性65人)
情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍 取組サポートサイト「ヒントひろしま」http://hint-hiroshima.com)