Vol.5 東洋商事株式会社
~経営者に学ぶ学生インタビュー~

★ 広島女学院大学×広島経済レポート [ 共同プロジェクト ]★

東洋商事|経営者に学ぶ学生インタビュー|広島女学院大学×広島経済レポート 共同プロジェクト

 学生が地元経営者をインタビューすることで、地域で輝く企業に目を向け、思考を深め、広島での就職意識を高めてもらうプロジェクト。広島女学院大学の2年生がキャリア授業の一環で、各業界のトップに「業界・企業研究」「仕事観」などをテーマに全11社にインタビューを行いました。
 第5回は、アミューズメント施設運営の東洋商事の長谷川康垣社長。近年は保育施設やホテルを展開しています。長谷川社長は29歳で事業承継。新事業などを手掛けて拡大発展させており、ここまでの道のりを聞きました。

東洋商事|経営者に学ぶ学生インタビュー|広島女学院大学×広島経済レポート 共同プロジェクト東洋商事株式会社/代表取締役社長 長谷川 康垣氏
― 29歳という若さで社長になられて、プレッシャーはありましたか。  大学を卒業し、地元金融機関の広島信用金庫に入庫した当時は、アミューズメント施設運営の家業に興味がなく、継ぐとは思っていませんでした。ただ、父が体調を崩していたことと、就職後しばらくして、決算書を見たときに厳しい財務状況を目の当たりにしました。そのとき、社員の方や、そのご家族のことなど、あらゆることを自問し、結果的に自分の意志で決めました。就任当初は業績が悪く、若さゆえに自信もなく、プレッシャーは大きい。それでも社長という立場になったのであれば、社員を守らなければなりません。立て直す決意を固めました。
 当時は社員のモチベーションが低く、最低限のノルマしかこなさないという意識の人が多かったので、危機感がありました。借入金も多く、その時にコロナ禍になっていたら、当社は間違いなくつぶれていたと思います。辞めていく社員も多数おり、精神的にきつかったですが、妻が支えてくれたのと、会社での女房役と改革を進められ、一緒に乗り切ることができました。

― 社長になって大変だったこと、うれしかったことは。

東洋商事|経営者に学ぶ学生インタビュー|広島女学院大学×広島経済レポート 共同プロジェクト
 大変だったことは、業績改善に向けた社員の意識改革です。当時は変化が怖いという気持ちから、新しいやり方についてこられないスタッフが多くいました。そのため、みんなのマインドをどうやってポジティブに変えていくかが、非常に大きな悩みでした。
 当時は家庭でも愚痴を漏らしてばかり。そんな時、妻から「あんたが変わらんかったら、社員さんも変わらんよ」と。それからは、「スタッフと目線を合わせる。そのスタッフのことを知る」という姿勢を大切にしました。

東洋商事|経営者に学ぶ学生インタビュー|広島女学院大学×広島経済レポート 共同プロジェクト
どこに課題を感じているかなど、日々の変化に気付いて、声を掛ける。それを継続したことが、仕事と会社への満足度や安心につながったのか、新しいことや変化に対して前向きに行動してくれるスタッフが徐々に増えていきました。例えば、現場では環境整備のための実行計画を作成し、業務の見える化や分かりやすい備品配置を検討するなど、社員発のさまざまなアイデアが飛び出しています。みんなの意識改革によって業績が改善し、財務の安定化につながるなど、結果に表れたことはうれしかったですね。また、社内外の評価が向上。何より、社員やアルバイトの皆さんが日々成長していることが社長として大変うれしいことです。

東洋商事|経営者に学ぶ学生インタビュー|広島女学院大学×広島経済レポート 共同プロジェクト
― 理念「ココロオドル」を決定した思いは。  私の入社当初は経営理念がありませんでした。そこで、古参と若手社員と一緒に半年かけて、遊技事業のワクワクドキドキ・ハラハラドキドキする気持ちを一言で表現しました。お客さまや社員に、楽しく、心躍る気持ちになってほしいという意味が込められています。どんな仕事でも同じだと思いますが、働く人たちがワクワクドキドキしていないと、お客さまに喜んで頂くことができないと思います。この理念が会社の軸となっています。その軸を基に評価もしますし、承認もするので、社員の頑張る方向性が見え、意思決定ができるようになりました。業績伸長は社員の行動が変化したからこそです。

― 社長就任後に表彰制度を始められたそうですが、その意図と導入後の効果を教えてください。

東洋商事|経営者に学ぶ学生インタビュー|広島女学院大学×広島経済レポート 共同プロジェクト
 表彰制度を始めてから社員一人一人の気持ちに変化が表れ、モチベーション向上につながっています。表彰を受けた社員に、なぜ受賞できたのかを全社員の前でスピーチしてもらうことで、他の社員も「次は自分も受賞したい」というマインドアップも図れています。表彰項目は40ほどあり、社員のことを思いながら、それぞれの受賞者に合わせた表彰文にしているんですよ。

― 新事業について教えてください。

ミクセル|経営者に学ぶ学生インタビュー|広島女学院大学×広島経済レポート 共同プロジェクト
 数年前にホテル事業に参入。現在の本社に移転した際に空いていた上階の収益化を目的に始めた宿泊業ですが、当時のオバマ米大統領の広島訪問などで訪日観光客が増えており、こうした客層を取り込みたいと考えました。宿泊業の知識が少なかったので現在、運営は別の企業に委託しています。
 コロナで旅行しづらいご時世になり、ターゲットを国内向けにシフトすることは簡単ではありませんが挑戦を続けています。最近は宿泊ではなく、友人と部屋を借りて食事会をするなど、普段と違う雰囲気を楽しまれる方もいます。  このほか、保育施設を運営しています。コロナ禍でも業績に変化はありませんでしたが、感染対策にてんてこ舞い。職員や園児が感染しないように、国や自治体が定めるガイドラインに沿った運営を徹底しました。こうした姿勢を見せることで、お客さまに安心・安全を提供できたと思います。

― 今後の目標は。

東洋商事|経営者に学ぶ学生インタビュー|広島女学院大学×広島経済レポート 共同プロジェクト
 弊社の売上高を現在の35億円から100億円に引き上げたいと思っています。当社の社員が社長になれる環境をつくることで夢を持ってもらいたい。「業界の非常識に挑戦」することで、固定観念に縛られることなく、「〇〇ぽくない」と思えることを念頭に、事業を広げていきたいです。非常識の中に新しい常識・価値観を見いだし、既存事業との相乗効果が得られることにチャレンジしていきます。

代表取締役社長/長谷川 康垣 東京の大学卒業後、広島信用金庫に入庫。その後、遊技機開発のダイコク電機での修行を経て、2010年に常務取締役として東洋商事に入社。12年5月に当時29歳で代表取締役就任。



私たちがインタビューしました

一人一人が自分が働く会社に対して強い思いがあり、より良い環境にしようとする気持ちを抱いているということが伝わってきました。 光籏 聡美

長谷川社長の「何をしたいかではなく、誰と働きたいか」という言葉が印象深かったです。何の職業に就きたいのかばかり考えていたので、考え方を変えさせられました。永野 侑里

見てあげる・知ってあげるという言葉が特に印象に残っています。就職活動だけではなく日常生活でも活用できることだと感じ、今後に生かしていきたいと思いました。 宮本 桐華

特に働く上での精神面を重視しているという言葉が心に残りました。これからの就職活動で自分が本当にやりたいことは何か、現実的なことを考えながらもそれを忘れないようにしていきたいと思います。 渡辺 麻美子



取材日:2022年7月

会社概要

東洋商事株式会社
所在地:〒730-0856 広島市中区河原町13-14
設 立:1974年
資本金:1000万円
売上高:35億円(22年4月期)
従業員数:61人
TEL:082-234-1040
URL: https://pstoyo.com/
事業内容:遊技場、宿泊施設の経営
※2022年9月当時の情報です。 アミューズメント施設のほか、ホテルや保育施設を経営。「業界の非常識に挑戦!!」、「ココロオドル場所の創造」をキーワードに、社員一丸で楽しみを提供している。