Vol.6 株式会社ノサックス
~経営者に学ぶ学生インタビュー~

★ 広島女学院大学×広島経済レポート [ 共同プロジェクト ]★

ノサックス|経営者に学ぶ学生インタビュー|広島女学院大学×広島経済レポート 共同プロジェクト

 学生が地元経営者をインタビューすることで、地域で輝く企業に目を向け、思考を深め、広島での就職意識を高めてもらうプロジェクト。広島女学院大学の2年生がキャリア授業の一環で、各業界のトップに「業界・企業研究」「仕事観」などをテーマに全11社にインタビューを行いました。
 第6回は、安全靴製販のノサックスの野口隆志常務。日本だけでなく、欧米の安全基準を満たした安全靴を開発して拡大。事業に懸ける思いを聞きました。

ノサックス|経営者に学ぶ学生インタビュー|広島女学院大学×広島経済レポート 共同プロジェクト常務取締役/野口 隆志氏
― 事業内容について教えてください。  98年前の大正13年(1924年)に私の曽祖父が広島市南区段原で「野口護謨工業」として起業し、ゴム長靴を製造していました。そして、安全靴メーカーとして発展していきました。
 安全靴は目立たない存在で、世の中に知られることは、ほとんどありません。ただ、何を作るのにも必要です。道路や住宅、自動車、食品など、さまざまな製造現場で縁の下の力持ちとして、働く人たちの足元を支え、この国を支えています。  道路舗装用など、さまざまな安全靴を作っており、これまで日本中のあらゆる現場を歩き、研究を重ねて作り上げてきました。それぞれの職場に合わせた、より安全で快適な安全靴を届けたいと思っています。

― 海外の安全基準を満たす製品開発を目指したのはなぜですか。

ノサックス経営者に学ぶ学生インタビュー|広島女学院大学×広島経済レポート 共同プロジェクト
 海外で仕事をしていた際に、日本の安全靴が世界の安全基準を満たしていないと知り、とても驚きました。安全靴の規格には日本産業基準のJIS規格と国際標準化機構(ISO)規格があり、欧州や米国で採用されるISOの衝撃試験では、JISの3倍の200ジュールに耐えなければならないとされています。一方、日本の安全靴の大半がJISの数値にだけ耐えられるように設計されているのが現状です。


ノサックス経営者に学ぶ学生インタビュー|広島女学院大学×広島経済レポート 共同プロジェクト
 日本で造られる自動車などの工業製品は「世界一」だと私は思います。こんな優れた製品を造っている日本の労働者の足元が世界一の基準で守られていないのはおかしいと強く感じ、世界に通用する安全な製品づくりに着手しました。現在の製品は国内最高の安全性能で、トヨタ自動車でも採用されています。こうした取り組みが業界内に広がり、今ではJISに200ジュールという数値が追加されました。このように、日本のものづくりの現場で働く人をより安全にしたいという強い思いが原点となっています。

― 国内市場をどう捉えていますか。

ノサックス|経営者に学ぶ学生インタビュー|広島女学院大学×広島経済レポート 共同プロジェクト
 日本は人口減少期に入ってきています。生産労働人口は5000〜6000万人と推計され、少子高齢化に伴って働く人の年齢が上がっているのが現状です。もちろん働く人が減ると、安全靴を履く人も減ってきます。
 しかし、このネガティブな状況を悲観する必要はなく、逆の発想で捉えています。労働者の高齢化が進んでいるのならば、その現状に向き合い、柔軟な考えで靴づくりを進めたいと考えています。
 お好み焼ソースや佃煮製造など広島を代表する食品産業でも当社の製品が多く採用されており、これらの納品先では幅広い年齢の方が働いています。特に食品製造の現場ではご年配の方も多く、滑ってケガをしてしまうといった危険と隣り合わせで仕事をされています。こうした現場の声を反映し、例えば食品製造業向けの安全靴は、危険を未然に防げるように滑りにくさと軽さを突き詰めました。マーケットの増減を過度に意識せず、チャレンジ精神を持って、モノづくりの現場の声やニーズと向き合っています。

― 新型コロナウイルスの影響はありましたか。

ノサックス|経営者に学ぶ学生インタビュー|広島女学院大学×広島経済レポート 共同プロジェクト
 当社の安全靴は道路舗装や溶接、土木建設、工業製品業といった多様な現場で採用されています。納品先の業界に偏りがないことから、幸いにもコロナの影響はあまり受けませんでした。これはこれまで日本中のさまざまな現場を歩き、研究を重ねて製品を作り上げてきた当社の強みだと思います。




―「スペシャルオリンピックス」広島大会の副実行委員長を務められています。

ノサックス|経営者に学ぶ学生インタビュー|広島女学院大学×広島経済レポート 共同プロジェクト
 スペシャルオリンピックスは、知的障害の方のための世界的なスポーツ大会です。
 広島県の人口280万人に対して県内の障害者手帳の発行数は2万数千部です。これは、県人口の約1%に当たります。しかし、社会保障を辛うじて受けられる人と受けられない人がいるように、この手帳をもらえる人と、そうでない人がいることを考えると、もっと多くの人が障害と向き合っていると推測されます。
 スペシャルオリンピックスは知的障害の方がスポーツを通じて交流を深める重要なイベントです。2年ほど前にこうした活動に取り組む方と交流する機会があり、相談を受けました。「頼まれごとは試されごと」。私を信頼して頼んでくださるからこそ、公私ともにさまざまなことにチャレンジしたいと考えています。
 こういった社外の活動は、私たちの商売と直接かかわりがあることではありません。でも、広島の街が良い街、住みよい街になれば、めぐりめぐって自分たちの事業の持続可能性にもつながる。また企業経営者にとっては、結局事業は社会を良くするために、社会の役に立つために行っているのだから、儲けになってもならなくても同じこと。社業は再来年で100周年を迎えます。これからも広島の街の役に立つ会社でありたいと思っています。

常務取締役/野口 隆志 1977年生まれ、修道高校から99年に中央大学法学部を卒業。石油化学メーカーに入社し、シンガポールに5年駐在した。2010年に帰広し、家業に入る。15年から現職。



私たちがインタビューしました

「頼まれごとは試されごと」という心持ちで、とりあえず「やります」から入る、とおっしゃっていたことが一番印象に残りました。私はつい自分よりもほかの人の方が、と譲ってしまうので、変えていきたいと思います。 落合 栞奈

安全靴は私たちの身近なところにあると知りました。世の中にはものが溢れていて、そのものを作っている人がいる。そして、その人たちは足元の安全のために安全靴を履く。直接かかわっているわけではないですが、見えないところで私たちを支えていました。 岩澤 舞歩

「安全靴」は、多様な職種の方たちが仕事を行う上で危険から身を守ったり、私たちの生活に身近なものだと気づかされました。野口常務の「知らないものが見てみたい」という好奇心や常に新しいことにチャレンジする姿勢が非常に印象的でした。 伊木 彩花

安全靴を作る上でのこだわりや工夫点など、実物を拝見させていただきながら、さまざまなお話を聴くことができました。また、製造する方たちの思いを知ることができ、とても貴重な経験になりました。 宮本 若奈



取材日:2022年7月

会社概要

東洋商事株式会社
所在地:〒739-0038 東広島市田口研究団地6-40
(広島事務所:広島市中区紙屋町1-1-17)
設 立:1951年1月(創業1924年)
資本金:3000万円
売上高:8億9000万円
従業員数:14人(パート・アルバイト含まず)
TEL:082-425-3241
URL: http://www.nosacks.co.jp/
事業内容:安全靴の製造企画・販売、安全衛生保護具の販売
※2022年9月当時の情報です。 創業から98年の安全靴の老舗。「安全靴に世界基準という選択肢を」というスローガンの下、欧米の安全基準をクリアし付加価値を高める。「キングクラウンシリーズ」がトヨタ自動車で採用。2021年10月、広島市中区に営業所開設。