深刻化する人手不足対策に
地元中小企業が業務を共同受注

広島県ビルメンテナンス協同組合

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 中小規模の地元企業が団結し、建物の清掃や管理などのメンテナンス業務を共同受注する。相互扶助の精神で、組合企業の経済活動を促し、生産性の向上や対外交渉力の強化、経済的地位の向上を図る。1987年に設立し、2017年に30周年を迎えた。
 順風満帆な運営ではなかった。03年頃から建物管理に大手企業の参入が相次ぎ、入札競争が激化。共同受注だけでは安定収入を見込むことが難しく、方針転換を迫られた。そこで目を付けたのが03年から導入された指定管理者制度だった。

指定管理が主力事業に成長

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 指定管理者の業務は、建物に加え、利用者や個人情報の管理など、多岐にわたる。そのため、どのような組織体制が必要か、一から勉強を重ねた。内部から新規事業への反発もあったが粘り強く交渉し、組合全体で知識や理解を共有していったという。
 指定管理に伴い、情報漏えいなどのリスクを想定し、情報管理や内部監査を強化。協同組合では珍しく、05年に品質マネジメントシステム規格「ISO9001」、12年に「ISO27001」、14年に「エコアクション21」をそれぞれ取得。専任の事務局員を配置し、安定的な運用体制を整え対外的な信用力を高めた。
 06年、現在の広島市男女共同参画推進センターを皮切りに、広島、廿日市、大竹、三次、庄原市の県営住宅の約65%となる1万戸超を管理するまでに成長。05年度に3億9550万円だった総収入が、17年度は13億6200万円と大幅に伸長し、主力事業となった。一方で従来の建物管理だけで見ると、17年度は2億8400万円と縮小しており、建物管理の厳しい価格競争は依然続いている。18年6月から指定管理の建物を改修した際、組合企業による相互検証を開始。施工方法のチェックなど、品質維持の工夫を凝らしている。

相互融通の仕組みづくり急務

 業界全体で人手不足が深刻化し、一部で影響が出始めている。新規受注の見合わせや、本社スタッフを代わりに派遣するなどで穴埋めしている現状で、新たな変革が求められている。全国組織の全国ビルメンテナンス協同組合連合会は10月から、大手職業紹介サイト内にビルメンテナンス専門の特設求人サイト(https://bikyouren-recruit.com/)の掲載を開始。19年1月末まで試験運用する。
 背景として、労働人口の減少で人材獲得競争が激化しているほか、18年10月の広島県の最低賃金は844円と年々高まる一方で、一件当たりの受注金額は横ばい傾向。高い賃金で求人を募るとしても、企業への負担が重くのしかかっている。
 こうした中、県ビルメンテナンス協同組合は、11月に「人手不足対策部会」を設置。これまで共同受注した後の裁量は各企業に委ねられていたが、各組合企業の業務実態や人手不足案件などの情報を組合企業間で共有。企業の枠を超えた共同施工などで、効率的に作業を行える仕組みづくりを模索する。こうした作業員を相互融通させる取り組みは全国でも珍しいという。例えば午前中に作業を終えた会社の清掃員が、昼以降の時間帯で人手不足の別会社の清掃業務に当たるといった協力業務を想定。午前中に集中しがちな依頼を午後の業務に促すなど、発注者側にも理解を求める働き掛けを強化する。
 一方で企業ごとの受注金額の違いや、清掃員の能力やノウハウ、規則の違いなどの課題もある。これらをいかに融通し合っていくのか、月に1回程度会合を開いて協議を重ねていく方針だ。澤田英治理事長は、
 「1社だけでは解決できない人手不足の問題を、組合全体で知恵を絞り乗り越えていきたい。将来は共同求人も視野に入れています」

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