国際貿易DXプラットフォーマー目指す
中央アジアではスマートネット現地生産
株式会社ムロオシステムズ
呉市発、東京進出を経て世界へ
2006年に呉市で創業したムロオシステムズは事業拡大に伴い、13年に東京へ本社を移転し、現在は海外にもフィールドを広げている。
最大の転機となったのは、金融大手SBIグループ向けの海外ブロックチェーンデータセンター事業の成長だ。同事業は顧客のデータを分散的に共有・記録(ブロックチェーン)することで改ざんを防ぎ、透明性を実現する。19年5月に香港の100%子会社が51%出資し、キルギス共和国の有力企業と合弁会社を設立。12月に同国に自前のデータセンターを完成した。60㍋㍗設計で中央アジア最大級。主な顧客はSBIグループで、中央アジア事業の売上高は21年度に25億円へと伸長した。
中央アジアへの国際協力を念頭に入れ、22年夏からキルギスで「防災用ワイヤーメッシュ」の現地生産を開始。山の斜面を網目状の鉄製線材で覆うことで落石などを防ぐ。システム会社の強みを生かし、落石検知やアラート機能を盛り込む「スマートネット(防災用の金属網)システム」を構築する。緊急時には該当エリアに至る道路のゲート表示板で通行車両へ危険を通知するとともに、監視センターで把握する仕組みだ。現地のゼネコンと協力しながらインフラ整備に貢献する狙い。データセンターなどがある敷地9㌶内の既存建屋に生産ラインを整備。3年後に売上高10億円を目指し、周辺国や日本への供給も視野に入れる。生産開始に先立ち、2021年12月に90%出資で現地法人を設立した。
中国ではビッグデータ処理・解析事業などを手掛け、売上高は2億円。
プラットフォーマー目指す
ムロオシステムズは通常のシステム会社と違い、アマゾンなど米国IT大手のようにサービス基盤の構築と運用を自社で担う「プラットフォーマー」を目指す。20年度から中国―豪州間で国際貿易の仕組みの自社運営を始めた。ブロックチェーン型のデータベースを用い、両国間の製品のサプライチェーン(製造から供給の一連の体制)管理や輸出入事務の代行、代金支払いまで一元管理。潘忠信社長は、「IT会社は顧客のDX導入をサポートするだけの事例が大半ですが、当社はDXを活用して自社プラットフォームを構築し、実際に事業を手掛けています。この経験やノウハウが顧客の事業DX化の際にも役立ち、強みになると考えています」と話す。顧客のDX導入支援では物流の効率化システム、流通業のQR決済サービス「MSPS」(導入先約3万店)、携帯端末を使ったPOSレジ、教育施設向けアクティブラーニングや総合学事システムを手掛ける。
同社は物流地場大手のムロオ(呉市)の100%出資で06年に設立し、12 年に鷗州塾運営のAICエデュケーション(鷗州コーポレーションから社名変更)が第三者割当増資を引き受けた。19 年のSBIグループとの取引開始に当たって事業と資本の再編成を図り、現在は潘社長が全株を取得。また、05年にAICエデュケーションが設立した上海の会社を12年に引き受ける形で、ムロオシステムズが100%子会社化。ビッグデータ事業などを手掛けている。海外企業はいずれも連結対象外。潘社長は、「広島から東京へ、そして世界へと羽ばたく人材を求めています。将来の持続可能な社会実現に向け、環境と経済の好循環を志向する企業を目指して活動したい」
会社概要
株式会社ムロオシステムズ
本 社:東京都中央区日本橋本町4-15-1(呉市発祥)
広島支店:呉市中央1-6-9
設 立:2006年6月
資 本 金:5000万円
売 上 高:16億257万円(2022年3月期単体)
非連結の海外関連会社を含めると約43億円
従業員数:20人(単体)
事業内容:ビジュアルコミュニケーションを核としたクラウドサービス運営事業、物流ソリューション、流通システムソフトウェアの企画・開発・販売・保守、モバイル決済・アクワイアラー業務、ブロックチェーン技術を使った研究・運用等、日本・中国間専用回線サービス事業など
T E L:03-6892-0550
U R L:https://www.muroosystems.com/
※2022年8月当時の情報です。