Vol.9 株式会社タイヨー
~経営者に学ぶ学生インタビュー~

★ 広島女学院大学×広島経済レポート [ 共同プロジェクト ]★

タイヨー|経営者に学ぶ学生インタビュー|広島女学院大学×広島経済レポート 共同プロジェクト

 学生が地元経営者をインタビューすることで、地域で輝く企業に目を向け、思考を深め、広島での就職意識を高めてもらうプロジェクト。広島女学院大学の2年生がキャリア授業の一環で、各業界のトップに「業界・企業研究」「仕事観」などをテーマに全11社にインタビューを行いました。
 第9回は、一般・産業廃棄物の収集・運搬などのタイヨーの元山琢然社長。経営危機からの社長就任、当時の苦労や今大切にしていることなどを聞きました。

タイヨー|経営者に学ぶ学生インタビュー|広島女学院大学×広島経済レポート 共同プロジェクト代表取締役/元山 琢然
― 事業内容について。  一般廃棄物や産業廃棄物、事業ゴミの収集「にこにこクリーン隊」をはじめ、特別管理産業廃棄物の収集運搬など、広範囲にわたるごみ処理関連業務を行っています。取引先は個人のお客さまだけでなく、行政や多様な業種の民間企業などさまざまです。近年は循環型社会への貢献を目指し、各種リサイクル業に注力。2005年2月に、企業活動が地球環境へ配慮していると国際的に認められるISO14001の認証を取得し、さらに14年9月にはISO9001も取得。社内環境を改善し、お客さまにより良いサービスをお届けできるように励んでいます。

― 経営危機はありましたか。

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 まだ私の父が社長だったころ、経営陣の中で事業上の大きな失敗があり、当時の売り上げ規模16億円のうち8億円くらいの仕事を失いました。そのため責任を取る形で社長交代し、私が社長に就くことに。そのタイミングで専務だったおじさんが亡くなり、社長業の引き継ぎは一切ないままでした。私は当時31歳と年齢が若いこともあり、社長にはなったけれど社員は誰一人として言うことを聞きません。当時、年間の赤字額は2億円にも上りました。私は「会社=社員」という考え方こそが会社を経営していく上で最も大切なことだと信じています。社員も例えば運転が荒く、格好も汚れていても一向に気にしない様子。社員が変われば会社はきっと変わる。会社が傾きかけている今こそ、たとえ社員とけんかをすることになろうとも社員の気持ちを変えるんだと強く決意しました。会社を建て直すために。ですが、社員に変わってもらうことは並大抵のことではありません。なかなかうまくいかず結局は社員を入れ替えるしかなくなりましたね。つまり、私の最初の仕事はリストラをすることでした。
 そうすると今度は若い体力のある男性スタッフが不足してきました。とにかく人手が欲しかったため、男性社員にこだわる必要はないのではと考え、女性にも働いてもらえないかと思い始めました。女性が一人では運ぶことのできない荷物があっても、二人いれば運ぶことができる。それからさまざまな設備を取り入れて社員に負担がかからないように気を配りました。保育所を設立したり、シャワールームや休憩室を男女別にしたりと矢継ぎ早に取り組み、女性が働きやすい環境をつくりました。こうした取り組みで業績が回復し、黒字化を達成。今も社員が望むことは全力でサポートしています。


― 保育所の開設について詳しく教えてください。

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 シングルマザーや主婦層の人が稼げる仕事が少ないことから、託児所があれば働きやすい職場になるのではと思い開設。女性の採用よりも早く託児所の設置に乗り出したため、今までで一番高額の先行投資になりました。廃棄物処理業界で託児所の設置は初の試みで、成功するかどうか分かりませんでしたが、結果的に女性が安心して働ける環境づくりに大いに役立っています。保育所でお金を儲けたいわけではないため運営は専門会社に委託し、社員が無料で子どもを預けられるようにしています。

― 入社して大変だったことは。

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 大学生で帰省した際に当社でアルバイトをしていたことがあります。その時業務をやってみると意外に楽しく、自分も余裕で仕事をこなせると思っていました。しかし、いざ入社してみると、その自信は社員たちによって徹底的に打ちのめされた。それまで会社のことを甘く見ており、社会の厳しさやお金を稼ぐことがどれほど大変かを学んだほか、人に言うことを聞いてもらうことがどれほど難しいかも実感しました。
 社長に就任してからは、昼は銀行回りや営業に駆けずり回り、夜は社員のシフトを組んだりするなど、24時間働いたように感じますね。つらく、苦しい思いをたくさんしてきましたが、社員のためにと頑張りました。


― 人事評価制度について。

タイヨー|経営者に学ぶ学生インタビュー|広島女学院大学×広島経済レポート 共同プロジェクト
 社長に就任してすぐ、職場環境の整備と共に人事制度も一新しました。一般職、管理職の例外なく、部門別に昇給のための具体的な目標を示しました。それを基に個人的な目標を立て、四半期ごとに面談します。そこで自身の目標について振り返ってもらうほか、基準に沿った評価をします。これに加えて、従業員同士やお客さまからなど多面的な評価を取り入れ、公平性が高くなるようにしています。
 また、専門家の指導の下、何をどの程度達成できれば次の段階へと進み、報酬アップにつながるのかを目に見える形にしました。この評価基準は、誰もがいつでも確認できるように壁に掲示しています。
 いつも一生懸命に働いてくれる社員の皆さんには、「誰もが幹部候補生」として、日々の業務に従事してほしいと思っています。

― 大切にしている考えはなんですか。

タイヨー|経営者に学ぶ学生インタビュー|広島女学院大学×広島経済レポート 共同プロジェクト
 繰り返しになりますが「会社=社員」という考え方です。経営危機で大変だった時、同じように社員も大変だったと思います。そんな経営はもうしたくないですね。社員と相思相愛になれるような会社をこれからもつくっていきたいと考えています。愛してあげなければ愛されることなんてありません。自分の子どものように思っており、大切に育てていきたい。そのためにできる限りのことはしたいですし、大事にしたいです。




代表取締役/元山 琢然 大学卒業後、理学療法士を経て、父親が創業したタイヨーに2006年入社。17年から現職。1984年12月15日生まれ、広島市佐伯区出身。



私たちがインタビューしました

社長はずっと社員のために動いていると感じました。そして社員のためならばどんなことにも挑戦するという気概が伝わってきました。その意気を見習って、私も今後さまざまなことに挑戦していきたいです。 難波 ひなの

社員全員が働きやすいように、労働環境や人事評価制度などのさまざまな改革を行った事が分かりました。また、これからの展望として、「自分(社長)たちからは何も言わず、社員自身がやりたい事をかなえさせる」とおっしゃっていた事が印象に残っています。 大森 星奈

お話を聞いて「会社=社員」という言葉が印象に残りました。お客さまも大事だが、社員が気持ちよく働けるからこそいいサービスができるようになると言っておられて皆さんのことをとても愛しているのだなと感じました。 足立 桃心



社長が社員を第一に考えているのだと感じました。さまざまな改革が行われた根源は社員がもっと働きやすくなるためであり、社員はそれに応えられるよう、意見や考えをしっかり持つべきだと思いました。  川本 麻衣

取材日:2022年7月

会社概要

株式会社タイヨー
所在地:〒736-0082 広島市安芸区船越南5-11-1
設 立:1951年
資本金:4300万円
従業員数:80人
TEL:082-248-1171
URL:https://www.taiyo-net.co.jp/
事業内容:広島の産業廃棄物の収集・運搬・リサイクル、不用品の回収・持ち込みを受付や遺品整理
※2022年9月当時の情報です。 1951年創業。一般廃棄物、産業廃棄物と特別管理産業廃棄物の収集運搬、破砕等による中間処理に係わる事業を手掛ける。近年は循環型社会構築のため、各種リサイクル事業に力を入れている。