利益体質を追求
コロナ禍でも新技術に挑戦

マツダ

 2020年1月に創立100周年を迎えたマツダは一層の発展を誓った早々に、新型コロナの世界的拡大という猛威に襲われた。生産の一時休止や海外販売店の一時休業など自動車業界を揺るがし、同社の業績にも影を落としたが、同社初の量産EV「MX-30」を投入するなど果敢なチャレンジを続ける。
MX-30

MX-30

 20年度中間決算は世界販売が前年同期比15万2000台減、純損失930億円などの厳しい数値が並んだが、値引きに頼らない価値訴求販売を続ける方針。下期は前年同期比3万2000台増を見込み、通期で130万台(前年度比12万台減)を確保して赤字額を抑えたい考え。丸本明社長は会見時に、
「新型コロナのような事態でも利益が出せるように、さまざまな分野でコストを一層改善し、連結出荷台数の損益分岐点を100万台まで引き下げたい。企業存続には『人と共に創る』独自価値が必須で、成長投資を効率化しながら維持する。100年に一度の変革期といわれるCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)に対応するために、独自開発に加え、トヨタなど他社との協業も進める」
と話した。
 新型コロナは数々の苦難を招いたが、同社の改善活動をさらに進めるきっかけにもなった。例えば、国内では全てのパイプライン(受注〜納品などのプロセス)の在庫を可視化し、より無駄なく動ける体制を敷いた。損益分岐点100万台を念頭に在庫回転率を上げ、良好なキャッシュフローの維持につなげるために、すでに国内工場で実現させた「受注先行生産」を向こう2年で海外にも広げる。販売店までの納期の短縮や可視化を進めるとともに、サプライチェーン全体の情報インフラや業務プロセスを見直す。
 厳しい環境下でも技術開発に余念がない。走行性能と燃費向上を両立する「火花点火制御圧縮着火方式」のエンジン「スカイアクティブX」を世界で初めて実用化したことに代表されるように、根底にはマツダらしいものづくり精神がある。
 〝走る歓び〟や〝人間中心の開発哲学〟に基づき、19年から「新世代商品」を相次ぎ投入。国内では第1弾の「マツダ3」、SUV(スポーツタイプ多目的車)の「CX-30」を発売。欧州でEV、国内でマイルドハイブリッド(MHV)の「MX-30」を投入し、21年に国内でもEVタイプを予定。20年11月にはマツダ3を商品改良し、MHVを備えた圧縮着火エンジン「e-スカイアクティブX」などのソフトウエアをアップデートすることで制御の精度や応答性を高め、最高出力とトルクを向上させた。12月には同じくCX-30でも実施。ガソリンとディーゼルエンジンの2タイプがあるCX-5と同8でも行った。
MAZDA3

MAZDA3

 世界中で進む環境規制への対策も待ったなしだ。同社は30年までに全ての車種にMHV含む電動化技術を搭載する方針を掲げ、地域のインフラ整備や規制の状況に応じて最適な動力源・モデルを投入していく。独自開発のMX-30もそうした方針に基づき、各市場への展開を検討する。次世代EVのプラットフォームやロータリーエンジン技術を活用したマルチ電動化技術などの開発にも取り組んでいる。併せて協業を強化。米国新工場で生産する新型SUVにトヨタのハイブリッドシステム(THS)を搭載予定のほか、欧州ではトヨタのヤリスTHSタイプをベースとしたモデルをOEM委託し、中国でもTHS搭載モデルの販売を予定する。丸本社長は、「これまでの100年で築いてきた資産を最大限に活用し、成長したい」と力を込める。