オール広島でコロナ克服図る
MICEへ産業奨励館を着想

インタビュー2021 広島経済同友会 佐々木茂喜代表幹事 オタフクHD社長

-今年の県内経済をどうみますか。
 
 新型コロナで厳しい状況が続きますが、明けない夜はないと信じて会員企業はもちろん広島全体で困難を乗り越えるべく、力を合わせたい。
 当同友会でも昨年、コロナ禍による外出自粛要請などで4〜6月に活動を控えましたが、7月に再開して会員に緊急アンケートを実施。ここで出た課題を基に、ポスト・アフターコロナに対応した新しいテーマを設定し、各委員会で情報提供や勉強会などに取り組んできました。働き方改革やリモートワーク、ITに関する悩みが多く見られ、当同友会も10月からウェブ会議システムを導入。リアルの参加者を従来の半分の50人に縮小した上で、ウェブを活用したハイブリッド会議としています。当初はウェブ会議に抵抗がある経営者も多かったと思いますが、実際に参加することで気軽にできると知ってもらえたようです。ハードルを下げたという意味で意義があったと思います。5GやDX(デジタルトランスフォーメーション)のセミナーをはじめ、ダイバーシティ委員会では県とのテレワークに関する意見交換会を開催するなど、新しい働き方の導入を後押ししています。

-広島のまちづくりの展望は。

 広島商工会議所の副会頭を務め、まちづくり委員会の委員長でもある広島電鉄の椋田社長に、各団体・行政と連携した動きをしていただいています。個人的には商工センターでMICE(大規模会議などの誘致)施設の新設が実現するとうれしい。JRも路面電車もあり、場合によっては海からのアクセスも可能。中小企業会館も老朽化していますし、サンプラザ含め有効利用できる土地もあります。これは持論ですが、イベントがないときにも人を呼び込める産業奨励館があれば魅力的な街づくりにつながると思います。原爆ドームは被爆前、広島県産業奨励館でしたので、当時のような施設を再現し、地場企業の製品や歴史を常時展示して見学できるような施設にするのはどうでしょうか。宮島と原爆ドームの中間に位置するため、観光客も来てくれる。そういう施設を単独企業で持つのは難しいですが、みんなで取り組めば実現できるはず。札幌、仙台、福岡と比べても、広島には全国に展開している企業が多い。広島の産業を発信する価値は大きいのでは。

-同友会は広島への人財呼び込みに力を入れていますが、課題は何か。

 地元の人が広島の魅力に気付いていないことです。コロナによる働き方の多様化などで、過密を避けられる地方が見直され始めている。私は東京・大阪で暮らした経験がありますが、広島は都会過ぎず田舎過ぎず、本当に住みやすい。例えば通勤時間は場合によって1日2〜3時間の違いがあり、人生というスパンで考えたらものすごい差となります。海も山も川も島もあり、特色的な地方都市も多くある。全国展開する企業に勤め、広島に着任された方の多くは東京に戻りたくないと言われます。Iターン就職も増えており、当グループのオタフクソースでは20年の新入社員27人のうち約4割がIターン。IT人財も中途で2人採用でき、県外からの評価の高まりを感じます。
 一方、これらは当たり前すぎて地元の方には認識されていません。今は残念ながら広島の魅力を眠らせてしまっている状態。まず、広島の価値や強みを地元が認識する必要がある。

-課題解決への取り組みは。

 上田宗箇流のお茶会やひろしま神楽への取り組みなど、広島の文化・歴史・伝統に関する卓話やイベントのほか、各支部でも自分の地域を知るための取り組みを実施しています。県外・海外からの来客が見込めない今、知らなかった広島の魅力を再発見するという意味で「ミタイケンひろしま」は良いタイミングだったのでは。例えば、北広島町大朝には日本で唯一のテングシデの群生地がありますが、私も今年まで知らず、実際に訪れてみて壮大さに感動しました。
 今期のメインテーマは「広島という才能を、眠らせない〜広島の未来が新しい日本をつくる〜」。今は地元に目を向け、地元でお金を循環させながら、コロナ収束後に訪れてくれるであろうお客さまのために「地元で地元を盛り上げる」時期。当同友会では講話・視察などを通して、広島の魅力を伝えていきます。

-各委員会の取り組みは。

 当会の会員数は東京、中部に次いで全国3番目の890人余りで、6支部のある全国でも希有な同友会です。ものづくり委員会では金型などのバーチャル作成技術を教える「デジタルものづくり塾」を2年前から実施。大手だけでなく地元中核企業から関連中小企業にも技術を体験してもらうことが狙いで、実際にコストや納期の削減につながっています。ひとづくり委員会では10年間近く行う新入社員研修(20年はコロナで中止)に加え、教養(リベラルアーツ)研修を充実させていきます。その他の委員会でも各種課題の解決に向け、取り組みを続けていく。

-大学との連携も進めていますね。

 学生に地場企業を知ってもらうとともに、企業も地元大学がどのような人材を育成しようとしているのか知る必要がある。そこで、ここ1年で大学との連携を強化。包括協定を結ぶ広島工業大学、広島修道大学、広島女学院大学の学生との「新たな働き方」に関する意見交換会や、広工大と共催のPRイベントなどを行いました。県立大大学院と共催の「価値創造セミナー」、広島大学起業部によるビジネスコンテストなど他大学とも積極的に連携。今後も継続することが重要だと考えています。
 2年前の就任時から「オール広島」をスローガンに活動しており、委員会同士や支部間の連携だけでなく、大学や他の経済団体、行政との連携も一層進めていきたい。