サッカースタジアム寄付金10億円目標へ声掛け
新型コロナ対応に力 新ビルに産業支援機関集約も

新春インタビュー2021 広島商工会議所 池田 晃治 会頭

-広島県経済の現状と新年の展望をどのようにみていますか。

 2020年の新年互礼会で「東京オリンピック・パラリンピックがある記念すべき年を迎え、新しいことに挑戦したい」とあいさつしましたが、その後、新型コロナウイルス感染症の影響で社会が大きく変化し、経済も大きな影響を受けました。
 08年のリーマンショックはリーマンブラザーズの破綻を契機にした金融危機で、先進国が痛手を負いましたが世界全体のGDP(国内総生産)はマイナス0・1%に過ぎませんでした。ところがコロナショックは、感染防止から経済活動で重要な「ヒト」と「モノ」の動きが止まり、全世界・全業種にショックを与えています。IMF(世界通貨基金)は今回の新型コロナウイルス感染症の影響で、20年の世界経済見通しをマイナス4・4%と予想しており、改めて影響の大きさが分かります。
 広島商工会議所では8〜9月に全会員を対象とした、新型コロナウイルス感染症による「売上への影響、事業・雇用の対応」などの調査を実施しました。切実な生の声を伺いましたが、全業種で大きな影響が出る中、経営者は従業員の雇用を守ることに努力している姿が浮き彫りになりました。11月には飲食店応援プロジェクト「グッドスマイルひろしま」タブロイド紙を広島市内全域(約30万戸)に配布し、ネット検索もできるようにしました。
 広島県では感染者が増え、経済への影響が心配な状況です。事業継続や雇用維持に関する各種経営相談に引き続き対応してまいります。

創立130周年で10月に式典


- 21年の広島商議所の運営方針はどうですか。

 5人の副会頭とは月2回のペースで協議の場を持ち、新型コロナウイルス感染症対策、サッカースタジアム寄付金、商工会議所ビル移転を中心に、担当以外の分野も情報共有し議論しています。「新型コロナウイルス感染症対策寄付金の専用口座」についても副会頭と議論して広島県に開設を要望しました。12月末現在、約3億7000万円の寄付が集まり、感染防止、医療体制強化、事業継続などに使われています。
 当初21年度スタートの予定だった3カ年新中期計画は、新型コロナウイルス感染症の影響で1年延ばし、22年度から始めることにしました。1年かけて、商工会議所の役割、将来像を議論していきたいと思っています。
 広島商工会議所は今月12日に、創立130周年を迎えました。10月に記念式典を予定し、10年ぶりとなる周年史の編へんさん纂も計画しております。
 新年も中小企業・小規模事業者の支援を最優先に、前例や慣習にとらわれることなく柔軟な発想で、会員の皆さまに「商工会議所に入って良かった」と感じていただけるよう、商工会議所一丸となって取り組んでまいります。

-サッカースタジアムの進捗は。

 今回は設計・施工事業者を一括で選ぶ方式を採用しております。20年10月から設計施工者の公募を開始し、今年3月に優先交渉権者が選ばれる予定です。
 昨年には、重藤隆文副会頭が有志代表となり、マツダを幹事社とした企業16社・4オブザーバーで検討した「サッカースタジアム建設に向けてのご提案」を広島市に提案しました。「広島のサッカー」、「広島のものづくり」、「広島の食文化」のバーチャル情報を、スポーツ観戦、企業ミュージアムなどのリアル体験につなげるプランや、eスポーツ施設案も盛り込みました。河岸に雁木タクシーの発着場を設け、倉橋のしらす丼などを提供する「島めし食堂」のアイデアもあります。広場の整備には、視察した大阪・あべのハルカス近くの天王寺公園芝生広場「てんしば」が参考になると思います。サンフレッチェ広島案と重なる箇所もあり、設計・施工に生かしてほしいと思います。

-寄付はどのように呼び掛けますか。

 総額10億円の目標を立て、広島商工会議所が申し込み窓口となり、中国経済連合会、広島県商工会議所連合会、広島経済同友会、広島県経営者協会が連携して寄付金募集を行っております。
 広島銀行、中国電力グループから各2億円の寄付があったほか、広島市と近郊では、会員企業を中心に声掛けを開始しています。新年から私が直接、福山、尾道、三原など県東部を回ろうと考えています。エディオンやマツダのような広域企業が利用できる、企業版ふるさと納税制度を周知したいですね。

市と財産交換し地権者で参画へ


-商議所の移転・建替の動向はどうなっていますか。

 19年にビル建設専門チームから改組した特別委員会で本所内での協議を行い、広島市をはじめとした関係権利者と引き続き話し合いを進めています。
 スキームとしては、市との間で本所ビルと基町駐車場を財産交換し、地権者となった上で事業に参画する形を想定しています。機能や財政面など実現可能な具体案が整った段階で最終的に機関決定を行うこととしています。
 また、再開発ビル内に商工会議所のみならず、行政などと連携して地域の産業支援機関を集約できればと思っています。中小企業のさまざまなご相談や新ビジネス展開を目指す起業家たちに対して、最適な支援メニューをワンストップで提供できるとともに、異業種の交流の場などもあれば、「次代」に向けた広島発の産業創出につながるものと考えております。