業務振り返るシートで生産性や意欲向上
アンケートで得た声を反映、残業も削減
株式会社キャリアカレッジジャパン
取り組んだ背景
~高離職率の創業期を経て働きやすい職場に
2008年に通信教育事業「資格のキャリカレ」として設立。多種多様な資格をそろえ、教材を自社で制作し、資格取得後の就職・転職や独立・開業のサポートも行う。代表取締役社長の横田正隆氏は、
「会社の設立以降、始めのうちは広告や講座開発などを全て従業員が行っていました。従業員それぞれのやり方で作業を行うため、自宅に持ち帰って仕事をしたり、休日出勤したりすることもあり、入社1年以内に辞める従業員も多かったです。そんな時期もありましたが、アウトソーシングできる業務の見直しをし、従業員の声を業務や環境に反映させてきたことが功を奏し、ここ2~3年は離職率0%に近い。当社は女性が多く、近年は介護や夫の転勤などで一度退職したパート従業員が復職するケースも増えており、子育て世代にとっても働きやすい環境にしたいと改革に取り組みました」と話す。
横田氏と管理本部がリーダーシップを取って、働き方改革を推進している。
主な取組と工夫点
◆計画有給休暇や業務負担軽減で休みやすい雰囲気づくり
有給休暇については、年度初めに年間5日以上の取得を、本人の希望をベースにあらかじめスケジュールに組み込み、確実に取得できるよう促している。また、子育て世代のパートの多い部署では子供の急病などで当日休む場合でも、毎朝30分の朝礼で業務分配の采配を決め、対応している。どのような状況でも業務の進行に支障をきたさないよう、人員配置の検討や業務改善を重ね、常に全体のバランスが偏らないようにしている。横田氏は、
「一部に負担が重ならないような体制を組んだり、フォロー体制を築いたりすることで、気兼ねなく休める環境をつくっています」と話す。
◆全従業員アンケートで現場の声を改善に生かす
約8年前から年2回、全ての正社員・パート従業員にアンケートを実施。アンケートは仕事の環境や人間関係などを匿名で記入してもらう。現場に潜む問題や課題を洗い出し、改善するよう努めている。また、集計結果は全社に公表し、要望や意見があったものについては社長や管理本部がフィードバックしている。例えば、席が部屋の出入り口に近く、暖房が効きづらいという声を受けて暖房器具を増設したり、照明の配置上、暗くなりやすい席の付近に照明を増設したりなど改善した。その時の状況で、すぐに対応できない内容にはなぜできないのかその理由の説明や別の提案を行うなど、現場の声にしっかりと向き合っている。
◆勤怠管理システムや事前申請制で残業削減
勤怠管理システムを導入し、管理本部主導で休日や残業を管理するようにした。休日に出勤した場合は1週間以内に振り替えて休み、残業する場合はシステムで事前申請するなどルール化。上司は業務状況を把握し、チーム・部署内でフォローしあうなどの体制を組み、やむを得ない場合に限り残業を許可している。これにより残業削減につなげている。こうした取組がうまく作用し、5~6年前は月平均50~80時間あった残業が19年には平均15時間ほどに減った。
◆15分単位の生産性管理シートで生産性への意識高める
18年から日報は15分単位で業務内容を記入するようにした。それをもとに生産性管理シートを毎月作成し、翌月の予定を立てる。上司は月1回の部課長会議で各従業員の生産性管理シートを持ち寄り、業務の生産性や無駄、業務負担の集中などがないかを確認し、部署に持ち帰って個人面談を行っている。この作業を繰り返すことで、従業員の生産性に対する意識も自然と高まっているという。
取組の中で苦労したこと
~上司は一時的に負担増、従業員から抵抗も
横田氏は、
「生産性管理シートの導入で上司の負担が増えてしまったことは確かですが、〝より働きやすい職場にする〟という共通目標があるので、地道な努力を続けることができています」と話す。
当初「周りに迷惑がかかるので有給休暇は取りづらい」といった雰囲気や残業規制への不安・不満の声もあったが、外注や人員補充はもとより、個人の業務整理や業務の内容・進め方などを把握することで、従業員の抵抗が少しずつ無くなってきているという。
取組の成果
~業務振り返りで生産性・意欲向上、さらなる業務管理で意識改革
生産性管理シートを活用し、予定・目標に対する成果などを自ら書き出し、日ごと・月ごとに振り返る作業を実施。生産性が高まるとともに、残業削減や有給休暇取得の促進、モチベーション向上にもつながっている。20年1月からはさらに時間への意識を高めて生産性を向上させるため、15分単位で実施していた勤怠管理を1分単位の管理に踏み切り、併せて業務報告、生産性管理シートも1分単位に変更した。この変更の目的には、細かな時間配分をもとにより公平な評価を行うことや、業務に携わった時間を正確に報酬として還元したいとの思いもある。
アンケートでは「会社から残業削減や有給休暇の取得について積極的な発信があるので定時で帰りやすくなり、休暇の取得にも抵抗が無くなった」などの声が上がっている。
課題や今後の目標
~さらなる意欲向上や、やりがいの醸成へ
業務管理による上司の負担増の解消に向け、今後、マネジメント業務に集中できるような環境を整える計画だ。もう一つの課題は、改革を主導する管理本部と各現場の上司のギャップを埋めることという。
「働きやすい職場づくりは進んでいますが、目指すのは〝働きがい〟のある職場。従業員のモチベーション向上や、やりがいにフォーカスして、20年度には外部講師を招いた研修を実施予定です。キャリアビジョンとライフビジョンを書き出して明確にし、一人一人がミッションを持って働ける職場を目指したい。現在、テレワークや副業の導入も進めていますが、将来的には会社から従業員に副業の提案ができるような柔軟な体制にしたい」と、横田氏は展望を語る。
従業員からの評価
顧客管理部
佐々木 渉 さん
約4年前に中途採用で入社。当時は講座開発部で企画を考えることに時間がかかり、残業が多く、業務効率や定時に帰宅するなどの意識が薄かったです。自分の業務を書き出す生産性管理シートを作成することで時間管理の意識が芽生え、締め切りから逆算してスケジューリングできるようになりました。さらに上司の声掛けもあり、定時で帰りやすい雰囲気も整っています。双子の父で、育休も年末年始の休暇と育児休暇の1週間を合わせることで長期間取得することができ、毎日ほぼ定時で退社しています。
現在は顧客管理部に所属し、資格取得を目指す顧客サポートを担当。勉強につまずいたときに一緒に考えて、アドバイス・応援するなど、顧客に寄り添った仕事に働きがいを感じています。今後はより多くの人が多方面で活躍できるよう人材育成のサポートに注力するほか、定時帰宅を続けて育児にもより積極的に参加していきたいです。
取材日 2020年2月
会社概要
株式会社キャリアカレッジジャパン
所在地:広島市安佐南区八木1-15-5
URL:https://www.c-c-j.com/
事業内容:通信教育事業、教育・学習支援
従業員数:117人(男性21人、女性96人) ※パート含む
(2019年11月時点)
情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com)