出勤時間を選択し、働きやすく
社長が呼び掛け現場がカバー、有休取得促進

有限会社モーコ製パン工場

取り組んだ背景
 ~地元で長く愛され続けるために

 代表取締役を務める望戸良紀氏の父・一良氏が1944年に創業。大竹市の学校給食のほか、病院向けにパン・米飯を製造し、パン店「コペイカ」を直営。洋菓子も製造する。パン製造は朝が早い上に、病院などに毎日納品しなければならないため、工場は年中無休で操業する。従業員の年間休日は約85日と業界内でも少ない方だった。働きやすい職場の実現を目指し、5年ほど前に社会保険労務士の指導を受けて人事労務の制度改善に着手した。

 さらに、今後の定期的な人材採用に向け、一層の職場の待遇改善を図らなければならないと考え、大竹商工会議所のサポートを受けて2019年4月から働き方改革の取組を本格化した。望戸氏は
「大竹市をはじめ、地域に支えてもらっている会社で、昔から従業員は、近隣住民や当社製品に親しみのある方が大半を占めています。つまり従業員はお客さまでもあるわけです。そのため、従業員に生きがいを持って働いてもらい、従業員の生活も良くしていきたいと思っています。良いパンを良い従業員と共に作りたい」
と話す。

主な取組と工夫点

◆製造工程を工夫し、出勤時間を家庭の都合に合わせて選択可能に
 パン製造という業態から朝に業務が集中し、これまで出勤時間は午前4時、6時または8時からと、一般企業に比べて早かった。子育て中の女性従業員が在籍しており、それぞれのライフスタイルに合った働き方を実現できる職場を目指し、19年4月から午前10時までであれば出勤時間を柔軟に選べるようにした。4時など早いシフトに正社員が入って生地の仕込みなど技術の必要な業務をこなし、遅れて出社する子育て中やシニア世代などのパート従業員が成形や焼き上がり後の包装作業などを担当している。昼間に一時帰宅し、家事などを済ませてから再び出勤することもでき、そうした柔軟な勤務体系を実現したことで子どもを持つ主婦層の離職率が下がった。

◆計画有休で5日間の取得義務に対応
 以前は、ほぼ有給休暇を取得できていない状況だったが、法改正に合わせて年度初めに予定を決める計画有休を導入し、19年4月からの1年間で正社員全員が計5日間の有給休暇を取得した。年中無休のシフト制のため、有給休暇だけでの連休はかなわなかったが、できるだけ通常の休日の前後に合わせて連休を取れるように配慮した。望戸氏が積極的に声掛けしたほか、社内にポスターを掲示し、有給休暇取得の義務化を周知したことも、取得に対する意識を高める要因になったという。

◆省力化に向け、機械設備を導入
 14年に工場をリニューアルした際に、自動で生地を切る機械や誰でも使える包装機など、省力・効率化につながる設備を導入した。従業員の出勤時間や負担を減らすため、冷凍・冷蔵・発酵設備も活用。従来は早朝の午前4時から生地を練り、午前中に発酵させて焼き上げていたのを、前日に生地を仕込み、朝4時には発酵が済んでいる状態にした。これにより一部の従業員の出勤時間を遅らせることができるようになり、業務負担も減った。4月以降、さらなる負担軽減のため新たな設備投資に取り組む計画だ。

取組の中で苦労したこと
 ~一時的にパートへの負担増、シフト作成に苦労

 望戸氏は
「正社員の有給休暇取得を始めた当初はパートへの負担が一時的に増えてしまいました。有休を取得することに抵抗感を持つ正社員もおり、趣旨をしっかりと繰り返して伝えていくことで、少しずつ浸透していきました」
と話す。シフトは月単位で望戸氏自身が組んでおり、
「4時~10時までの間から出勤時間を選択してもらう制度の導入に加え、有休取得もあり、当初はシフト作成に苦労しましたが、皆の協力を得ながら次第に慣れていきました。新たな取組の評判は上々です」
と、手応えを感じている。

取組の成果
 ~取組を通して効率化の意識を醸成

 生産効率を高める設備投資の導入や、有休を取るために互いにフォローが必要となり、従業員が時間内で業務を終わらせるためにいかに効率よく業務をこなすかについて、以前よりも考えるようになったという。また、自分のライフスタイルに応じて出勤時間を選べるようにしたことで、「出勤希望時間に対する会社側の配慮がありがたい」という声が挙がっているほか、多様な働き方を望む求職者からの評判も良く、採用力の向上にもつながっている。

課題や今後の目標
 ~シニア・女性が働き続けられる職場づくり

 女性を中心にパート従業員が主力業務を担う職場なので、近く育児休業制度を整備していきたいとする。望戸氏は
「出産で退職したパート従業員が、数年後に再び当社を職場として選んでくれました。働きやすい職場ということで復職してくれたのはうれしかったです。これがきっかけで、女性が安心して働き続けられる環境の整備が不可欠だと感じました。今後は他のパート従業員が出産を機に退社しなくてもいいように育休制度を整えていきたいです。子育て世代のほか、子どもが独立して、久しぶりに働き始めるシニア世代も多いので、高齢者も働きやすい職場を目指しています。それを人材採用にも生かしたいです」
と話す。

従業員からの評価

パート
木村 昌枝 さん(右)
 午前は9~12時、昼に一時帰宅し家事を済ませてから再び出社し、午後2~4時に米飯の洗浄・片付けを担当しています。子育てが終わり、「シニア世代・高齢者歓迎」とあったハローワークの求人がきっかけで働き始めました。若い人からシニア層まで女性が多いですが、それぞれ育児や介護など家庭の事情に合わせフォローし合っています。ライフスタイルに合わせて家庭と両立できるので、楽しくいきいきと働ける職場です。

パート
大迫 絵美 さん(左)
 結婚で大竹市に移住し、以前パティシエだった経験を生かしたいと思い入社しました。出産で一度退職しましたが、復職を希望し再雇用してもらいました。子育てへの理解があり、子どもの急病などで助け合う体制があるので、安心してずっと働き続けたいと思っています。

取材日 2020年1月

会社概要

有限会社モーコ製パン工場
所在地:大竹市新町3-4-23
URL:-
事業内容:パン、米飯、菓子の製造
従業員数:38人(男性11人、女性27人)  ※パート含む
(2019年11月時点)

情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com