高級バッグのシェアサービス展開
シンプルがイノベーション起こす

ラクサス・テクノロジーズ株式会社

ラクサス・テクノロジーズ
代表取締役 児玉 昇司

写真1

プロフィール

 広島大学付属高卒。早稲田大学理工学部中退。初の起業は入学半年後の18歳。1976年9月27日生まれ、広島市出身。

 広島の学生が県内企業の経営者に「働く」をテーマにインタビューした。第11回は、高級バッグのシェアサービスを展開するラクサス・テクノロジーズの児玉昇司社長。注目業界で急成長を遂げている。イノベーションを起こす背景・考え方を聞いた。
-シェアサービスで月額利用料を抑えられる秘訣を教えてください。
 高級バッグを月額6800円で貸し出す事業を展開しています。日を追うごとに利用者が増え、現在会員は28万人。継続率98%を維持し、業績も順調に右肩上がりで推移しています。
 このビジネスは当初月額2万9800円でないと成り立たない事業でした。ただ、顧客の中にクレーマーが1~2%ほどいて、多くの人件費がそこに割かれていました。社員の精神的な面でも良くないので、そうした人たちには会員を辞めてもらいました。今、経営指標で一番大事にしているのは継続率。顧客獲得単価を下げても継続率が1%変わるだけで、一気に取り返せます。 写真1
-経営危機はありましたか。
 危機と感じたことは一度もありません。私自身、4回起業しており、ビジネスの世界は毎日のようにイレギュラーが起こるので、それがレギュラーになっています。少年漫画「ドラゴンボール」で主人公の孫悟空が徐々に強い敵に出会うのと同じように、壁を乗り越えると次の展開が見える。成長しているからこそ、次の困難に出会います。言い換えれば、成長していない人は困難に出会っていないということだと思います。
-社長の仕事観は。
 人は全員、何かしらの才能を持っていると思いますが、200%の力で実践しないと開花しません。仕事とプライベートを線引きする〝オンとオフ〟ではなく、ずっとオンの状態で、ライフワークにしています。仕事のストレスを旅行などで解消しようとする人がいますが、仕事で受けたストレスは仕事でしか晴れません。営業がうまくいっていないのに、旅行したからといって解決しません。
 私は世界を変えたいと思っています。良いアイデアがひらめくのは偶然ではなく、情報量の違い。少しでも多くの良い情報を取り入れ、仲間を増やしていくことが重要。そして、とにかく〝シンプル〟を心掛けています。例えば、投資家が話を聞くのは冒頭5分だけ。その時間で理解してもらうには、シンプルでなくてはなりません。複雑なことを難しく話すのは誰でもできますが、より簡単に説明するのは難しい。そうしたことを成し遂げるためにも、自分自身への投資として、本や経験から知識を得るようにしています。例えば、「明日ニューヨークで私に会いたがっている人がいる」と言われたら、迷わず行きます。チャンスってそういう時に来る。自分で良いのかなと思うかもしれないが、そもそも資格がある人にしか声は掛かりません。
-社員に求めるものは。
 皆さんは「アドバイスを聞きなさい」と指導されていると思いますが、それと同じくらい重要なのは、切り捨てる力。すべて聞いているとアイデアが中途半端になる。自分自身で判断できる力を養ってほしい。社員にも自分の頭で考え、地頭力を鍛えてほしいと思っています。例えば、自ら考えた手法でサービスを改善して利用率が上がるとなれば、検証したくなるし、評判も気になりますよね。自分の頭で考えない限り、その後の行動につながらないし、人としても伸びないのです。
 そして、シンプルに物事を伝える力を身に付けてほしいですね。私の経験上、偉ければ偉くなるほど、話の内容はシンプルで、分かりやすい人が多い。当社ではシンプルに考えるための研修として、仕事やプライベートを1分間で説明する“ピッチ”を行っています。ビジネスシーンで初めて人に会うとき、名刺交換で3時間も話せないですよね。最初の1分間で自らを伝えられるかが重要。1分間で話す練習は、当社の社員だけでなく学生の皆さんにもぜひ実践していただきたいですね。
-世界を変えるための将来像は。
 イノベーションを起こすためのキーワードは①価格の高いものを安くする、②複雑なものをシンプルにする、③時間を短縮する。これらを踏まえ、現在のサービスを成功させることはもちろん、新たに医療業界でもイノベーションに挑戦したい。お金を払う側(国)とサービスを受ける側(患者)が違うとイノベーションが起こりにくい。だからこそ、そこにメスを入れられると考えています。
-若者にメッセージを。
 日本では4月1日を機にお金を払う学生から、1カ月20万円もらえる社会人になります。その1日を境に自らの価値が上がることなんてあり得ません。本来、お金を稼げるようになるには少しずつ力を付けていかなければいけません。自分を成長させていくために、経験や情報にどんどん投資してほしい。例えば、海外留学してIT業界の最先端でインターンシップをするなど、経験をしてほしい。20代、30代で失敗する人なんてたくさんいます。でも、何とかなるので、思考を停止させず、信じた道を突き進んでほしい。

学生の声

・社長独自の視点で語られる仕事観は大変興味深く、最後まで楽しくお話を聞かせていただきました。今後の就職活動に生かしていけるよう、自分から積極的に行動したい。(土井)
・インタビュー前は事業について話されると思い、しっかり話を理解できるか不安だったが、私たち学生に向けたアドバイスのようなお話が多かったため、今後の就職活動でしっかり生かしたいです。とにかく、考えをシンプルに、アウトプットができるインプットを図っていきたい。(小林)
・児玉社長の「オンとオフをつくらない」という言葉がとても印象に残りました。私は4月から社会人になるので、この考え方を参考に仕事をライフワークにして、より多くのことを吸収して成長したい。(新宅)
・給料をもらう社員と、与える役割である社長の意識の差には大きく隔たりがあると感じました。だからこそ目的意識、努力の方向性を一致させることで会社や事業の繁栄・拡大につながり、引いては社会貢献をすることができると思いました。(栗栖)
・今回、児玉社長とお話をさせていただき、「常に挑戦し続け世界を変える」という言葉にとても感銘を受けました。どのような困難も諦めず乗り越えていく、その強い心を見習い、私たちがこれからの社会を支える存在になるため挑戦し続けます。(安光) 

会社概要

 2006年8月設立。ネット通販を手掛け、15年2月から高級バッグシェアサービス「ラクサス」を開始。17年1 月に現社名に変更した。現在会員は約28万人。海外でもマーケティングを実施しており、世界展開を目指す。 (2019年3月時点)