4月に創業100周年
地域に密着し信頼関係を築く

正田建設株式会社

動画をリクエストする

正田建設
代表取締役 正田 俊

写真1

プロフィール

 日本大学理工学部建築学科を卒業し、1984年に正田建設に入社。96年に代表取締役社長に就任。広島県建設工業協会の監事なども務める。58年2月16日生まれ、安芸郡海田町出身。

 広島の学生が県内企業の経営者に「働く」をテーマにインタビューした。今回は、4月に100周年を迎える正田建設の正田俊社長。地域を大切にしながら信頼関係を築き、成長を遂げてきた老舗企業。100年間、存続してきた秘訣を聞いた。
―事業内容を教えてください。
 県内で戸建て住宅やマンション、アパートのほか、医療、商業施設など民間の建築物を手掛けています。当社の取引は民間企業が9割で、さまざまな建物を請け負うことができます。特定の分野だけではなく、幅広く対応するため、バブル崩壊やリーマンショックなどの危機を乗り切れたのだと思います。
 大きさ、工期、工法など、何一つとして同じ現場はありません。念入りに準備をし、協力業者との密な打ち合わせを基に進めていきますが、それでもトラブルが起こることはあります。春一番の突風など予期せず足場が倒壊した際には運よく大惨事にならなかったが、ひやっとする場面も。昨年の西日本豪雨災害も大変でした。「人が足りない」、「材料がない」は理由になりません。何かトラブルがあれば、早めに現場から伝えてもらうようコミュニケーションをしっかり図っています。私たちは、建物の引き渡し後もお客さまとのつながりを大切にしたいと考え、定期訪問するなど10年以上経過した建物の維持も行っています。お客さまと継続的にコミュニケーションを図り、誠心誠意対応することが信頼につながっていると思います。 写真2
-大切にしているモットーは。
 地元のお手伝いを続けていくことです。創業者、そして先代からの教えで、地域を大切にすることは、当社のイズムとなっています。例えば、法人会、商工会など、地域のさまざまな組織に入っていると、自ずと仲間ができます。そこで何か仕事を依頼されたとき、私がやらないといけない使命感が湧いてきます。こうしたお付き合いで顔を広められ、会社を発展できました。最近では、地元のライオンズクラブで西日本豪雨災害の復旧・復興を支援しています。
 一方で営業エリアは拡大せず、広島県内が主。これも先代からの教え。現場で問題があったら、すぐに飛んでいける体制を敷いています。何かトラブルがあって、一度後ろ指を差されたら、声が掛からなくなるもの。目先の利より、先々の信頼を裏切らない当社のモットーを今後も貫いていきたいですね。
 昨年7月の豪雨災害後は、本業より災害対応を優先しました。お得意さまの工場が被災した際は、永年の付き合いのある協力会社と力を合わせ、早急に復旧工事を進めることができました。ようやく落ち着き、ほっとしております。建設業界の需要はこういった時に顕在するもので、当社としても有事の際に頼りにされる存在でありたいと考えています。
-4月に100周年を迎えます。
 大工の棟梁だった初代、正田重市が安芸郡矢野町で建築請負業を創業しました。当時は10人程の弟子と共に、現場仕事にいそしみ、家族同様の付き合いをしていたといいます。仲間思いだった創業者の周りには常に人が集まっていたと聞いています。  先代、正田辰次は現熊本大学に在学中、太平洋戦争の影響でやむなく、広島に戻って来ました。水野組(現五洋建設)で修業後、当社に入り、創業者の手伝いをします。そして、時代は高度経済成長期に突入。その波に乗って発展しました。先代は新しいモノ好きで、パーソナルコンピューターが普及していない時代に、いち早く取り入れました。当時は、業種を問わずいろいろな方が当社に視察に来られました。一方で、「明日はどうなるか分からん」と、堅実経営を心掛け、自ら節制に努めていました。私は、先代の後を引き継ぎ、1996年、社長に就任しました。 写真3
-時代に合わせて変化しているのですか。
 休みと仕事のワークライフバランスを考えています。昔は、建設業界では休暇が取りづらかった。そのため会社を辞めていく人も少なくありませんでした。ただ、会社が変わらないと社員が変わらないと考え、社員に気持ちよく働いてもらう環境づくりに努めています。例えば、バースデー休暇を取り入れたり、休日出勤者に対して毎月メールで社員の状況を公表・共有(見える化)して振替休日の取得を促進。上司の配慮も芽生え、後輩が取りやすい環境に変化してきました。入社3年後の社員の定着率は90%を保っています。
-若手社員に期待することは。
 当社の採用基準は勉強ができる・できないではなく、信用できる人間かどうかという点で判断しております。あいさつ・感謝・反省、この3つを最低限、社会人になるまでに親から教えてもらうことの一つとして身に付けてもらいたいです。また、将来はどういう風に活躍していきたい、という夢がある人間を採用したいとも考えます。夢だけは必ず持って、就職に向かって頑張ってほしい。  一般的に、大学を卒業してから3年は修行と言われます。失敗は誰しもあるもの。それを乗り越え、最終的にはリーダーシップを取れる人間になってほしいですね。まずは、人から信頼される人間になることが大切。そのためには素直さも重要です。信頼を築けば、いろいろな人から声を掛けてもらえる人間になれるはず。
-学生にメッセージを。
 私は学生時代、3年生が終わるまでは、学生生活を謳歌しておりました。4年生のとき、建設省(現国土交通省)の建築研究所の第三研究部に入り、卒論をお世話になりました。建設業界の多くの優秀な方々との巡り合いが転機となり、勉強に打ち込みました。学生時代の一番の収穫でした。皆さんもぜひ多くの刺激に出会ってください。 写真4

学生の声

・さまざまな組織に所属すると、頼りにされるようになる。自分の印象に残った言葉はこれです。広くいろいろな方面に顔を出して、何か自分の得意な手段で人の役に立てれば、生きがいのある人生となることを社長の姿を見て強く感じました。(古本)
・「あいさつ・感謝・反省の3つを最低限、大学在学中に身につけてほしい」という話が特に心に残っています。普段の生活から、この3つを心掛けて生活したい。(龍井)
・正田社長の社員への熱い思いが印象的でした。私は建築について大学で学んでいます。失敗は誰しもあるもの、と不安を和らげてくださり、これからの建築業界に出ていく私たちのことを考えてくださっていて、とてもうれしかったです。(岩井)

会社概要

 1919 年4 月に創業。県内を中心に建築請負業を手掛け、民間からの受注が主力。ひろしま街づくりデザイン賞なども受け、有名建築家や大手企業からの引き合いも多い。4 月15日に創業100周年。 (2019年2月時点)