[型枠大工]

地場建設産業の担い手に聴く!14

vol.14  型枠大工
中田保さん
中村建工株式会社 型枠大工 職長

―型枠大工とはどういったことをするお仕事ですか。

 大工には、型枠大工のほか、一般の木造大工、神社仏閣を造る宮大工、船大工など、技術や手掛ける建築物によっていろんな種類があります。
 型枠大工は、主要構造部が鉄筋コンクリートや鉄骨の建造物を扱う職人で、土工・鉄筋・型枠大工・鳶の4者が躯体業者として、建物の骨組みを作る躯体工事に携わります。
 鉄筋コンクリートの建物を作る流れは、基本的に鉄筋を組んでから、型枠を建て、コンクリートを打ちます。コンクリート構造物を設計図通りに作るために、建築現場でコンクリートを流し込むための木枠(型枠)を作る技術者が型枠大工で、型枠にコンクリートを流し込み、固まったら型枠を取り外す作業までを手掛けます。大規模の鉄筋コンクリート造りの建物では型枠大工が必要です。 

―自己紹介を簡単にお願いします。

 平成15年に中村建工株式会社に入社し18年になります。これまでに学校や病院、大型商業施設、寺社など、多くの建設工事に携わりました。資格としては、型枠支保工、一級型枠施工技能士、登録型枠基幹技能者などを取得し、また優秀施工者国土交通大臣顕彰を受けました。現在は型枠大工の職長として、さまざまな躯体工事に携わっています。 

―型枠大工を目指したきっかけやその後の経緯を教えてください。

 実は、大工さんにもいろんな種類があることを知らず、はじめは木造大工になろうと思い、入社した会社がたまたま型枠大工の仕事をする会社でした。
 型枠工事は、同じところで同じ作品を作る仕事ではありません。毎回、いろいろな土地に出向き、多種多様な建物に携わります。図面を見て、設計者が思い描く出来上がりの状態を想像し、そのイメージを持って工夫しながら、躯体の造り方を検討します。型枠を作るための図面は自分で描きます。かつてはこの図面も手描きでしたが、近ごろはパソコンで作図します。手描きとパソコンの両方の作図を経験できているのは自身の強みかなと思います。
 いずれにしても、型枠大工はとても創造的な仕事であることは確かです。もちろん苦労もありますが、僕は図面を見たり描いたりするのが好きですから、そこがこの仕事の面白みでもあります。
 型枠大工の仕事に惹かれ、自分のやりたい仕事にこだわった結果、所属会社を変わる経験もし、現在勤務する会社で育てられ、成長させてもらい、感謝しています。

―仕事上の苦労などがあれば教えてください。

 建物を一階ずつ上げていくのですが、建物が高くなるほど、なかなかまっすぐに上がりません。誤差を考えて上手に調整しながら上げていくのが一番の難しさです。そこで生きるのは経験です。仕事は3年で覚えられますが、一人前になるまでには10年かかります。でも、建てる建物に同じものはありません。ワンパターンの仕事ではないところが毎回新鮮で大きな魅力です。
 躯体業者の中でも型枠大工は、コンクリートの形を決定し、構造体そのものの品質を決定づける重要な役割を担っています。躯体工事の先導役として他の業種と協調を図り、設計図以上の作品を作り出すことができる、職人として誇りを持てる職業です。

―どのような時にやりがいを感じますか。

 後々まで残るようなランドマーク的な建物を自分の手で作れるところですね。仕事の達成感は、すべての苦労を吹っ飛ばすほど大きいです。苦労した現場の近くを通ると感慨深く、「あれは自分がやったんだ」と家族や周りに自慢できる仕事です。 

―仕事に興味を持った方へのメッセージなどがあればお願いします。

 型枠大工の良し悪しが建物に与える影響は絶対的なものがあります。建設工事では、出来上がった作品のみに視線が集中しがちですが、私たち躯体業者が現代日本の優れた建物の評価を下支えしているということを、若い皆さんにもぜひ知っていただけるとうれしいですね。ぜひ一度、職人の世界の面白さを覗きに来てください。 

                                                   

 

会社概要

中村建工株式会社
所 在 地:広島市南区宇品神田5丁目16-7
事業内容:型枠大工工事業
創  業:1950年4月

(2021年9月現在)

情報提供:広島商工会議所 産業・地域振興部 産業振興課