社内コミュニケーションの深化を通じ、
従業員のやる気を引き出す
淡路電気工事株式会社
働き方改革を進めることへのトップの宣言
きっかけは若手従業員の定着を進めたい思い
淡路電気工事は、1950年(昭和25年)に創業した電気設備工事を中心に行う企業である。
「電気設備工事などの事業を通して、地域の発展とお客さまの夢をかなえるお手伝いをさせていただいております。企業理念に『最善の技術で社会に貢献します 私たちは従業員相互で人々の幸せを実現させます』と掲げ、100年企業を目指しています」と代表取締役の淡路孝志氏。
同社の働き方改革へのきっかけは、4年ほど前にさかのぼる。
「入社3年以内の若手従業員の退職が続いたことがありました。当時は、職場の雰囲気に活気がなく、社内全体のコミュニケーション不足も感じていました。こうした状況では、特に若手の従業員にとって、先輩たちが忙しくしており、話し掛けづらい雰囲気だったと思います。忙しさを理由にこうした状況を見ても対策ができていなかったものの、離職が相次ぐこの状況をどうにか改善して、皆がイキイキと働ける環境にしなければと思ったのがきっかけです」と副社長の淡路孝江氏は取組当初を振り返る。
そこでまず取り組んだのが、社内風土を変えることだった。そのための意思表示として、「目指す組織と人格」を淡路社長自らが会議などのあらゆる場面で従業員に宣言をした。以下に一部を抜粋する。
●悪口や批判の体質から、率直なフィードバックがし合える関係に、改変します。
●秘密主義やメンバーのあら捜しが姿を消し、オープンで素直な風土に変わるように、改変します。
●上下の権威や権力の関係から、支援の関係へ、改変します。
同社では、この宣言をきっかけに、従業員へのヒアリングとコミュニケーションの活性化に向けた取組に着手したという。
人の意見を聴いて、何でも言える環境づくり
幹部の「聴く力」トレーニング、メンタリング制度の実施
働きやすい風土への改革には、社内コミュニケーションをもっと増やさなければならない。そのためには、まずは幹部から変わらなければならないと、同社では外部から講師を招き、コーチング理論を取り入れた「聴く力」のトレーニングを週に1度のペースで始めた。
「部下の言葉を遮ることなく全て聴き取り、まずは話を聴く。取組当初は、強い指示命令型のコミュニケーションが多く、それを変えることは本当に大変でした。しかし、取組を進めていくことで、若手従業員の意見を聴く力の向上や、ミーティングでの上手な話の回し方などといったところにもつながってきたと思います」と淡路副社長はいう。
さらに、若手従業員へのサポートを強化するため、新入社員に対し、他部門の2、3年目の先輩従業員がメンター役となる、「メンタリング制度」も取り入れた。
「最初は遠慮していまい、メンターの先輩になかなか仕事の相談等を言えなかったのですが、最近では仕事のことはもちろんプライベートのことも気軽に話せるようになっています。メンターという『聴く相手』を会社から決めてもらったことで、分からないことなども相談しやすくなり、聞いてもらえるという安心感もあります」と入社1年目の工事部工事課の中嶋さんはいう。
今では、従業員が現場から戻る夕方近くでは、先輩従業員と若手が机を並べて、アドバイスを受ける光景が日常的とのこと。こうした取組の導入により、従業員の定着が進みつつあるという。
その他、若手従業員へのサポートとして、新人研修に使用する自社独自のビジネスマニュアルを新たに作成。企業理念や、ビジネスマナー、現場に必要な5Sへの取組等を掲載している。こうしたことも、従業員の業務に対する意識の向上につながっている。
従業員も経営計画の策定にチャレンジ
「社内風土を良くしたい」という思いを集約
同社では、時間をかけて中期の経営改革を2017年(平成29年)に策定したのだが、策定には従業員も主体的に関わったという。「従業員に自分たちの会社であるということを再認識してもらい、皆で良い会社を作っていこうと、経営の専門家のアドバイスを受けながら、従業員で経営計画を作ることになりました。当初は、経営計画なんて社長が作るものと誰もが思っていたので、戸惑いがありました」と淡路副社長はいう。
中期経営計画の策定にあたり、部署や年代の異なるメンバーを社内で募り、「どんな会社にしたいのか」「どんな雰囲気の会社にしたら良いか」といったアンケートを実施。その後、約3年をかけて策定メンバーが中心となり、他の従業員に対し丁寧にヒアリングを行った。
「中期計画を従業員自身が策定し、策定において従業員の思いを丁寧に吸い上げることで、『自分たちの会社のための計画』だと認識してもらいたいと思いました」と淡路社長は語る。
「従業員の思いを聴くために、問いかけ方を工夫し、『自分が新入社員の頃、どのようなことに苦労したか』など、より具体的に聴くように努めました。『何でも言える環境にしたい』『残業を少なくしたい』『振替休日をきちんと取りたい』といったように、徐々に従業員からも本音の意見が出るようになました。これらの意見はとても参考になり、年次有給休暇の計画的付与を取り入れることになりました。
社内では対話をする機会をつくろう、できる限り話し合いを持とうという雰囲気になり、最近ではミーティングの機会も増えています。時間はかかりますが対話あるのみです」
従業員個々の意欲を高めたい
積極的な資格取得支援と職場環境の整備
同社では、従業員の国家資格の取得などスキルアップにも力を入れている。試験合格のため、特に実技の習得には、先輩従業員の指導のもと夕方からの時間を活用して取り組むこともあるという。前述の中嶋さんも、
「僕自身、負けず嫌いなので、社内で仲間と切磋琢磨することが技術を身に付けることにとても役立っていると思います」とのこと。
淡路社長は次のとおり語る。
「資格は一生ものです。会社として勤務時間を割いてでも勉強してもらい、取得を目指してもらっています。有資格者のような優秀な人材には、長く働いてくれる人が多く、若手に負けず劣らずの現役を続けるベテラン従業員もいます。また、計画的に業務を進行できるようスキルアップして、残業を減らすことで、プライベートも充実させてほしいと思っています」
17年(平成29年)7月には、従業員の健康と満足度を高めたいと、社員食堂「あわじ食堂」を新設した。内装は同社のリノベーション部門が設計し施工している。素材の木と鉄と土、壁の色や照明などを工夫した、リラックスできる空間が広がる。献立は栄養士の資格を持つ従業員が考え、野菜を多く取り入れるなど栄養バランスに配慮している。
「嫌いなものでも食べられるようになったと、従業員からも好評です。毎日健康的なご飯を食べて、健康な身体と豊かな心を育みたいと思います。また、食堂に皆が集うことによって、一つのコミュニケーションの場にもなっています」と淡路副社長。
最後に淡路社長に今後の展望を伺った。
「働き方改革を進めることで、例えば、あいさつ一つとっても、従業員に元気が出てきたと思います。効率よく働くため、従業員の歩くスピードも速くなったと感じます。率先して社内清掃をするようになったり、倉庫をはじめ社内がとても整理されるようになったとも感じます。
一方で、大きな問題もあります。それは業界の高齢化です。当社の事業が、これまでもこれからも、世の中に貢献できるよう、100年企業を目指していくためには『人が財産』であると考えます。この先どのような変化にも、主体的に対応できる人材、そして人間味あふれる人材育成に取り組みたいと思いますし、従業員が意欲的に働ける職場づくりへの挑戦を続けていきます」
会社概要
淡路電気工事株式会社
所在地:広島市南区宇品海岸3-5-21
URL:http://www.e-awaji.jp/
事業内容:電気工事・給排水工事・空調工事事業等
従業員数:54名(男性46名、女性8名)
(2018年3月現在)
情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com)