Vol.1 マエダハウジング
~リノベ業界で働きがいづくり 企業理念を浸透させ、社員の意識を変える~

★☆★広島県における「働きがいのある会社」優秀企業★☆★

 広島県は、「働きがい」の民間専門機関であり、世界60カ国以上で従業員意識調査を行うグレート・プレイス・トゥー・ワーク(GPTW)の「働きがいのある会社」調査に参加する県内企業に対して2021年度から、調査費の助成事業を行っています。本連載では、GPTW22年版広島県における「働きがいのある会社」優秀企業に選ばれた5社の取組を紹介します。

01. 働きがい向上に取り組んだ背景

「働きやすさ」から「働きがい」向上へ

 住宅リフォームで県下トップクラスの実績を誇り、広島市中区の本社ほか、佐伯区、安佐南区、東広島市などに6店舗を構える。代表取締役社長の前田政登己氏は「われわれ建設業は労働集約型の仕事なので、営業目標を達成するのも、お客さまの満足度を高めるのも、全てが『人』です。社員が一層働きやすく実力を発揮できる環境づくりを目指し、時間外労働時間の40%削減、有給休暇取得率の30%向上を実現しました。2018年に広島県働き方改革実践企業に認定されました。その一方で、『働きやすさ』の追求だけで良いのかと考えるようになりました。人生の時間の大半を占める仕事をより充実したものにしてもらいたいと考え、働き方改革を一歩進めた形で『働きがい』の創出に取り組むことにしました」と話す。さまざまな取組を進めた結果、GPTW22年版広島県における「働きがいのある会社」優秀企業に選出された。

02. 働きがい向上の主な取組と工夫点

絶えず経営理念の浸透に力を注ぐ

 何のためにやるのか、どこへ向かうのか、という会社や社員の目指すべき姿と目標を明確にすることから始めた。そして経営目的を「関わる人が幸せになるお手伝いをする」と定めた。前田氏は「経営のコツは、理念の浸透」と語るほど、定めた理念が単なる掛け声で終わらないように、その浸透に力を注いできた。前田氏自らが創業の思いや理念、ビジョン、ミッションを、全社員が参加する月例報告会や社内報で発信。理念を毎朝唱和するほか、各店舗の成功事例や顧客からの指摘・クレームへの対応策を理念に照らし合わせて考える場を設けるなど、全社で意識統一を進める。


委員会活動で主体性を養う

 社員の主体性を育み、その意見を吸い上げるための取組として、10数年前から委員会活動を始めた。「理念浸透」、「人財育成」、「業務改善」など7つの委員会が活動を進める。年齢、性別、所属店舗、役職の異なる5~10人がそれぞれの委員会に属し、業務上の工夫・改善に向けて主体的に行動を起こしている。
 各委員会が毎月会議を開き、それぞれの目標、達成に向けた具体的な行動計画を立て、PDCAサイクルを回す。3カ月に1回は委員会の責任者が集まって進ちょくを報告し合うほか、半年に1回のペースで成果発表会を開催。成果の出た事例を表彰し、社員のモチベーション向上につなげている。前田氏は「まず 〝やる場〟をつくることが重要。社員主体の円滑な運営を支援するために、部長クラスが促進役を務めること以外は各委員会の責任者に任せ、今までにないアイデアが生まれています。例えば、人財育成委員会では新卒入社から1~2カ月後に身に付けておくべき知識・スキルの習得を目指す「カレッジ」の新設を実現し、理念浸透委員会では仮想空間のメタバース上にオフィスを構えてアバターでコミュニケーションを図る場を設置しようといったアイデアが出るなど、手応えを得ています」と語る。


DXで生産性高め、会社への安心感を醸成

 現場監督の1日の移動にかかる時間削減を目的に、21年に遠隔現場管理ロボットを導入した。ロボットに搭載されたカメラで遠方の事務所にいる監督者にリアルタイムで現場の様子を伝えるほか、マイクやスピーカーで双方向の会話もできる。導入当初は、操作に不慣れな現場の職人の手を煩わせたが、同社の社員が丁寧に操作方法を教え、現在までに業務効率を20%高めることに成功した。経理や販促業務に、定型業務を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)も導入し、作業時間を従来の3時間から10分に大幅短縮。これらのさらなる活用で、全社員の合計総労働時間を月500時間削減することを目指している。前田氏は「デジタル技術を活用した新しい働き方の導入により、『この会社で働き続ければ安心だ』という社員の〝心理的安全性〟が高まったと感じます」と成果を実感する。


社員を巻き込むCSV経営

 もともと少年野球大会の主催や、東区スポーツセンターの命名権取得、地域清掃などの「CSR(社会貢献)活動」に取り組んできたが、18年から2年間、前田氏が県立広島大学大学院で社会課題の解決について学んだことをきっかけに、社会貢献だけでなく社会課題の解決にまで踏み込む「CSV経営」の推進にかじを切った。「10年ほど前に私1人で始めたCSR活動ですが、今では委員会が主導で取り組んでいます。空き家の利活用や性能向上リノベーションによる家庭内事故死(ヒートショック等)の予防など、事業自体が社会課題の解決につながっていると再認識しています。これらは理念を実現させる取組の一環であり、単なる企業のブランディング目的では長続きしません。地域のために何ができるのか、社員と共に意識を高めています」と前田氏は話す。

03. 取組の中で感じた難しさや課題

やり方を変えることへの抵抗感

 今までの働き方を変えてもらうことは容易には進まなかった。「特に建築現場へのデジタル導入は苦労しました。この経験を通じて一番必要だと感じたのは、今までのやり方を変えるという経営者の決断と勇気です。さらに、働きがいは数値で示しにくく、個人によって物差しが違うからこそ、理念の浸透によってベクトル(考えの方向性)を合わせることが重要です」と前田氏は振り返る。また生産性を測るために、仕事の棚卸しや仕事にかかる実際の時間を調べることにも多くの時間を費やしたという。

04. 働きがい向上の効果や成果、社内の変化

「好き」が集まり「ありがとう」あふれる職場に

 さまざまな活動を進めるほか、「エンゲージメントの向上」を経営方針に加えることで、社内全体が働きがいを持って働くことの重要性を意識するようになった。前田氏は「福利厚生などの衛生要因だけでなく、『人に喜んでもらうために働く』といった動機付け要因に働きかける必要があります。『好き』は最大のモチベーション(動機付け)です。積極的に『ありがとう』があふれる職場にしようと全社員で意識して取り組み、『会社好き・仲間好き・仕事好き』の状態になることに力を入れています」と語る。 

05. 目指すべき姿・展望

100年後も持続する会社へ

 ビジョンに掲げる「しあわせな暮らしと、笑顔あふれる広島をつくる」「広島一『ありがとう』と『良かった』が集まる感動コミュニティー企業になる」「地域で輝く100年企業になる」の実現に向け、「自社のパーパスを自問自答して見直し続けていきます。私や今いる社員がいないであろう100年後にも会社が持続していることを目指してまい進します」と前田氏は意気込む。

社員の声

経営本部 総務経理室 主任 高野 由美子氏
 6年ほど前から進める働き方改革が浸透し、働きがいの取組も進めることで、この会社で安心して働き続けられるという心理的な安心感が一層高まったと感じます。総務として人財育成委員会に所属しており、新入社員の育成カリキュラムのブラッシュアップや、人事部の立ち上げ計画に取り組んでいます。会社を自身の居場所として捉え、皆が定年まで働きたいと思える働きがいのある会社にできるように頑張ります。

取材日:2022年6月

会社概要

株式会社マエダハウジング
所在地:広島市中区八丁堀10-14 八丁堀マエダビル3・4F
URL:https://www.maedahousing.co.jp/
業務内容:住宅リフォーム・新築住宅・不動産など
従業員数:98人(男性62人、女性36人パート含む)

情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com