多様な働き方をハード、ソフト両面から構築
取組を徹底し、働き方改革のモデル支社に

株式会社サンゲツ中国四国支社

取り組んだ背景 ~移転をきっかけにより働きやすい職場へ

 インテリアに関する業界トップの専門商社で、2019年夏に中国四国支社を岡山から広島市内に移転した。支社長の飯田芳浩氏は、
「『働きやすい』『働きたい』と思える環境が、従業員の『やりがい』につながります。フレックスタイム制度などさまざまな働き方ができる体制をもともと整備していましたが、この移転をきっかけに、働くことでプライベートも充実し、それが巡って働きがいとなるような職場環境を、ゼロから構築しようと考えました」と話す。「大統領のように働き、王様のように遊ぶ」というコンセプトを掲げ、取組を推進。1年目は制度を再構築し、より充実させて、2年目に働き方改革実践企業の認定を受けた。

主な取組と工夫点

◆事前申請や「かえるカード」で時間外勤務を最小限に
 時間外勤務の事前申告制が全社で導入されていたが、厳密ではなかったため、同支社では「残業は必要最低限にする」という目標を定め、確実に取り組むようにした。例えば、時間外勤務が発生しそうな場合には午後3時までに所属長に相談し、時間外勤務が必要かどうかの判断を仰ぐ。所属長は他の従業員に業務を振り分けるなど、残業が最小限になるよう取り計らっている。
 また、各従業員が退社時間を書き込む「かえるカード」を作成。掲示することで、上司や同僚が業務を頼めるかどうかを判断しやすくした。
 さらに、全社で午後7時に行われているパソコンの自動シャットダウンの時間を午後6時半に繰り上げる支社独自の取組を行っている。5分前からカウントダウンが始まり、自動的にシャットダウンするシステムで、リモートワーク用の持ち運び用パソコンにも適用される。シャットダウン後の再立ち上げが必要な場合は、残業の申請と合わせての所属長への相談・許可を必要とすることで、時間外勤務の削減に取り組んでいる。

◆ノートパソコンの支給や勤怠管理システムでどこでも働ける環境へ
 20年にはコロナウィルスの感染拡大に伴うリモートワーク実施のため、従業員全員にノートパソコンを支給。オンラインツールを活用した打ち合わせや情報交換が増え、顧客対応などがスピーディーに行えるようになり、効率化につながった。
 また、パソコンのログで就労時間が分かるシステムも導入。リモートワークや営業職などが直行直帰する場合にも勤怠管理がしやすくなった。

◆申請の徹底とスケジュール共有で有休取得を推進
 有給休暇の取得を推進するため、取得計画表の作成や出勤予定の共有を行っている。有休取得計画表の作成は全社で取り組んでいるが、同支社では計画表の作成に加え、取得申請までを徹底するように指導している。
 また、働き方の多様化でフレックスタイム、リモートワーク、直行直帰など従業員の動向が複雑になったため、全員がスケジュールを事前にシステムに入力している。毎朝、当日の全員の予定がメールで送られてくることで、休暇や行動の可視化を図っている。これは長時間労働やサービス残業を誘発する事態を避けるだけでなく、災害時の安否確認など、万が一に備える狙いもある。支社長を含め従業員同士が互いに予定を把握できるため、商談日程の調整などが効率良く行える効果もあった。

◆フリーアドレスや集中ブースで働きやすさ・効率を向上
 一部を除いて個人の机を置かず、空いた場所で自由に仕事ができるフリーアドレスを取り入れている。個人の座席が無くなったことで、それぞれが自身の持ち物に気をつけて整理整頓するようになり、社内環境が改善した。
 また電話対応などを避けて仕事を行える集中ブースや、立ったまま会議が行える高さのあるデスクを導入したコミュニケーションラボを整備。集中ブースには体調が悪い時などに休憩室としての使用も兼ね、コミュケーションラボは商談や展示会などに利用できるなど、スペースを多目的に使用することで業務の効率化へ繋がっている。

取組の中で苦労したこと ~急激な変化に当初は戸惑いも

 移転に伴い、パソコンのシャットダウンなどの取組を一気に進めたため、当初は「できるわけがない」など否定的な声が上がった。飯田氏は朝礼や会議などで繰り返し必要性を伝え、残業ゼロや有休に関しては、声掛けと共に自ら率先して行動することで浸透を目指した。

取組の成果 ~1人1人の自己管理で残業減少し、モデル支社として注目

 事前申告制度などを徹底することで残業削減に対する意識が高まり、勤務時間内で仕事を終えられるよう従業員1人1人が自己管理を徹底するようになった。仕事を手伝い合うなどチーム内での連携も増え、団結力を持って仕事に取り組める効果もあった。これらの取組で20年7月~21年1月の残業時間は前年比56%減と大幅に減少。19年10月からの1年で、全員が有休付与日数の65%以上を達成した。飯田氏は、
「メリハリをつけて仕事を行うことがワークライフバランスにつながり、結果として業績に還元されていると感じています。現在は全社の中で最も働き方改革が進んだ『モデル支社』として注目される存在になっています」と話す。

課題や今後の目標 ~業務の偏りを是正し、平等に働き、休める会社へ

 会社全体の取組をより強化する形で働き方改革に取り組んできたが、外回りの必要がある営業担当者と内勤者など、部署ごとの仕事の偏りは完全には解消されていない。飯田氏は、
「営業担当者が持ち帰った仕事を他の部署が処理することで、より労働時間の偏りを緩和できるのではないかと考えている。今後、パソコンの自動シャットダウン時間のいっそうの繰り上げなど、残業をゼロに近づける努力を続け、全員が平等に働き、平等に休むことができる環境づくりを進めるつもりだ。余暇を利用して、スポーツジムやハンドボール、野球のチームに入ったという声も聞いており、とてもうれしい。『もっと、楽しめ』と従業員たちに言ってあげられる支社へ、さらに改革を進めていきたいと思います」と前を見据える。

従業員からの評価

支社長室 支社総務担当
山下 麻衣 氏

 コロナの影響もあり、広島に支社を移転してから働き方改革が急速に進んだと感じています。支社長が率先して残業の削減や有休の取得、スケジュールの入力などに取り組んでいるので「私たちもやらなくては」という意識がどんどん芽生え、それが定着していったと感じています。以前は営業職の従業員が事務所に戻って作業を行っていることもあり、帰りづらい雰囲気がありましたが、現在は逆に「残業しづらい」と感じるようになりました。自分の時間が増えたので、スキルアップを目指してプログラミングのオンラインスクールに通うようになり、毎日が充実しています。

取材日 2021年2月

会社概要

株式会社サンゲツ中国四国支社
所在地:広島市中区鉄砲町7−18 東芝フコク生命ビル1階
URL:https://www.sangetsu.co.jp
事業内容:壁紙、床材、カーテン、椅子生地などトータルインテリア商品の開発・ 販売
従業員数:30人(男性16人、女性14人)※広島市と福山市勤務者のみ
(2020年4月時点)

情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com