保育所や食堂の充実に加えて、
メンター制度で新入社員の定着を図る

株式会社ワイテック

取り組んだ背景は?
 ~従業員の幸せを実現することが最終ゴール

 

 金属加工を機軸に、自動車部品の開発・製造を行っている同社。
「弊社の経営理念の中に、“社員の幸せを実現する”という一文があり、私たちの最終ゴールはそこにあります。働き方改革だからと特別に考えるのではなく、以前から社員の幸せの実現に向かってずっと取り組んできました」
と総務部人事グループマネージャーの山田孝之氏。 

 

取組導入のプロセス
 ~プロジェクトを発足し、従業員を活気付ける施策を実施

 働き方改革へボトムアップで取り組むために、2018年4月に部門横断的に従業員を集めて、「ひまわりプロジェクト」を発足した。このプロジェクトは、働き方改革の取組はもちろん、“会社の中で従業員を活気付ける面白いことはできないか”という考えのもと、人事労務制度の見直しも含めた取組を進めている。「16時以降の電話と会議の禁止」「月1回のカジュアルデー」「フィットネス教室の開催」など、新しい施策を提案し、実現に結び付けている。 

主な取組と工夫点
 ~保育園・食堂の充実、メンター制度の導入など

◆食堂をカフェテリア風にリニューアルし、従業員が集まる場に
 食の面から従業員へのサポートを充実させるため、16年に本社の食堂をカフェテリア風にリニューアルした。昼の休憩時間にリラックスでき、午後の業務への活力を養うとともに、夕食も提供して、夜勤や仕事上がりの独身従業員の食事もケアする。メニューが増え、味も良くなったと従業員に大好評だという。
「今までは職場で食べていた従業員も食堂に集まるようになり、食堂はいつも満席です。従業員間のコミュニケーションも増えますし、仲間の顔を見掛けるだけでもいいと思います」
と山田氏。製造部門と技術・間接部門は食事時間をずらすことで、混雑を緩和する工夫も行っている。

◆事業所内保育所を設置し、女性活躍を推進
 かつて子育て中の女性従業員が、子どもを保育所に預けられないことを理由に離職したケースがあった。その際、従業員アンケートを行ったところ、事業所内保育所に対する要望が多くあったため、16年に会社運営の保育所を設置した。
「製造業では男性従業員が多いのが現状ですが、これからの時代は女性の活躍も重要で、この取組もその一環です。採用活動でも学生の関心が高く、一定の効果を感じています」
と山田氏。運営方法や内容については利用者の声を聞きながら、随時改善を行っている。保育所の利用者は平均5~10人、延べ34人が利用している。

◆新入社員の定着を目的としたブラザーシスター制度
 製造部門において、入社して半年間、新入社員一人一人に若手の先輩がメンターとしてサポートするブラザーシスター制度を導入している。何でも話せるお兄さんやお姉さんのような存在となり、仕事上の悩みや社内手続きなどの相談を受ける。直属の上司や先輩以外に話ができるメンターは、新入社員にとっては頼もしい存在。メンターとのコミュニケーションが深まるだけでなく、メンターを通じて、他の部門の従業員とつながりができるなど、新入社員の定着に一役買っている。

◆16時以降の電話や会議禁止、ノー残業デーの実施
 17時の定時退社を目指して集中して業務が行えるよう、16時以降は電話や会議を禁止している。電話については外部の協力が必要なため、外部へのメールの署名欄にその旨を記載して周知し、日頃から理解を求めている。また、週に1回もしくは2回のノー残業デーも実施。
「ノー残業デーの日は、定時後30分以内に帰宅する従業員の数が半数以上になってきたので、一定の効果が出ていると思います。今後はさらなる成果を目指していきたいです」
と山田氏。

◆RPAの導入により効率化を図る
 18年4月からRPA(Robotic Process Automation)の活用を推進している。
「以前から製造現場ではロボットを積極的に導入して自動化を図っていましたが、さらなる効率化を目指し、取り組んでいる最中です」
と山田氏。システムの担当者が現場に入って工場の技術者と協力し、さらなる生産システムのIT化による生産性の向上を推進している。

◆年6日の計画有休を実施し、意識付けを促進
 18年4月より計画有休を導入している。4月に6日分の有給休暇の年間スケジュールを立てて、その計画に沿うように部門で調整を行う。さらに毎月、総務部門が取得状況を集計して各部門長に伝達し、計画通りに取得できていない場合には、注意喚起を促す。
「普段の会話の中でも有給休暇の話が出てきますので、従業員の間でも、取得するという意識は高まっていると思います」
と山田氏。

取組の中では課題も

 「一番の課題が、製造部門を巻き込んだ全社的な取組が十分にできていないことです。製造部門は突発的な対応もしなければならないですし、人手不足でフォローできないこともあります。この部分を何とかしたいと日々取り組んでいます。人員不足や突発的な対応など製造現場特有の要因がある中で、全社的に取り組み、会社が一体となれる活動を数多く行っていきたいです」
と、山田氏は語る。 

取組の成果

 「残業の削減や有給休暇の取得など、働き方改革への意識を従業員が持ちはじめているのが感じられますので、その期待に応えられるように、さらなる取組の推進に向けて第二・第三の矢を放っていきたいです」
と山田氏。 



◆育児(直近3年間)
・事業所内保育施設を運営し、34人が利用

◆若年者(直近3年間)
・正社員として就職した新卒者等のうち、同期間に離職した者の割合が12%減

従業員からの評価

 

 「食堂がコミュニケーションの場となり、社内が明るい雰囲気になってきたと思います」「会社内の保育所に子どもを預けて、フルタイムで働いています。保育所は朝7時から夜7時半まで開いているので、多少の残業があっても気にせずに働けるのがうれしいです」「職場には、子育て経験のある女性が多くいるので、子育てに対する理解もあり、子どもの突発的な病気で休んだり、病院に連れて行って遅れたりしても、快くフォローしてもらえるので助かっています」といった声が上がっている。 

今後の目標など

 「今後は製造部門でも、働き方改革の取組で成果を上げるための仕組みを整えていきたいです。楽になることだけが働き方改革ではないと思いますので、自分のやったことが認められるとか、会社の役に立っていると実感できるとか、やりがいを高める施策に広げていくことも必要だと考えています。そのためにはコミュニケーションを取ることが大切で、明るく風通しのいい職場になれば改善も進み、働きやすさにつながっていくのではないでしょうか。今後も、継続的に取組を進めていきたいと思います」
と、山田氏は抱負を語った。

取材日 2019年2月 

会社概要

株式会社ワイテック
所在地:広島県安芸郡海田町曽田3-74
URL:http://www.ytec-gr.co.jp/
事業内容:自動車部品製造、金型及び組立冶具設計製作
従業員数:1698名(男性1435名、女性263名)
(2019年2月現在)

情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com