優秀な人材確保へ、制度改革や業務効率化
ワークライフバランス充実し新入社員の定着100%達成

株式会社新星工業社

取り組んだ背景
 〜人材確保へ、社長が現場で感じた課題を改善

 1953年創業で、システム制御装置の開発やコンピューターなどの販売・保守を手掛ける。ダムの放流制御などの管理システムやタービン・コンプレッサなどのコントロールシステムに加え、ロケット発射時の燃料供給を管理する制御でも技術提供。95年に入社した代表取締役社長の佐々木誠氏は2001年に専務となるまでに、ほとんど全ての部門を経験し、11年の社長就任を機に、それまで自分が感じてきた非効率な点や労働環境の改善に着手した。佐々木氏は
「人材不足の中、法人向けに取引を行う〝BtoB企業〟で学生など一般からの認知度は低く、満足のいく採用活動ができていませんでした。加えて、うつ病などメンタル不調者も現れてきました。業務の効率化を進め、できるだけ働きやすい環境を整え、併せて福利厚生や自社PRを行うことで優秀な人材確保を目指しました」

主な取組と工夫点

◆部署ごとに異なる休日を統一、タブレット導入で業務改善
 保守部門はどうしても顧客対応のために休日出勤が多くなっていた。例えば、銀行のATMが稼働している限り、故障時などに対応しなければならない。製造部は官公庁の仕事が年度末に集中する傾向があり、繁忙期は休日出勤することも多かった。こうした繁閑の波をできるだけ平準化し、特定の従業員に負担が集中しないように努めている。また、繁忙期や顧客が異なるため、部署ごとに異なっていた休日を統一し、完全週休2日制とした。佐々木氏は
「製造部の出勤日に総務が休みだと、旅費精算などができず、総務も休日出勤をすることがあったため、休日を統一しました。1年前にはタブレット端末を導入し、従業員の外出中の隙間時間に作業報告書などが作れるようにしました。このほか残業時間を管理し、月45時間を超えると上司に報告するなど、長時間労働を未然に防ぐ仕組みも整備。こうした取組で残業時間を8%削減することができました」

◆製造部を新築移転し生産性向上
 18年3月に南区出島に製造部を新築移転した。既存の組立工場のそばに立地し、これまで3棟に分かれていた板金工場を集約することで生産性を向上させたほか、従来に比べ大型の製品にも対応できるようになった。
「例えば溶接するときに制御盤の外枠の向きを変えるにしても、以前は人を呼び集め、人力でやっていました。新工場は天井が高くなったことで、クレーンを使えるようになり、作業効率は約2割アップしました」

◆心身両面で従業員の健康管理
 管理職へのマネジメント教育を行い、コミュニケーションを活発化することで、心身の不調など従業員の小さな変化にも気付けるように工夫する。年に1〜2回は管理職と従業員の1対1の面談を設ける。保険業者と連携し、希望者には「メンタルサポートサービス」も実施。心理カウンセラーなどの外部の心の専門家が従業員の心のケアを行っている。こうした取組が奏功し、直近の1年間でメンタル不調者は現れていない。
 このほか、夏場の熱中症対策や冬場のインフルエンザ対策など身体面での健康管理にも配慮している。

◆有休取得の推進や男性育休も奨励
 働きやすい職場づくりに向け、有給休暇の取得を積極的に推進。タブレット端末の導入など業務改善を進め、残業時間を削減したことで有休が取得しやすくなり、平均有休取得日数は11.3日にまで増えた。男性育休も奨励しており、これまでに7人が取得した。
 さらにオフィス環境改革にも着手。社章や名刺、封筒なども一新し、3月から女性事務制服もリニューアルし、男性の作業着はデニム生地を使った上着を制作するなど、社名のPRや福利厚生の整備などを積極的に進めた。こうした取組で採用活動にも好影響があり、
「以前は新卒者向け企業説明会を開いても、10人来れば良い方でした。学生の認知が広がったおかげで今では2倍に増えました。取組前は毎年4人くらいしか採用できませんでしたが、昨年は目標の8人を確保できました」

取組の中で苦労したこと
 〜部門間で足並みをそろえる難しさ

 これまで部門によって業務内容や働き方が大きく異なっていたため、ノー残業デーなどの長時間労働の是正に向けた取組や休日の統一など、全社共通の施策として、取り組む足並みをそろえるのに苦労した。経営サイドが改革の方針を明確化して制度などを整えたほか、従業員への改革の必要性の周知などで着実に改善を進めた。

取組の成果
 〜新入社員の定着率100%達成

 働きやすい職場づくりの推進と福利厚生の整備に加え、17年には広島県の「仕事と家庭の両立支援企業」にも登録。仕事もプライベートも充実させている従業員が多く、16年~18年度の新入社員定着率は100%となっている。

課題や今後の目標
 〜自社商品開発をPRに生かす、障害者雇用も検討

 ロケットや新幹線、ATM、ダムなど、さまざまな分野で活躍する同社の技術力。東京などの社外研修や資格奨励金などで従業員のスキルアップや成長を支援している。こうした人材育成による高度な技術力を生かした自社商品の開発を目指す。

 「じっくりと着実に成長しながら働ける環境とオリジナリティーあふれる自社商品があれば、もっと企業イメージを強化でき、学生にもPRできると考えています。また、個人的なことですが、自閉症の息子がいますので、障害者の就労支援にも取り組みたい。特殊なところですごい能力を発揮する人もいますので、障害のある方の活躍にもつながるし適材適所で受け入れられたら人手不足解消の一助にもなります」
と佐々木氏は話す。

従業員からの評価

総務部総務課
鶴田 繕己 課長
 人事含め総務全般を担当しています。一連の取組で仕事のオンとオフがより明確になったと思います。よく学生から「残業時間はどうなんですか」と聞かれることがありますが、効率的に働ける環境を整えており、従業員の成長を応援しています。自律した働き方ができる職場だと思います。任せられた仕事をどう効率的に進めるかで仕事もプライベートも充実させられるのが、当社の魅力だと感じています。 

取材日 2019年5月

会社概要

株式会社新星工業社
所在地:広島市南区宇品海岸3-8-60
URL:https://www.shinseik.co.jp/
事業内容:制御盤設計、コンピューター保守・メンテナンス
従業員数:292人(男性258人、女性34人)
(2019年10月時点)

情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com