売上高100億円突破
世界一の施設野菜メーカーを目指す

株式会社村上農園

村上農園
代表取締役社長 村上 清貴

プロフィール

 広島大学を卒業し、リクルートでマーケティング企画課長などを経験。1993年に入社後、農場長や常務などを経て2007 年から現職。1960年7 月29日生まれ、山口県周南市出身。

 広島の学生が県内企業の経営者に「働く」をテーマにインタビューした。第12回は、スプラウト生産全国トップの村上農園の村上清貴社長。業界のリーデイングカンパニーとして成長を続ける背景や仕事観を聞いた。
-事業内容について。
 有用成分「スルフォラファン」が豊富な高成分野菜「ブロッコリースーパースプラウト」、「ブロッコリースプラウト」をはじめ、栄養価が高く割安なエンドウの若菜「豆苗」、カイワレ大根などを主力製品として生産しています。2019年12月期にきのこ、もやしを除く野菜の生産会社で初めて売上高100億円を突破。当社の「農業」は、勘や経験だけに頼る旧来のものではなく、科学的な根拠や技術を用いた「脳業」です。将来的には、AIなどを活用したノウハウの世界販売といった新事業も確立し、35年には売上高1000億円、世界一の施設野菜メーカーを目指しています。
-経営危機はありましたか。
 私が入社して3年後の1996年、病原性大腸菌O-157による集団食中毒事件が発生。カイワレ大根が原因食材とされました。後に事実無根と判明しますが、当時、ほぼカイワレ大根専業だった当社は、全国的な風評被害に巻き込まれ、売り上げが4分の1まで激減。倒産の危機に陥りました。カイワレに代わる新たな柱を模索する中、加熱食材にもなる豆苗の生産を拡大。さらに、当時珍しかったハーブやルッコラなどの野菜に着目。農家に生産委託し、当社のマーケティング力で販売する事業も始めました。どうすれば売れるのか、ネーミングから規格、レシピに至るまで研究し尽くして展開した結果、1年半で業績の黒字化を果たすことができました。ニッチなもの、世の中に出回っていないものは売り上げ規模が小さくても収益が上がる可能性があります。ただ、どのようにすれば成功するのかは誰も分かりません。自らが一生懸命考え、実行あるのみだと考えます。
-社長の仕事観は。
 前職のリクルートに入社したばかりのころ、上司に指示を仰ぐと決まって「あなたはどうしたいのか」と問われ、自らの頭で考えることの重要性を学びました。併せて大事なのは「常識を疑う」こと。委託生産事業は、先代社長の反対を押し切ってスタートしたもの。当時、社内には「自社生産品の販売でしか収益は上がらない」という常識がありました。これを疑い、考え抜いたからこそ、その後の成功があったのだと思います。この考え方が、O-157による倒産のピンチをチャンスに変え、今の村上農園をつくっています。
-就職活動のポイントは。
 大きく分けて、どの業界を選ぶのか(業界の将来性はどうか)、業界内のどの企業を選ぶのか、その人がどう生きるのか-の3つの視点が大切です。結論から言うと「統廃合と大規模化の遅れた業界」で「自分の能力で周囲よりも優位に立つ事ができる組織」を選択し、そこに飛び込んだ後は「最大限自分の力を発揮する」ことが、楽しく仕事をする方法だと考えています。例えば、IT業界は「進んでいる」業界です。パソコンのOSであればウィンドウズやマックのように2社に集約されています。進んでいる業界は将来性がありそうに思えますが、企業間や従業員間の中でも競争が激しい。組織で自分の能力が認められなければ面白くないですよね。一般的に競争の激しい大企業に入ると相対的に自分の価値が下がる可能性があるということも頭に入れておくべきです。一方で農業は、小規模な生産者が多く「遅れている」業界。競争が比較的緩やかで、規模拡大の伸びしろがあります。今後、人口減少に伴って食品の消費量は減少し、農産物の市場も縮小。そうなると、小規模生産者の大半は、体力が持たず経営が厳しくなる。規模の大きな生産企業が優位になるはずです。就職活動ではそういった業界や企業に着目してみることもポイントです。
-今後の目標は。
 業績、事業コンセプト、人材の3つの観点から説明します。1つ目の業績は、25年に売上高300億円を計画。さらに35年には売上高1000億円、「世界一の施設野菜メーカー」として、農業分野で圧倒的影響力を持つ企業に成長することを目指しています。
 事業コンセプトは、まずは機能性野菜を拡大すること。単なる野菜の生産者ではなく、機能性野菜を通して、体の健康や美容といった付加価値を提供したい。さらに、豆苗のように手軽に栄養が摂取でき、いつでも冷蔵庫にあるような野菜についても新商品を開発し普及させたい。また、18年に発売したマイクロハーブシリーズのような「外食向け新野菜」も拡大し、新しい食文化の流れをつくりたいと考えています。一方で、世界へ向けた展開としてはAIなどを活用し、当社のノウハウをパッケージ化。それを海外の企業にライセンス販売という形で広げていくことを視野に入れています。最後は人材について。当社の組織運営の基本的な考え方は、年齢や学歴に関係なく、成果に応じてふさわしいポジションや給料などを分配する「成果主義」です。だからこそ当社が求めるのは、誰でもできる仕事を言われたままにやる人材ではなく、自ら「考動」し、付加価値を生む仕事ができる人材です。厳しい考え方かもしれませんが、「この会社に入って良かった」と何年か後に必ず思ってもらえるような会社にしたいと考えています。
 最後は人材について。当社の組織運営の基本的な考え方は、年齢や学歴に関係なく、成果に応じてふさわしいポジションや給料などを分配する「成果主義」です。だからこそ当社が求めるのは、誰でもできる仕事を言われたままにやる人材ではなく、自ら「考動」し、付加価値を生む仕事ができる人材です。厳しい考え方かもしれませんが、「この会社に入って良かった」と何年か後に必ず思ってもらえるような会社にしたいと考えています。
-新型コロナウイルスの影響は。
 新型コロナウイルス感染拡大の影響で自宅滞在時間が増えて家で食事する人が増えました。当社の製品は主にスーパーマーケットなどの量販店に出荷しているため、こういった影響を受けて堅調に推移。また、手軽にできる家庭菜園や癒やしとして、豆苗の再生栽培を楽しむ人が続出しました。3〜5月の出荷量は前年同月比20〜40%増加しています(3月20%、4月40%、5月30%増)。外出自粛による内食需要が高まる中、商品をお客さまに安定的にお届けすることが重要です。加えて、品質向上にも努めたいと考えています。

学生の声

・村上社長から世界的市場の動きの変遷や個人の理想の働き方まで素晴らしい話が聞けました。特に「自分の戦うフィールドを選べ」というメッセージが印象に残っています。就職活動の観点が180度変わりました。(古本)
・社長から話を聞くことができ、現状で自分がどう生きていくべきかを改めて考え直すことができました。自らが付加価値を持った人間として成長できる環境がある企業を選び、これからの日本社会を生きていける存在になるべきだと感じました。(中野)
・学んだことは役に立たない、自らが考え実行したことに価値があるという言葉が印象に残っています。インタビューを通じて今後の人生の生き残り方を学びました。(森近)

会社概要

  1966年創業。スプラウト(発芽野菜)生産で国内トップ。高成分野菜「ブロッコリースーパースプラウト」やエンドウの若菜「豆苗」を生産する。2019年には、きのこ、もやしを除く野菜の生産会社で国内初の売上高100 億円を達成。山梨県の新生産センターを20年中に稼働予定。(2020年7月時点)