地域の食文化つなぐ 地場食品卸の大手

中村角株式会社

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低温帯食品で存在感発揮


 カープ坊やが目を引くヒット商品「ぶちうまい焼きそば」や缶詰「瀬戸内産小いわしのオイルサーディン」、地元メーカーとコラボした「ゆかり入りもずく」。地域卸ならではのアンテナで開発した一連のPB商品だ。食品流通界は食の安全や消費ニーズの多様化などへの対応に加え、販売競争は熾烈さが増す。70年超の業歴を信用力に、地場大手の総合食品卸として地域になくてはならない卸業とともに、食文化を次代に引き継ぐ使命を発揮している。

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個性発揮するPB商品

 2022年4月、東広島市の人気バーガー店監修で、広島市内のしょう油メーカーのだししょうゆを使った万能ソース「全ての肉好きに捧げるジャックソース」を扱い始めた。試作を重ねバーガー店のこだわりを商品に注入。“これまでにない”を切り口に、量販店など卸先の売り場活性化につなげる狙いだ。

 今後は製造委託する中小規模メーカー数を倍増し、PB商品の提案・供給力を高める。業務用も独自開発品を増やしており、広島地域で食される牛やおぎも(牛肺の甘辛煮)を別の調理法で楽しめる牛肺の加工品をレシピと併せ開発。地元の食文化を生かす“コラボ開発”で新規需要を掘り起こす。中村社長は、「支持される商品にこだわることで、やりがいや活気が生まれている。地域のメーカー、生産者、ユーザーをつなぐ役割を果たしていきたい」とPB開発に期待を込める。

水産加工品扱いは国内有数

 中村角は、海産乾物卸で創業。水産加工品の扱いは国内有数の情報網と営業力を持つ。多品種少量で温度管理が難しい上、賞味期限が短く地域性も強い商品群だ。北海道~沖縄の産地の旬や収穫量を把握、タイムリーで最適な商品を提案~供給する。

 独自の卸機能を確立した背景には、1970年代半ばに全体の50%以上あった常温食品を削減する決断があった。低温食品に軸足を移したことで競争力が生まれ、大手卸とは一線を画した市場を獲得する。水産加工などの生産者の多くは中小規模が多い。長年で築いたネットワークと目利き力で売れ筋を発掘し、営業エリア中四国九州に届ける。生産者を育てていく喜びも大きい。

 低温卸の品質強化へ、チルドや冷蔵冷凍品の温度帯環境を整え、賞味期限の高精度管理にWMS(倉庫管理システム)を導入。出荷作業の効率化も図り引き続き、業務の効率化、品質アップを進める。

成長の鍵は業務用

 コロナ禍で外食向けは厳しいが給食や医療・高齢者施設、中食(総菜)向けなど開拓余地は十分にある。量販店中心の家庭用が現在60%を占めるが小ロット、多頻度対応が求められる業務用マーケットの開拓で成長戦略を描き、半々まで引き上げる。

 これに向けて受注業務のデジタル化や、同業者と組んで2020年から新たな共同物流の構築に着手。日本外食流通サービス協会(JFSA)加盟同業9社と新会社を設立し、在庫を抑える効率的な一括配送システムで、JFSAのPB商品を対象に翌年夏から共同物流事業をスタートした。協業による共同物流~保管システムを整え、いったんセンターに集めた商品を卸が共同調達する。詰め合わせを毎日1ケース単位で発注~翌日届けができるように。

 堅実経営に定評。企業風土に〝基本を大切に 継続は力なり〟が根付いている。



会社概要

中村角株式会社
本  社:広島市西区草津港1-3-3
設  立:1948年11月
資 本 金:1億円
売 上 高:288億5680万円(2022年3月期)
従業員数:185人
事業内容:加工水産物、加工食品・業務用食品の卸
T E L:082-501-2000
U R L:http://www.nakamurakaku.co.jp
※2022年8月当時の情報です。