チームで仕事を行う風土づくりと、
「1人3役」による担当領域の拡大

株式会社外林

取り組んだ背景は?
 ~会社の繁栄は従業員の幸せと共に

 

 福山市の本社を拠点に、東北から九州まで10の支店を抱える同社は、お菓子の卸売・小売業を主な業務とする会社である。取引先が365日営業のスーパーや小売店であることから、時間外労働の多さと有給休暇の取得率の低さが課題となっていた。そこで代表取締役会長の浦上和明氏は、「全従業員の物心両面の幸福を追求する」という経営理念を踏襲しつつ、「アドマイヤーカンパニーを目指す」という方針を打ち出した。アドマイヤーカンパニーとは、お客さまや取引先、従業員、地域社会など全てのステークホルダーから信頼され支持される企業のこと。そのためには、まず従業員の満足度や働きがいを高めていくことが必須ではないかと考え、さまざまな改革に着手した。

 

取組導入のプロセス
 ~チームビルディングの仕組みの中、各自が主体的に活動

 同社では、2010年頃から「4大改革」と位置付けた会社の方針のもと、業務の見直し、人事制度の改革、本部機能の強化、長期発展の仕組みづくりなどに取り組んでいる。そうした流れの中、14年、先代から会長職を引き継いだ浦上氏。
「時代が変化する中で、これからはトップダウンでは、組織は動かないと考えました。従業員一人一人が知恵を出し合い、経営に参画する会社にならなくてはなりません。そこでまず、チームビルディングの手法を導入したのです」
と語る。

 一人では成し遂げられない目的や目標でも、チーム単位で取り組むことで、達成が可能になる。チーム内において、メンバーそれぞれが強みを生かして弱点を補い合うことで、結果的に一人一人が主体的に動ける組織づくりを目指した。

主な取組と工夫点
 ~業務と課題の共有、「1人3役」を軸に効率化を図る

◆チームで仕事を行う風土づくり
 チーム単位で業務を行っている同社には、得意先へセールスを行うチーム、セールスを支援するチーム、他支店との情報共有を行うチーム、メーカーと協力してより良いサービスを提案するチームなど、さまざまなチームがある。チームで活動することで、経験が浅い若手従業員も、アイデアを出しながら重要な案件に挑戦することができ、管理職はチームを育てるという意識を持つようになる。チームのメンバー同士でのノウハウの共有や、協力し合う意識が個の能力を底上げし、全体の士気も高まるという。

◆アシスタントチームによる営業の効率化
 同社では、社外での営業活動を主としたセールスチームの業務を「アシスタントチーム」が支援する。このチームは、一般的には営業担当が行う社内業務(見積もり作成、資料作成、商品手配など)を代わりに行う。時には商談にも同行することで、電話やメールのやり取りだけは難しい案件への対応など良好な関係づくりにも配慮している。営業担当が不在時でも、取引先からの問い合わせなどへ、迅速に対応できる。

◆テレビ会議を通じて支店間で課題を共有
 現場で発生する課題は、まずそれぞれの支店内において検討し解決していくが、地域は異なっても共通する課題は多くある。そこで、支店を結ぶテレビ会議を通じて課題を共有し、共に解決策を考えている。支店の垣根を越えて、知恵を出し合い刺激し合うことで、多くの気付きが生まれ仲間意識も芽生えるという。

◆「1人3役」により、担当可能な領域を拡大
 自分の通常業務以外にも、あと2人分の別業務がこなせる「1人3役」を目指し、知識や技術の習得とカバー体制の強化を図っている。そのため、担当者以外でも業務内容を理解し遂行できるように、まずは各部署で作業内容のマニュアル作成に着手した。すると「マニュアルを作成する時間がない」という声も上がったため、丸一日を「マニュアル作成日」として設け、全社を挙げてマニュアル作成を行った。
 一方で、取引先によっては、やはり担当者でなければ務まらない業務も顕在化した。そこで半年から1年ごとにジョブローテンションを行うことで、各自が担当できる客先や業務を増やすよう取り組んでいる。
 その結果、特定の従業員に仕事が集中する状況が改善され、有給休暇の取得率向上や、残業時間の削減(4年で約30%減)に大きく寄与している。さらには、短時間勤務や産休中の従業員のフォローなどもスムーズに行えるようになった。

◆RPAを活用した業務の効率化
 同社のグループにはシステム開発の関連会社があり、いち早くRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入した。取引のデータを自動で基幹システムに取り込み一元管理するなど、人の手による作業を極力削減している。業務の効率化で時間が生まれたことにより、新たな商品開発や商品企画にも取り組めるという。さらに、RPAを利用した従業員から寄せられる課題が、新たなシステム開発にフィードバックされることも、同社のグループにおける大きなメリットになっている。

◆従業員の状況を把握し、サポートする内申書制度
 同社の従業員は、2種類の内申書を専用のWebページから提出できる。一つは経歴や家族構成など基本的な情報の登録・管理で、総務に送られるが、もう一つは日頃の悩みや相談ごとなどで、会長に直接送られる仕組みになっている。仕事に対する不安や不満などを会長自らが把握し、心のケアを行うためのものだ。従業員が心身共に健康な状態で仕事ができるよう配慮した仕組みで、「長く勤務してほしい」という会社の願いが込められている。

取組の中では課題も

 最も苦労したのは、従業員の意識改革だと浦上氏は話す。
「改革を始めた当初から、従業員の意識改革に注力しています。油断すると時間外労働がまた増えてしまうため、粘り強く継続していかなくてはなりません。最近は、会社の取組に共感してくれる従業員も増えたと手応えを感じています」 

取組の成果

 有給休暇の取得は毎年増えており、今後も取組を続けていく考えだ。事前に計画を立てて取得してもらったり、みんなで申し合わせて取得したりなどと、取得促進を工夫していくという。

「有給休暇の取得率向上のために、以前から取引先に会社の休日カレンダーを配布して、理解を求めていましたが、世の中の変化とともに、次第に受け入れられるようになってきました。私たちが行ってきた業務の改善が、結果的に働き方改革につながって、少しずつ実を結んでいると確信しています」
と浦上氏。

◆労働時間・休暇(直近1年間)
・常用雇用者の総実労働時間(1カ月平均)が160.0時間
・常用雇用者の年次有給休暇の平均取得率が68.3%、平均取得日数は12.6日

従業員からの評価

 営業本部人財育成課の本沖さんは、
「時間外労働が減り、働きやすくなったと感じています。特に子育て世代には、帰宅後に子どもと過ごす時間が増えたと好評です。また、1人3役の取組により、自分の業務をカバーできるスタッフがいるという安心感から、有給休暇も取得しやすくなりました。オンとオフのメリハリが付くので、仕事にも集中できます」
と語る。

 こうした同社の取組は、就職活動中の学生たちにも好評だという。もともと人材教育を重視しており、先輩が後輩に教えることで共に育つ「共育」を掲げている同社において、特にチームビルディングの導入は評判が良く、先輩が後輩を指導する教育体系についても、学生から高い関心を得ているという。

今後の目標など

 

 最後に、今後の目標について浦上氏は語る。
「会社が行っているさまざまな改革を、本当に従業員は求めているのかと、常に自問自答しています。これからも、改善点を見つけながら待遇の向上を図り、従業員の満足度を高めていきます。試行錯誤しながら行ってきた改善で従業員に仲間意識が生まれ、一人一人が考えながら行動し始めており、会社がさらに発展していく土壌が整いつつあると思います。また、時間外労働の削減や有給休暇の取得推進で増えた、個人の時間を有効に使ってもらうために、意欲の高い従業員の自己啓発や資格取得などもしっかり支援していきたいと考えています」

取材日 2019年2月

会社概要

株式会社外林
所在地:福山市卸町2-6
URL:http://www.sotobayashi.co.jp/
事業内容:菓子卸売業
従業員数:167名(男性97名、女性70名)内、
広島地区52名(男性30名、女性22名)
(2018年10月現在)

情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com