飲食小売業でプチぜいたくブーム
高級食パンやお好み焼き

高級食パン・お好み焼き

 2019年、市内では高級食パン、タピオカなど食の分野で新業態店の出店が相次いだ。プチぜいたくがキーワードだ。
 19年後半、広島市内に高級食パン専門店が立て続けに出店。11月、オールハーツカンパニー(愛知)がジ・アウトレット広島に猫の顔型の高級食パン店ねこねこ食パンをオープン。子どもや女性が主対象で、平日約250人、土日約500人が来店する。かんながら(埼玉)も同月、考えた人すごいわ広島店を南区松原町のエキシティ・ヒロシマに開いた。12月には銀座仁志川(東京)が同町のビッグフロント広島に銀座に志かわ広島駅前店を開店。いずれも県内初出店で、小麦や水など原材料にこだわった食パンを1斤当たり400~500円で販売する。自宅用のほか、土産用の購入もあるという。広島経済大学経営学部の細井謙一教授は、「世間では2年前ぐらいから景気が良くなったと言われているが、一般消費者は実感を持ちにくく、極端に高い商品はなかなか買えない。消費者は賢い買い物をしたいと思うもの。いつものパンに数百円プラスするだけで良いものを買えたという満足感があり、プチぜいたくや自分へのご褒美といったニーズと合致したのでは」と話す。
 (財)お好み焼アカデミー理事も務める同教授によると、お好み焼き業界でも高級な商品の需要が高まっているという。ドリームマスター(西区)が東区二葉の里で運営するお好み焼き店TAKASAGOMARU広島本店ではニューカレドニア産の高級えび「天使の海老」をのせたお好み焼き「贅沢海鮮焼き」(2100円)が人気を集めている。大人のお好み焼き kate-kate(安佐南区)では約2年前から高級お好み焼きのラインアップを拡充しており、生イカ、生エビなどが入ったカテカテ焼き(1240円)やステーキ110㌘が乗ったカテカテ焼きプレミアム(1480円)などがよく出ているという。
 全国的な流行と連動し、タピオカドリンク店の出店も相次いだ。ゴンチャジャパン(東京)が7月にゴンチャ紙屋町シャレオ店を、オアシスティーラウンジ(同)が10月に春水堂ekie広島店をオープン。いずれも中国地方初出店で、タピオカ入りの紅茶などが楽しめる。インスタグラムなどのSNSで発信するための消費が多く、大勢の人が支持している製品や事柄への支持がいっそう高くなる「バンドワゴン効果」が発生している。
 一方、コーヒーチェーン大手のスターバックスコーヒージャパン(東京)は9月、広島パルコ新館に出店。本通商店街には既に広島本通り店があり、パルコ店との相乗効果を狙う。12月6日には広島三越店をオープンし、電車通り沿いを通る買い物客、ビジネス客、観光客らを取り込む。同教授は相次ぐ出店の背景について、「働き方改革が浸透して会社員の帰宅時間が早まり、自分に使える時間が増えてきたため、需要が見込めると判断したのでは」と分析する。
 一般に広島県民は飽きやすいと言われる。高級食パンやタピオカなど新たな食ブームは定着するのだろうか。一過性のブームに終わらせないためには、オタフクソース(西区)や業務用鉄板製販のケーツーエス(安佐南区)がお好み焼き店を開業研修などで支えているように、周りの産業によるサポートが重要だろう。