宮島での和文化体験で
宿泊・観光消費額増へ

観光振興を聞く6
okeikoJapan 社長 橋口栄 氏

 宮島の古寺をリノベーションし、着付け、茶道、書道、おにぎり作り(料理)など、日本文化の体験型サービスを提供し、好評を得ている。旅行大手口コミサイト「トリップアドバイザー」では総合評価が満点となるなど、口コミが広がり、多い月にはインバウンドが約300人訪れる観光スポットに変ぼうを遂げた。

-人気の理由は。

 着物を着て、茶道と書道を体験する約1時間半の8000円のセットが人気です。着物は地域住民から譲り受け、質の良い着物と帯で本格的な着付けを行っています。また、スタッフによる体験シーンの写真撮影と写真データのプレゼントも行っていて好評です。
 現場スタッフの全員が女性で、学校の教員や英会話教室、旅行会社の勤務経験を持つ者、英語を学ぶ主婦などさまざまです。それぞれの得意分野を生かし、英語でのおもてなしや観光企画を練っているほか、女性特有の細やかさや明るいコミュニケーションを心掛け、楽しんでいただいています。 

-どんな観光課題を感じていますか。

 広島・宮島は世界に知られているため、集客が受け身になっているように感じます。特に宮島はインバウンドの観光コースが厳島神社などの決まったパターンが多い。そして、滞在は平均約3時間で、関西からの日帰りコースになってしまっています。魅力あるコンテンツが多くあるにも関わらず、宿泊につながらず消費額も少ない。もっと他にも宮島を満喫できるコンテンツがあることを打ち出したい。

-実現には何が有効と考えますか。

 自治体や事業者などが連携した一つのチームを組み、地元民だけが知る隠れスポットへの訪問や、長時間の滞在を促すプロモーションをしてほしいですね。そうした行動を起こさせるには、マーケティングデータの分析も重要。訪れる外国人の属性や行動パターンが分かれば、効率良く効果的なPRができる。データの収集には、例えば宮島桟橋に島内事業者のパンフレットを設置し、そのパンフレットを手にしたインバウンド観光客が各店舗に訪れた客数のデータをとるなど、外国人が何に興味を持ち、実際に足を運んで何を購入するかに加え、桟橋でのPR効果を検証できます。当社では市内の宿泊施設の各部屋にパンフレットを設置する事例を持ち、効果を感じています。一方で、各事業者の失敗事例を共有することで、何が有効かも見えてくると思います。 

-今後の事業展開は。

島内のホテルや神社などと連携し、富裕層のインバウンド向けに新しいコンテンツを考えています。通常客ではできない、寺を1棟貸し切っての体験や神社巡りなどを加え、朝から夜まで楽しめるよう充実させ、宿泊につなげます。また国内の企業向けには、宮島での「日本文化の体験」を共通テーマにしたビジネスマナーやおもてなし英語の研修を、さらに修学旅行生や若年層向けに着物の端切れを使った〝SNS映え〟するお守り作り体験、婚活イベントなどを実施し、ターゲットを拡大したい。 

【プロフィール】
2014年に西区己斐に地域交流とカルチャー教室を目的とした自宅サロン「おけいこハウス」を創業。16年9月にokeikoJapanを設立し、17年4月に宮島の「徳寿寺」で日本文化の体験サービスを始めた。