《呉》観光を基幹産業に 年間観光消費額800億円へ

22年の地域経済④ 広島経済レポート

 かつては海軍鎮守府が置かれ、ものづくりのまちとして栄えた呉市。人口の流出や高齢化により、2015年時点で22万8552人だった人口は、45年に14万9865人となり、生産年齢人口(15~64歳)は7万5605人と約4割減少する見通しだ。人口減少に伴い、個人消費と民間住宅投資は毎年約45億円ずつ減少する試算に加え、23年9月末をめどに休止する日本製鉄の影響も懸念されている。
 こうした中、市は21年9月に観光振興計画を策定。観光を基幹産業に成長させ、地域の活力を取り戻すため、将来的に観光消費額を現在の約3倍の800億円にする目標を掲げた。呉ならではのサービスや体験を提供することで「呉ファン」を創出。行政や観光関連団体だけでなく、民間事業者など、地域一体となった新しい観光推進体制づくりを進めている。

-観光客の傾向

 「平成30年7月豪雨」以前は、近隣8町との合併による観光資源の拡大や大和ミュージアムの開館、日本遺産認定などで総観光客数400万人を維持してきた。観光客数を発地別に見ると、大和ミュージアムが開館した05年に県外客数が県内客を上回り、県外からの観光客が多く訪れるまちへと変化。一方、宿泊客数に関しては大きな変化は見られず、40万人前後の水準にとどまっている。
 20年には呉市訪問経験者にアンケートを実施。回答者680人のうち男性が7割弱を、年齢は40歳以上が8割弱を占め、40~69歳の男性観光客が中心と推察できる。6割以上が呉市への宿泊経験がなく、大和ミュージアムなど中心部のみに集中している傾向が浮き彫りになった。一方、呉市観光に対する改善事項として「モデルコースを知りたい」という意見が約4割に上った。
再訪問に前向きな人も約9割を占めており、ニーズに基づいた取り組みを充実させ、リピーター獲得につなげる構えだ。観光振興課の多田博課長は、
「これまでのように自分たちが売りたいと思うモノ・コトを提供するのではなく、マーケティングの視点を取り入れ、観光客が望むニーズをしっかりと把握し、魅力的な観光プロダクトを充実させることが重要。全ての市民が『観光が自分たちの生活を支える大切な産業である』という意識を持ち、観光客を歓迎する機運を高めたい。昨年11月から商工会議所や広域商工会、観光協会、市役所で体制構築の検討を開始。目標の実現に向けた呉らしい体制・仕組みづくりを早期に実現したい」

「広島経済レポート」2022年1月13日号掲載記事(5月16日修正)