新代表就任に伴い既存の制度を見直し、
社員満足度の向上に取り組む!

株式会社こっこー

取り組んだ背景は?
 ~会社の永続と社員満足度向上を目指し、改革に着手

 

 呉市に本社を置き、中四国を中心として、スクラップ・産業廃棄物の収集運搬、鉄に関する加工・販売および建材販売・建築工事などを行っている同社。2017年4月に、三代目となる槙岡達也氏が代表取締役社長に就任した際、社員向けの所信表明で、会長(先代の社長)の思いを具現化し、「会社を永続的に続けていくため、さらには社員満足度を向上させるために、働き方改革を行う」と宣言。槙岡氏と管理部が推進役となり、この実現を目指して従来の働き方を見直し、全社員が取り組む体制をつくっていった。

取組導入のプロセス
 ~社内の実態を明らかにすることからスタート

 槙岡氏は社長就任にあたり、まずは、自社の実態を把握するため、全国19カ所の拠点を回った。各事業所の雰囲気を肌で感じ、社員とも直接話をしていくことで、早期に「働き方改革」に向けて取り組む必要性を感じ、所信表明時に、「1人当たり月7時間の時間外労働の削減」「1人当たり年間5日の有給休暇の取得」を重点的な取組事項として掲げ、全社的に取組を進めていくことにした。
「まずは、定時退社を守るという意識改革から取り組みました。もちろん、それまでもルールとしてはありましたが、実態としてはできていませんでした」
と槙岡氏。管理部では各事業所の出退記録や各社員の勤務状況を分析し、社長を交えて活発な議論を行い、各社員に定時を意識して業務に取り組むよう働き掛け、改善を進めていった。

主な取組と工夫点
 ~現場目線での改革で、働きやすさや効率化を意識

◆理由や期間を問わない短時間正社員制度を導入
 会長が意向としていた多様化する働き方への対応として、短時間正社員制度を制定した。この制度は、理由を育児や介護に限らず、期間も設けていない。勤務時間においても週20時間以上かつ1日4時間以上の勤務であれば、始業・終業時間や月の労働日数など本人からの希望に応じ、相談の上で柔軟な利用を認めている。週に複数回の通院の必要があり正社員として働くことができず、非正規で働いていた社員においても、この制度を利用することにより、正規雇用として働くことが可能になった。
 産休・育休を取得後、職場復帰時に短時間勤務制度の利用を希望した松本さんは、
「現在は1日6時間で勤務しており、少しずつ家庭と仕事のバランスを保ちながら働かせていただいています。社外の方々が困らないように、名刺には勤務時間を明記するなど周りに配慮した取組も今後実体験をもとに提案していきたいと考えています」
と話す。

◆非正規雇用の社員を積極的に正社員へ転換
 同社における障害者雇用は従来、非正規雇用のみの雇用形態であったが、会長が、勤勉に働く非正規雇用の該当社員に感銘を受け、障害者雇用を含めた非正規雇用者が希望すれば正社員へ転換できる制度を導入した。この制度は従来の正社員に対しても良い刺激になると判断し、運用を続けている。この制度により、非正規雇用8名のうち希望者7名全員を正社員へ転換した。安定した生活が送れるようになったため、社員本人のモチベーションも上がり、本人だけでなく家族からも喜ばれている。

◆現場目線で売り上げ重視から利益重視の営業にシフト
 現場・営業経験のある槙岡氏自身の視点から、業務の改善にも力を入れている。その中でも特に営業部門において、業務に無駄があると槙岡氏は感じていたという。
「特に営業部門は時間に対する意識が低く、非効率な部分が多くありました。時間を度外視した、売り上げ重視の営業だったため、今までの商慣行を見直し、時間を含めた利益重視の営業に変えようと働き掛けました」
 かつては営業の一環として、担当する工事の着手から完了まで全て立ち会っていたため、工事終了後に、会社へ戻って残業を行う悪循環になっていた。そこで立ち会いは、着工時と完工時など、必要最低限に絞った。
「営業の機会損失を解消する必要がありました」
と槙岡氏は語る。
 このような意識改革は、その他の部署においても会議資料が削減されたり、出荷順に倉庫内を整理することで効率化が図られたりと、改善の取組として波及している。

◆計画的な確認・指導で有給休暇の取得率向上
 かつては上司の目が気になって、「休みにくい」といった風潮が少なからずあったという。そこで管理部が中心になって、有給休暇の取得状況を確認し、計画的な取得を促している。こうした働き掛けを全社の方針として行ったことで、「休みにくい」から「休むもの」という考えが、少しずつ浸透してきているという。その結果、取組開始前の16年には全社平均で59%、低い部署においては16%だった有給休暇取得率が、翌17年には全社平均で61%、18年は69%まで向上している。

◆配偶者(男性)育児休暇制度の周知徹底
 同社では、6年前から配偶者育児休暇制度を設けていたが、なかなか社員に浸透せず、3年前までは年間1名の取得があるかないかという実績であった。そんな中、槙岡氏自身も子育て世代真っただ中であることから、男性社員にもっと積極的に育児休暇を取得してほしいと、社長自ら育児休業を取得するとともに、管理部からはお子さまが誕生した社員一人一人へ育休取得の声掛けを実施した。その結果、直近3年では対象者35名に対して11名が制度を利用し、年ごとに利用者が増加している。今後はさらなる取得促進に向けて、管理部が活用方法について詳しく説明していく、社内報で呼び掛けるなど、引き続き改善していき「取得率100%」を目指す。

取組の中での課題

 「働き方改革への取組は未だ志半ばです。ライフスタイルの多用化など、時代の変化に対応した取組を今後も進めていくと共に、まだまだ制度をうまく活用できていない部分もあると思うので、社員全員に対して、制度の周知を徹底し、利用しやすい環境づくりにも注力していきたいと考えています」
と、槙岡氏は話す。 

取組の成果

 働き方改革の取組を掲げて以来、各部署内・事業所内で残業時間を削減や有給休暇取得に向けてどう取り組んでいくのか議論し、資料や業務の共有を図ることで、自然に社員間のコミュニケーションも活発になり、労働時間や休暇について取組成果が出ただけでなく、社内の雰囲気も改善されてきたという。 

◆労働時間・休暇(直近1年間)
・常用雇用者の1人当たりの総実労働時間(月平均)が2.6時間削減(前年度比)
・常用雇用者の年次有給休暇の平均取得率が69.0%、平均取得日数は12.2日

◆多様な働き方(直近3年間)
・育児・介護を除く短時間勤務制度を2名が利用

◆非正規(直近3年間)
・非正規社員から正社員への転換制度を7名が利用

社員からの評価

 

 「業務の効率を意識し、業務改善を進めたことで、早く帰れるようになり、家族一緒に夕飯を食べる回数も増えました。家族とのコミュニケーションが増え、とても充実した生活を送れるようになりました」
と、管理部の荒瀬さん。

「働き方改革が始まって、社内の雰囲気は良くなったと思います。社長の年齢が近く、社員一人一人を気にかけ話しかけてくださることも多いので、社員が考えていることや本音を言える環境になってきたと感じます。現場目線で物事を考えてくれる社長の姿勢に共感して、社員も一丸になろうとする雰囲気が生まれてきており、とても楽しく働かせていただいています」
と松本さん。

今後の目標など

 18年には、槙岡氏は中長期経営計画を策定し、その中で「当社に関わる全ての人を幸せにしたい」と表明した。先頭に立つ槙岡氏は、自分が旗を振るだけでなく社員が一丸となって、同じ方向にベクトルを合わせたいと考えている。今回の働き方改革もその一環であり、社員が成長することが、会社の成長にもつながると信じている。 

また同社では、20年4月をめどに、会社カレンダーの変更を検討している。これまで完全週休二日制ではなかったが、平日の勤務時間を調整することで、土曜日の休日への変更や、総労働時間の削減に向けた検討も図っていくという。
「これからも社員への先行投資と考えて取組を継続し、年間休日と有給休暇取得率の増加や、給与面でのベースアップを図ることで、社員満足度を上げていきたいです」
と、槙岡氏は締めくくった。 

取材日 2019年1月 

会社概要

株式会社こっこー
所在地:呉市広多賀谷1-9-30
URL:https://www.cocco-at.jp/
事業内容:総合リサイクル事業
従業員数:332名(男性284名、女性48名)
(2018年10月現在)

情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com