多様化する社員のニーズに応えて、
働きやすい職場づくり

中外テクノス株式会社

取り組んだ背景は?
 ~社員の多様なニーズに応える働きやすい会社を目指して

 

 電機・機械・情報・物理・化学・生物などの多彩な分野で、専門調査やシミュレーション、コンサルティング、エンジニアリング、研究開発支援を行う同社。
「産休・育休を取ったり、介護をしていたり病気になったりと、社員の事情やニーズの多様化に応えて、働きやすい職場をつくるにはどうしたらいいか。ずっと考えていましたが、働き方改革として方針を明確にして進めた方が、スムーズにいくのではないかと、1〜2年前から本格的に取り組みはじめました」
と、総務本部副本部長の阿部佳祐氏。 

 

「広島県働き方改革実践企業認定制度への応募を通じて、当社の取組がどのレベルにあるかを客観的に把握できました。採用状況が厳しくなっている中で、認定をきっかけに少しでも採用活動のプラスになればと思っています」 

取組導入のプロセス
 ~目標を掲げ、労使で定期的に話し合う場を設定

 取組の導入に当たり、社長方針として「長時間労働の是正等、新たな働き方を確立するため、生産性を向上し、長時間労働の削減と業務効率の向上の両立を目指す」を明示し、「2020年3月31日までに、ノー残業デーを全社で実施・浸透させ、有給休暇の取得率を70%以上とする」という目標を掲げた。安全衛生委員会で、会社代表と社員代表が協議する場を定期的に設け、残業時間の実績等を共有し、目標達成に向けて、両者が意識を合わせ協力する体制を整えている。

主な取組と工夫点
 ~リクルーターや奨学金補助など新入社員サポート

◆リクルーターが、新入社員を採用時から入社後までフォロー
 3年前から「リクルーター制度」を設け、広島・関東・中部・関西・九州の5地区で女性社員9名のリクルーターが、会社説明会から入社まで、新入社員をフォローしている。さらに19年からは、入社後も継続的にフォローすることまで、活動範囲を広げた。新入社員は各部署で1年間チューターに付いてOJTで学ぶが、技術面での指導が中心であり、メンタル面でのフォローに弱い面がある。そこで、リクルーターが新入社員とチューターをフォローし、円滑に職場に溶け込めるようにサポートする。中心的な役割を果たす、総務本部人事教育課課長の西田菊恵氏は
「新入社員のお母さん的な存在として、悩んでいることや入社後のギャップなどを聞き取って、会社と新入社員をつなぐ役割を果たしたいです」
と意気込む。
「3年離職率は今もそれほど高くないですが、目標はゼロです」
と阿部氏も語る。

◆新卒社員に5年間奨学金返済を支援
 新卒社員の奨学金返済を5年間支援する「奨学金補助制度」を19年4月からスタート。広島県の奨学金返済支援に対する助成制度では助成対象となる期間は入社後3年間までだが、同社では独自に2年分拡大して実施する。1年間在職すると3月に5万円支給され、5年間で計25万円を補助する。
「新入社員に少しでも喜んでもらい、長く働き続けてほしい」
と西田氏。

◆有休の計画的付与と休みやすい社内風土の醸成
 同社では、年間5日の有給休暇を計画的に付与しているが、
「昔から、当社は有給休暇が取りやすい風土があります」
と阿部氏。社員が気軽に有給休暇を申請できるようにするため、取得理由は問わないこととしている。18年は7割近くの取得率を達成。入社25年目には会社から旅行券をプレゼントし、リフレッシュのための休暇取得を後押ししている。

◆基礎的な知識から専門技術まで社員の学びを支援
 特定のベテラン社員に業務が集中することを防ぐため、若い社員のスキルアップが急務となっている。それぞれの部署で、OJTを通じた専門技術の教育や業務マニュアルの整備を進めている。このほか、海外出張で不可欠な英会話や、基礎的な電気や化学など幅広い知識を身に付けてもらうため、E-ラーニングで学ぶ仕組みを整えている。受講を希望する社員は、自分で好きなプログラムを選ぶことができ、経費も会社から一部助成される。

◆メンタルヘルスホットラインで社員の相談対応
 セクハラ・パワハラ等のハラスメントや、職場の悩み等が原因で発症するうつ病などを未然に防止するため、社外に相談窓口として「メンタルヘルスホットライン」を開設した。匿名で随時相談することができるが、本人の承諾があれば会社にも情報提供される。会社はこの情報も参考に職場改善のための具体的な取組を実施する。また、専門カウンセラーを外部委託し、高ストレス職場のカウンセリングや管理職への研修を実施しており、ストレス軽減や職場の環境改善に効果を上げている。

取組の中での苦労点

 「働き方改革の目的が、社内になかなか伝わらなかったのが大変でした。今後は多様性への対応を進めていかなければならないと、考えています」
と、阿部氏は明かす。 

「最初はいろいろ苦情も出ましたが、説得を続けました。まじめな社員が多いので、決まったことはきちんと守ってくれ、最終的にはなじんできています」
と、西田氏も振り返る。 

取組の成果

 残業時間削減の取組により、労働時間は少しずつ減少している。
「社員は、まだ改善の実感が薄いかもしれませんので、ノー残業デーの実施や有給休暇取得率の向上など、働き方改革の効果をもっと実感できるように取り組んでいきたいです」
と、阿部氏は意気込む。

◆労働時間・休暇(直近1年間)
・常用雇用者の総実労働時間(1カ月平均)が174.5時間
・常用雇用者の年次有給休暇の平均取得率69.0%、平均取得日数は12.2日

従業員からの評価

 

「5日の連続有給休暇を取り、土日も含めて9連休にして海外へ行ったこともあります」
と、経営戦略本部営業統括部の有常さんはほほ笑む。総務本部人事教育課主任補の磯本さんも
「有給休暇が取りやすいですし、繁忙期以外は残業もほとんどありません。ステップアップしていける環境で、仕事とプライベートのメリハリを付けて、楽しく働けます」
と続けた。

今後の課題や目標など

 「仕事の偏りをなくして、みんなが余力を持って働くことができるようにしたいです。バランスをうまく取って、収益を上げながら残業を抑える方法を考えることが重要です。収益構造の改革は各部署が主体となりますが、私たち総務としては、働き方や休み方に関して、できるだけ制度化・ルール化を進め、すべての職場に展開していくことが今後の課題です」
と、阿部氏は締めくくった。 

取材日 2019年1月 

会社概要

中外テクノス株式会社
所在地:広島市西区横川新町9-12
URL:https://www.chugai-tec.co.jp
事業内容:環境・プラント・インフラの検査、技術サービス業
従業員数:広島地区 416名(男性360名、女性56名)
     全  社 950名(男性825名、女性125名)
(2019年2月現在)

情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com