広島から料理宅配事業を拡大
地域に愛されるサービスへ、採用強化
ウォルトジャパン トップインタビュー 新宅暁カントリーマーケティングマネージャー
フィンランド発祥で料理宅配サービスを手掛け、3月に広島市から国内事業をスタート。7月には広島本社を南区段原南に構えた。日本人第1号の社員で、新規拠点の立ち上げなど国内のマーケティング全般を率いる新宅暁氏に話を聞いた。
-日本進出に当たり、広島市を最初の市場に選んだ理由は。
全国での事業展開を前提に、当社サービスが市場に受け入れられるかを確認できる都市を選定した。広島を選んだ理由の1つ目は、適当な市場規模。当社は欧州の100万~150万人規模の都市をメインに事業を行い、規模が似ており経験を生かせると判断した。2つ目は競合の状況が緩やかだったこと。
3つ目は食文化が豊かで、さらにスポーツが盛んなこと。これらはフードデリバリーの素地になる。既に根付くお好み焼きの宅配文化は全国的には珍しく、すぐにアプリに置き換えられると考えた。またテレビでスポーツ観戦するときに出前を使う人が増えるという調査がある。野球、サッカー、バスケットボールなどプロスポーツが充実していることはわれわれにとって重要な要素だった。
-広島本社の概要を教えてください。
200平方㍍のフロアに、本社機能のほか、各地の登録店舗や利用者をフォローするカスタマーサポート(顧客対応)の部門を置く。広島在住の20人ほどが勤め、中には広島大学の学生もいる。6月に札幌、7月には仙台に進出し、全国への事業展開を見据えている。成長を加速するためにも、広島で採用を一層強化する。
-サービスの強みは。
全国展開するチェーン店ではなく、各地域に愛される〝個店〟の登録を進める。広島だと酔心や広島アンデルセンなどは当社とだけ契約している。店の開拓は進出する地に人が常駐し、まずは食べに行くところから始まり、時間をかけて関係性を構築。登録店舗数ではなく、店の質とバラエティーの豊富さで勝負する。
飲食店の支援にも力を入れる。利用者1回当たりの注文単価や頻度を上げるために、アルコールとのセット販売などメニューのコンサルも行い、飲食店の収益化を全力で支援する。カスタマーサポートにも注力し、安心安全のメニューを届けると世界的に評価されている。アップルストアでのアプリ評価は4・8で、フードデリバリー部門でトップだ。
大切なメニューを任せてもらえるように、配達スタッフへの指導も強化。当社の理念は当然のこと、交通ルールもしっかりと伝え、県警にも積極的に協力している。
当社は泥臭く地味な動きを大切にする。これはフィンランド的な考えだ。米国は事業規模を重視するが、われわれはサスティナビリティー(事業の持続可能性)を優先。強いファンを増やし、口コミでファンを広げる仕組みをつくっている。
-ご自身の経歴を教えてください。
これまでにツイッターやユニクロ、アップルなどに勤務。主にマーケティング畑を歩んだ。大きな組織だったため、社会に直接影響を与え、一から事業を立ち上げられる当社に入った。個人の幸福を探求する北欧文化にも、もともと興味があった。日本人とフィンランド人はよく似ている。勤勉でシャイ、自分を大きく見せることが苦手だ。当社も謙虚さを重視し、日本事業は市場をよく知る日本人がやるべきだと考え、大きな裁量が与えられている。
広島に本社がある会社という安心感を持ってもらえるとうれしい。「広島のフードデリバリーならウォルトじゃろ!」と言っていただけるよう、県民の皆さんと深い関係を築きたい。
【プロフィル】
ウォルトジャパンのカントリーマーケティングマネージャー。1988年11月11日生まれ、大分県出身。上智大学を卒業し、ツイッタージャパン、ユニクロ、アップルなどに勤めた。広島は「水と緑が美しく、都市と自然のバランスが良い」と話す。