海外事例基に夜の観光・滞在促進へ
観光振興を聞く1
せとうちDMO 専務理事兼事業本部長 金平京子 氏
2019年10月に、せとうち観光推進機構の専務理事兼事業本部長に就任。豪州政府観光局や英国政府観光庁日本・韓国代表などを務めた経験から、訪日外国人(インバウンド)を取り込むアイデアなどを聞いた。
-首都圏や海外で進む取り組みは。 首都圏では、商品やサービスを繰り返し使ってくれる優良顧客向けの「ロイヤルカスタマー制度」の導入が進んでいます。海外で取り入れられている制度で、顧客に特別なメリットを提供し、ファンを育成しています。例えば、ホテル宿泊で飛行機のマイレージがたまる・使えるといった取り組みなど、いかに連泊をしてもらうかの仕組みづくりに注目が集まっています。
同時に、夜間の消費を促す「ナイトタイムエコノミー」の強化が必要。海外では午後8時以降のツーリズムを定着させています。例えば、ロンドンでは博物館や小規模なギャラリーが週1回営業時間を延長し、夜間に観光客を取り込む。日本の百貨店などは比較的遅くまで営業していますが、観光施設は午後5時までが多い。例えば、宮島や平和公園近隣の施設や土産店を週に1度だけでもナイトタイムに営業すると、宿泊を促すきっかけになるのでは。夜間のライトアップも魅
力の一つと思います。
市内中心部での歩行者天国。東京では銀座や日本橋が休日に多くの人でにぎわいます。行政などとの兼ね合いもありますが、私個人的には、地方都市でも広島のような規模なら、路面店などへの流入が増えるなど効果は十分にあると思います。広島は市内中心部から平和公園を簡単に訪れることができ、少し歩くと川や山、海といった自然が豊富。歩いてこそ人は流れ、お金も落とされると思います。広島ならではの観光資源を存分に生かしてほしい。
-注目したい観光コンテンツは。サイクリングやマリンスポーツですね。自転車で街や自然を巡り、そして川や海でヨットなどを身近に楽しめる。自然を生かした観光コンテンツとして有力だと思います。瀬戸内海を巡るクルーズ「ガンツウ」や、水陸両用機を使った遊覧飛行などを手掛けるせとうちSEAPLANESにも注目したい。
-広島の観光課題と瀬戸内のブランド推進のゴールは。首都圏から移動距離や時間が遠くて長い。例えば空港から市街地に移動するバス内で、瀬戸内の楽しみ方を発信するなど、移動も楽しめる工夫が必要だと思います。ブランドは、その土地の背景や歴史などのストーリーが重要。それが少しずつ認知され、何かしらのきっかけや組み合わせで一気に波及します。「せとうち」という共通のバックグラウンドを基 に、この土地のブランドイメージをDMOと地域・企業が一緒になって育てることで一体感が生まれ、ひいては、瀬戸内の方々が瀬戸内に住むことに誇りを持ち、瀬戸内に人々が集まり、地域の方々が生き生きして、にぎわいが続く。それが最終的なゴールです。瀬戸内ブランドの強さと厚みを持たせるよう、さまざまなことに取り組みたい。
【プロフィール】
東京都出身。シドニー大卒。ウォルト・ディズニー・ジャパンや英国政府観光庁などに務め、観光や
ブランディングなどを経験。ラグビーW杯、東京五輪にも携わる。