Vol.3 大津建設株式会社
~若手人材の確保へ、対話重視で風通しの良い職場づくり
地域とのつながりを意識した理念で、働きがい創出へ~
★☆★2023年 広島県における「働きがいのある会社」優秀企業★☆★
広島県は、「働きがい」の民間専門機関であり、世界約100カ国で従業員意識調査を行うグレート・プレイス・トゥー・ワーク(GPTW)の「働きがいのある会社」調査に参加する県内企業に対して、調査費などの補助事業を行っています。本連載では、GPTW2023年版広島県における「働きがいのある会社」優秀企業など5社の取組を紹介します。
企業インタビュー動画
01. 取り組んだ背景
― 若手人材の確保へ、社員が仕事を楽しいと思える職場づくり
三次市に本社を構え、土木・建築工事などを手掛ける。建設業界は「3K」のイメージが強く、人手不足に加え、若者の業界離れが進み人材確保が厳しい状況にある。同社は中山間地域に立地することもあり、人材不足への強い危機感が取組着手のきっかけだ。
代表取締役の熊本孝司氏は「当社の社員の平均年齢は50歳と高齢化が進んでおり、若い人を雇い入れないと会社は維持・発展できません。長年、労働環境の整備に力を入れ、有給休暇取得率の向上や残業時間の削減、ICTツールの活用など積極的に取り組みました。
しかし、それだけでは若い働き手は増えません。働きやすい環境をPRするだけでなく、社員の働きがいの向上に取り組んで仕事が面白いと感じる社員を増やし、やりがいのある仕事だと併せてPRすることで、当社で働く魅力を伝えたいと考えました」と話す。
02. 主な取組と工夫点
制度づくり(ハード)の取組人との出会いを重視した企業理念で目指す姿を明示
同社は仕事をする上で、“人との出会い”を重視しており、企業理念に「人を尊び、自然に優しく、地域社会に潤いを届け、ともに歩む」を掲げる。熊本氏は「事業の成否は『人が基盤』だと考えており、人づくりのために社員との対話を最重視しながら風通しの良い職場環境を整えています。このように理念に沿った取組を進めていけば、おのずと社員の働きがいが生まれると考えます」と話す。会社の理念「人を尊び」の考え方が浸透していくことで、社員は自分の仕事だけではなく、互いに助け合うなどの連携強化が図られ、それが組織力の強化につながったと手応えを語る。
「親睦会」を通じたコミュニケーションの活性化
十数年前から社員が自主的に運営する「親睦会」があり、社員が会長や会計などの役割を持ち回りで担って社員旅行や食事会などを企画・運営する。会社はこの活動の費用の助成を行うことで活動を支えている。熊本氏は「親睦会での交流は、仕事での一面と異なる人柄を知る機会にもなり部署や役職の垣根を越えた深いつながりが生まれます。日々の困りごとを相談しやすくなるなど仕事にも良い影響があると思います」と話す。
経営に関わる役割を任せ管理職等のリーダシップ育成強化
社員のリーダシップを育成する取組の一環として、経営層が担っていた事業継続計画の策定や健康管理、安全研修などの会社の根幹に関わる役回りを「責任者」として中間管理職などを中心に権限を与える。責任者は、ISO9001※1やエコアクション21※2などの基準に沿った取組を進める。熊本氏は「権限を委譲したことで主体性が生まれ、社員同士のコミュニケーションもこれまで以上に活性化しました。責任者が社内の意見を積極的に吸い上げ、業務にあたることで、各現場の労災防止から安全衛生水準の向上など多岐にわたる業務改善につながりました」と成果を話す。
※2 環境省が策定した日本独自の環境マネジメントシステム
企業文化の醸成(ハート)の取組
企業理念の浸透を図り、仕事の意義を伝える
企業理念について熊本氏は「発注者や協力業者、地域住民とのつながりや協力なくして私たちの仕事は成り立ちません。関係者と価値観を理解し合うことで仕事が円滑に進み、良い結果が生まれる。それがやりがいにつながると考えます。また、建設業は自然災害の復旧工事などを通じて『自然環境を守る』という意義深い仕事だと考えており、当社の理念はこれらを大切にしたいという思いを盛り込んでいます」。
理念の浸透を図るために、毎週の朝礼や毎月実施する安全衛生会議などで社長自らが思いを発信するほか、社員の意見を聞く場も設けているという。
熊本氏は「各現場に出発する前の社員に世間話や個人的に伝えたいことなどの小さな対話を重ねています。社員の思いや意見が徐々に聞けるようになったので、今後も積極的な声掛けを続けて信頼関係を築いていきたい」と話す。
また、理念の「自然に優しく」を社員に意識付けたいと、近隣の河川や道路の清掃活動も定期的に行う。「一つ一つは小さな取組かもしれませんが、社員の仕事に対する誇りや地域との結び付きが芽生えてきていると感じています。こうした積み重ねが人材の定着にも寄与すると考えています」と語る。
03. 取組の中で感じた難しさや課題
― 互いを理解し合うことの難しさ
取組を通じて社内のコミュニケーションが活発になってきた一方、真の信頼関係の構築には相応の難しさがあると話す熊本氏。「5年ほど前から技能実習生を受け入れています。生まれ育った環境や文化、言語の違う社員たちが真に認め合い、同じ思いで仕事をすることは簡単ではありません。葛藤もあると思いますが、理念の『人を尊び』が浸透すれば、互いを認め合う環境になるはずです。これは社外の関係者に対しても同じで、相互理解と信頼構築のための取組を継続すれば、社員が仕事をもっと面白いと感じてくれると信じています」。
04. 今後の課題、目指すべき姿・展望
― 仕事の誇りと認め合う風土で魅力ある会社へ熊本氏は「豪雨・地震・自然災害時にインフラをいち早く復旧させる。まちづくりを通じて地域の発展に貢献する。これらがわれわれ建設業の使命です。縁あって入社してくれた社員が、この仕事に誇りを感じながら人間力を高めてくれれば、当然会社も成長します。対話を重ねて認め合う風土を一層根付かせ、それを発信していくことで、若い人がこの業界に足を踏み入れるきっかけになればうれしい」と展望を話す。
社員の声
社員同士が強いつながりを持ち仕事ができるよう、日々コミュニケーションをとっています。道路や河川整備など、仕事を通じて社会貢献しているという実感が持てるのがこの仕事の醍醐味です。「やりがいのある仕事ができる会社だ」ということをしっかりとアピールし、地域で長く愛される企業を目指します。
取材日:2023年8月
会社概要
株式会社大津建設
所在地:三次市十日市南1-5-30
URL:http://otsu-co.jp/
業務内容:土木工事業、建築工事業など
従業員数:30人(男性28人、女性2人)
情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍 取組サポートサイト「ヒントひろしま」http://hint-hiroshima.com)