女性社長が自身の経験も踏まえ、
真の活躍と働きやすさを追求
広島管財株式会社
1 高齢の従業員が多いため「介護や治療と仕事の両立」を会社として支援
広島管財株式会社(以下、広島管財)では、ビルメンテナンス業(清掃、設備メンテナンス、警備等)や個人宅でのハウスクリーニング、寮管理の現場を、全従業員の約80%を占める非正規従業員が担っている。
非正規従業員のうち6割は女性であり、特に「清掃」と「寮管理」の分野で女性の強みが生かされているようだ。採用後は、スムーズに業務に従事してもらえるように充実した研修制度を用意しているため、業務経験がなくても、性別や年齢にかかわらず健康であれば採用する方針であるという。
広島管財では、現場に入る前には必ずOJTを実施するとともに、新人には入社1年目研修を実施、未経験者も安心して働ける環境を用意している。また、定期的に全従業員に向けて清掃研修を開催し、会社が求めるサービス品質を実現するための「ルール確認」や「意識合わせ」、そして最も力を入れている「理念教育」を実施している。さらに、業務経験に応じた資格取得の支援も行い、取得した従業員が正規従業員になることを奨励しているという。
同社では、最高年齢となる85歳の女性従業員が、お客様からの強い要望で清掃を担当しているなど、元気に長期間勤務する従業員もめずらしくない。同時に、非正規従業員の8割以上が65歳以上と年齢層が高く、自身や家族の健康に不安を抱えている従業員も少なくないのが現状だ。
そんな中、広島管財が抱えている大きな課題は「介護や治療と仕事の両立」だ。基本的には、個々人の事情に合わせた勤務時間や業務内容、勤務場所等の調整を行っている。各現場では、介護や治療で1カ月単位の休みが必要となるような緊急事態も発生する。このような場合、正規従業員を中心とする「臨時対応チーム」が対応する。時には臨時対応チームのメンバーに大きな負荷がかかり、業務のやりくりが難しい時もあるようで、今後の課題として会社での対応を検討しているという。
この他、介護や治療の両立をする制度として、病気になって休職を余儀なくされてしまった従業員に対して、回復の目途が立った時、復職ができるよう配慮するなどの対応をとっているそうだ。
2 自身の苦い経験を糧に実力主義を貫く社長の考えから、「努力が実る社風」を
広島管財では、年齢・性別・社歴等に関係なく、実力があれば評価、昇格させる方針がある。その背景には川妻社長の「特別視しない」姿勢がある。
川妻社長は前社長の退職を機に、平成17年に専業主婦から社長へ転身。総合ビルメンテナンス業界においては男性の経営者が多い中、4人の子育てをしながら社長として奮闘してきた。自身の主婦業経験を事業に生かすため、ハウスクリーニングや整理整頓収納、空き家対策を行う「Lapica事業部」を新しく創設する等、精力的に活躍している。
そんな川妻社長は、主婦業とは全く異なる環境で腐心した経験から、性別・年齢・社歴問わず、実力や成果を評価し、管理職に登用しているのだという。
平成26年に同社に転職した、事務管理部人事・総務の高木係長に話を伺うと、男女区別ない評価をされていると実感しているようで、
「前職では性別による仕事の制限を感じるといった苦い経験もありましたが、ここでは女性も『頑張っていい』と感じました。年齢、性別関係なく、頑張っていれば昇進できる。頑張れば評価されるという環境の中で働くことは、達成感も大きいですね」
と述べる。
3 異業種からの転職者を半年で新事業部のリーダーに抜擢。
今ではなくてはならない存在に
川妻社長を筆頭に、広島管財には活躍している女性が多くいる。
その中で、前職の経験を生かし、新規事業である「Lapica事業部」を立ち上げた、業務管理部LaPica・施設サービス課長、坂本さんにお話を伺った。
坂本さんが広島管財に入社したのは4年前。きっかけは、当時登録していた派遣会社からの紹介で、川妻社長と運命的な出会いをしたことだ。子育てをしながら社長業を務め、奮闘していた川妻社長の姿を見て、自身のこれまでの境遇と重なるところがあったという。
坂本さん自身、前々職で勤めていた貴金属関係の会社がバブル崩壊時に倒産した後、自身で同種の会社を立ち上げ、子育てと両立しながら社長業を務めていたが、そちらもリーマンショックの煽りを受けて廃業となったという。
派遣会社を通じて新たな出発をしようとしていた矢先、採用面接で川妻社長と出会い、その当時設立を模索していた「LaPica事業」に懸ける「女性を応援していきたい」という強い想い(※1)に共感し、入社を決めたという。
入社後はLaPica事業部の立ち上げを任され、まずは3カ年の事業計画の策定に当たった。そのために、同業他社からの情報収集や市場調査も意欲的に行った。
ハウスクリーニングが主力サービスであることから、自身の子育て、主婦経験が大いに役立ったという。気づけば半年で同事業部のリーダーとなり、その1年後には同事業部のマネージャーに、そして入社から3年後には同事業部が属する業務管理部の課長に就任していた。マネージャーへの昇進と共に施設サービス(寮管理)の責任者も兼務し、業務範囲は拡大している。
新規事業である「LaPica事業部」では計画通りに進まないこともあったというが、「女性の力」には手応えを感じているという坂本さん。
「女性ならではの柔軟さ、多面的に見ることのできる能力は、今後、私たちの会社の成長に欠かせない要素です。会社だけに留まらず、これから日本が世界の中で生き残っていく上でも重要な力だと感じています。そのためには、女性がもっと社会で真に活躍する必要があると思います。『自分がどう生きたいか』という理想像を各自が掲げ、それに向かって行動することが大切です」
と熱く語る。
業務管理部の課長となった今、社内の業務改革にも「女性の力」を取り入れていきたいと考えているといい、現在男性中心で業務を行っている、警備、設備といった分野においても、今後は女性を配置、兼任させる等、男性・女性の両方の強みを生かした新たなサービスの展開ができるのではと考えているそうだ。
前々職で貴金属関係の会社に勤め、次に会社経営者となった坂本さんにとって、広島管財での仕事は人生における3rdステージにあたるだろう。1st、2ndの経験は、この3rdステージに立つためにあったといえるぐらい、現在の仕事にはやりがいを感じているという。
「川妻社長と共に、今、会社が大きく変わろうとしています。そういったパラダイム期の中で自分が働いている、ともに歩んでいることを大変楽しく感じます。昔は、子供の成長が自身の成長でした。子供が自立した今、会社の成長と共に、自分自身が成長していると感じています。社長や取締役をはじめとする素晴らしい方々との出会いが、自分自身の人生を豊かにしています」。
坂本さんの成長と共に、「LaPica事業部」も大きく歩み始めたところだ。
川妻社長を筆頭に、勢いのある女性の活躍が今後の広島管財の未来を明るく照らす。
坂本さんのキャリアヒストリー
2014年
広島管財に入社。LaPica事業部に配属され、3カ年の事業計画策定に携わる。
半年後には、同事業部のリーダーに昇進。
2015年
同事業部兼施設サービス事業部のマネージャーに昇進。
2017年~現在
社内の組織再編により、これまで社長直轄であったLapica兼施設サービス事業部が、業務管理部内に組み込まれる。
それを機に、業務管理部Lapica・施設サービスの課長に昇進。
女性の目線を生かした新しいビルメンテナンス業サービスを展開しようと現在、模索中。
※1 LaPica事業部では、「専業主婦経験が生かせるように」と地元の子育てが一段落した女性を積極的に雇用することで、女性の社会進出を手助けしている。
取材担当者からの一言
広島管財の女性活躍推進の原動力は、川妻社長のリーダーシップにある。
自身の主婦業の経験から、女性が活躍できる新たな事業を立ち上げ、経験が乏しいながらも経営者に転身した体験から、年齢、性別等に関係なく、従業員をフラットに評価して温かく見守る。坂本さんのように、前職で培われた経験・能力は業種関係なく発揮することができるため、事業の立ち上げを任せたのだろう。
また、女性の活躍のみならず、広島管財では高齢者の積極登用も他社に先駆けて行っている。清掃や警備など、高齢者が活躍しやすい業種という特性もあり、最高齢では85歳の従業員もいるというから驚きだ。
少子高齢化による労働力不足のため「シニア人材」の活用が叫ばれている中、広島管財はその分野の先駆者といえるが、今回の取材を通して高齢者雇用の課題も見えた。介護や治療と仕事の両立支援制度の設計・整備、急な休みに対してカバーできる人材の確保・負担減等、高齢者だけでなく、すべての従業員がいきいきと仕事が続けられる職場環境づくりが今後どの企業にも求められるだろう。
●取材日 2018年1月
●取材ご対応者
業務管理部 LaPica・施設サービス 課長 坂本 真紀 氏
事務管理部 人事・総務 係長 高木 沙織 氏
会社概要
広島管財株式会社
所在地:広島市中区大手町5-7-17
URL:https://hr-kanzai.co.jp/
業務内容:広島管財株式会社は、清掃・設備・警備といったビルメンテナンス業務から個人宅でのハウスクリーニング、寮管理までを行う「総合ビルメンテナンス業」を展開。環境衛生を徹底し、ビルの利用者に快適で衛生的な環境を提供し続けている。
従業員数:275名
女性従業員比率:53.5%
女性管理職比率:33.3%
(2018年2月現在)
情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com)