従業員満足度調査をベースに、
従業員の幸せを実現できる働き方を追求
NSウエスト株式会社
取り組んだ背景は?
~理念の実現を目指して、取組開始
ものづくりの高い技術を生かして、自動車表示機器(メーターおよびヘッド・アップ・ディスプレイ)の開発・製造・販売を行っている同社。現在は、本社のある庄原市と三次市、そして営業・開発の拠点として広島の計3カ所で事業を行っている。
経営理念である「お客様に感動と安心を提供し、社員の幸せの実現と地域社会に貢献すること」を目指し、2014年から経理管理部総務グループが中心となって、働き方改革に取り組みはじめた。
取組導入のプロセス
~無記名で集めた従業員の声に、誠意をもって応える
「働き方を含む会社の制度や要望について、従業員から吸い上げる仕組みがなく、なかなか意見が上がってきませんでした。そこで、14年から全従業員を対象とした従業員満足度調査を開始しました」と取締役経営管理担当の伊藤一志氏は語る。
この調査は、毎年1回、全従業員が無記名で60項目にも及ぶ質問を5段階で評価する。初回の調査結果では、「有給休暇が取りにくい」「各種設備が古い、壊れている」「時間外労働が多い」といった従業員からの意見が出てきた。会社側は、この調査結果をもとに改善策を検討。その検討結果を従業員に公表しながら、取組を行っている。
これにより、従業員からは「会社は、ただ意見を集めるだけではなく、きちんと誠意をもって改善に取り組んでくれる」と捉えてもらえるようになり、会社の取組に対する期待度も上がっているという。
主な取組と工夫点
~従業員からの声をもとに、各種制度整備と実践
◆計画有給休暇制度の導入で、取得を促進
「有給休暇が取りづらい」といった従業員の意見を踏まえ、全従業員を対象とした年間8日の計画有給休暇制度を導入した。事前に有給休暇の予定を決めて、計画的に休んでもらうことで、全体の業務計画も立てやすくなり、製造シフトへの影響を最小限に抑えることができる。会社として有給休暇の取得を制度化したことで、従業員の休暇取得に対する「遠慮」の意識が薄れてきたという。
さらに、勤続年数に応じたリフレッシュ休暇制度も導入した。積極的な取得を勧めることでモチベーションの向上を図り、社内の雰囲気もより良い方向へ変わりつつある。こうした取組の結果、1人当たりの有給休暇の取得日数は、14年からは10日前後を維持している。
◆従業員目線の意見を吸い上げる「Open Café Project」
17年から、従業員満足度の向上を目的に始めたのが、Open Café Projectである。経営管理部が旗振り役となり、選抜された庄原・三次・広島の各拠点の従業員がプロジェクトメンバーとして参加し、働きやすい職場づくりなどについて意見交換を行う。さらにこのメンバーが中心となり、各拠点の従業員へのヒアリングで意見を集約し、それを経営管理部が取りまとめて会社(経営層)へ提言している。会社は、その提言に対して迅速に検討を行い、改善に努めているという。
「会社側は出てきた提言に回答する前に、必ずプロジェクトチームに素案を提示し、提言の狙いや認識に対する食い違いが生まれていないかを念入りに確認します」と経営管理部総務グループアシスタントマネージャーの横田氏は語る。
会社がきちんと対応を考えて回答することで、従業員は会社側のやる気と誠意を感じているという。このプロジェクトから、ロボット掃除機の導入や、新工場への社有車の新規設置などが実現している。
◆正社員への登用制度の実施
これまで段階的に実施していた、非正規社員の正社員への登用。従業員の満足度を上げるためにも、優秀な人材を正社員として登用し、キャリアを積み重ねてもらうことは、会社側にとってもプラスになると判断して導入している。従業員のモチベーションが向上するとともに、人材の確保と技術力の向上が進むなど、お互いに良い面をもたらすことを期待している。
取組の中での課題
「働き方改革への取組の中で、従業員が利用できる制度をあらためて周知したことが、制度の利用促進につながったのは間違いないと思います。しかし、その制度を利用することに抵抗を感じる人も、まだ少なからずいます。残業や有給休暇に関しても、さまざまな考えを持つ人がいます。有給休暇を取得する事より、むしろ仕事に生きがい、モチベーションを感じる人もいます。働き方改革への取組について、従業員全体に理解し、行動してもらうのかが課題です」と、伊藤氏は語る。
取組の成果
従業員満足度調査の結果では、14年から進めている取組に対する評価が年々高くなっており、成果にもつながっている。
◆労働時間
・一人当たりの所定外労働時間(月平均)が約28時間(13年)から約18時間(17年)に減少
◆非正規雇用から正社員への登用実績(直近3年間)
・非正規社員から正社員への登用者は42名
従業員からの評価
「有給休暇を取りやすくなりました。育児で短時間勤務制度を使う人もいて、自分に合った制度をうまく活用する人が増えています」と経営管理部総務グループの早川さん。
上司が率先して制度の利用を促すことで、社内の雰囲気が変わり、取得する人も増えている。一つの流れができたことで、会社側にも従業員側にも良い循環が生まれているという。
今後の課題や目標など
「子育て世代や、親の介護など、有給休暇の取得促進だけでは解決できない課題があります。それらに対応するには、リモートワークを含めて、働き方そのものを多様化する必要性があるのではと考えています」と伊藤氏。
時代に合わせた働き方を導入しつつ、その働き方についても会社側が無理に押し付けるのではなく、あくまで従業員が選べるものにできれば、お互いのメリットが生まれるという。そして、このような働き方改革を目指した取組が、経営理念にある「社員の幸せの実現と地域社会に貢献」につながり、従業員を雇用する際にも、大きなアピールポイントになると期待している。
取財日 2019年2月
会社概要
NSウエスト株式会社
所在地:庄原市新庄町366-2
URL:http://www.nswest.co.jp/
事業内容:自動車用表示機器類の開発・設計・製造・販売
従業員数:331名(男性275名、女性56名)
(2019年2月現在)
情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com)