従業員全員参加の3S活動を通じて、
業務の効率化に取り組み、残業を大幅削減

有限会社中国金型

取り組んだ背景は?
 ~三原3Sネットワークの設立が大きな転機に

 「製造業の常として、仕事量の繁閑があり、忙しい時には長時間残業が当たり前の時代がありました。しかし集中力が続くのは8時間程度。集中力を欠く中では不良品の発注につながり、さらに対応するために残業をするという悪循環に陥ることもありました。10年ほど前、従業員から『仕事のめりはりを付けるためにノー残業デーをつくってほしい』という提案があり、その頃から意識的に残業を減らす努力を始めました」と代表取締役の土居脇万弘氏。同じ時期に、休暇取得促進を目的に半日有給休暇制度も導入した。

 環境改善の大きな転機になったのが、三原・福山地区の製造業9社が集まって5年前に設立した「三原3Sネットワーク」への参加だ。年に数度の持ち回りで、各社で開かれる勉強会や工場見学に、従業員数名が交代で参加し、3S(整理・整頓・清潔)を学ぶ。他社の事例を参考に、社内の3S活動を積極的に進めることで、生産性の向上や職場環境の改善につなげていった。

主な取組と工夫点
 ~環境を“整理する”ことで、無駄を徹底的に削減

◆形跡管理の徹底により、作業効率が大幅に向上
 3S活動の中でも、特に注力したのが形跡管理。工具や機械類のあるべき位置を定めて、そこに必ず戻すことを徹底した。壁や棚、引き出しなどにそれぞれの定位置を標識等で示し、名称を貼った。
「以前は物がばらばらに置いてあったので、探す時間がすごくかかっていました。今では一目瞭然ですので、作業効率が大幅に向上し、探すストレスも減りました」と土居脇氏。
細かな道具を入れる容器は透明にして、外からすぐに確認できるようにしたり、引き出しの下に色紙を敷くことで道具を目立たせたりと、随所に工夫を凝らしている。こうした工夫は、入社したばかりの従業員が作業環境になれることでも一役買うという。さらに、工具の保管場所への導線も確認した。作業場から工具を取りに行く歩数を1歩1円でカウントし、効果を費用に置き換えて見える化。必要な時は保管場所を変えるなど導線の短縮を図り、無駄を削減してきた。小さなことでも毎日の積み重ねで考えれば、効果は大きいという。

◆月に一度の土曜日出勤を環境整備と教育訓練の時間に設定
 月に一度の土曜日出勤は、環境整備と教育訓練の時間に設定した。1日をフルに使って、日常的にはできない大掛かりな整理整頓や清掃と、技術指導を含めた教育訓練を行っている。教育訓練では、先輩従業員が講師となり、例えばドリルの研ぎ方や六面加工といった技術を若手従業員に伝承している。
「昔のように見て覚えるというやり方では、若い人は育ちません。じっくりと時間をかけて、実践してもらいながら教えていきます。そのために月に一度、その時間を確保しているのです」と、土居脇氏はその意図を話す。

◆「スキルマップ」を作成し、教育訓練に活用
 2018年から、自己申告でのスキルマップを作成している。自身の技能について、「指導ができる」「自分はできる」「聞きながらできる」「ちょっとできる」「できない」の5段階で採点するとともに、玉掛けやクレーン免許、フォークリフト免許といった業務に必要な資格取得状況を一覧表にし、工場内の掲示板に張り出している。このスキルマップをもとに、教育訓練を実施。社内の先輩が教えたり、機械メーカーによるスクールに参加したりと、常にスキルアップを図っている。
「今後、さらに新しいスキルマップを作成予定です。今の自己申告だけでなく、上司の評価も加えたもので、そこに隔たりがあれば、指導することも考えています」と土居脇氏。

◆めりはりを付けて働き、ノー残業デーを順守
 毎週水曜日と出勤日となる土曜日を、ノー残業デーに設定。
「みんな割り切って、定時に帰っています。以前はなんとなく残業をしていることも多かったのですが、めりはりを付けて働くことで、集中力が上がり、不良品の発生も少なくなりました」と、土居脇氏は効果を実感している。
 残業の際には、申請書を所属長に提出するルールにしている。所属長は仕事の流れを見て、過度の残業にならないように指導を行う。例えば、残業になった翌日は早く帰らせるなど、月単位のスパンで残業時間や業務量を調整している。

◆月1回のランチミーティングでコミュニケーション
 月に一度、従業員全員が一緒に昼食を食べながらコミュニケーションを図っている。昼食後の流れで、3Sグループの3班ごとに、今後の活動日や活動内容について打ち合わせを行う。3班には、形跡管理グループ、清掃グループ、改善グループがあり、各自の希望による部署横断的なメンバーで構成されている。
「お弁当は会社負担で、ちょっと豪勢なものを取り寄せて、楽しいイベントという雰囲気を大切にしています」と土居脇氏。
日頃はなかなかできないプライベートな話もでき、新入社員が打ち解ける場にもなっているという。

取組の成果

 3S活動の効果が顕著に出て、残業時間は16年度と比較して、17年度には約54%に半減できたという。
「これまで、いかに効率が悪かったかということです。現在は3S活動が軌道に乗ってきましたので、継続して努力を続けたいと考えています」と土居脇氏。

◆労働時間・休暇(直近1年間)
・常用雇用者の総実労働時間(1カ月平均)が184.2時間
・常用雇用者の年次有給休暇の平均取得率が53.7%、平均取得日数は9.2日

従業員からの評価

 「2人の子どもがいますので、半日有給休暇を取って病院に連れて行ったり、学校の行事に参加したりしています。最近は残業も減りましたし、有給休暇も多く取れて、妻から助かると言われています」と、機2班 班長の遠藤さんは喜ぶ。
「今年から3S活動の委員長になりましたので、現場の無駄をなくし時間を短縮して、少しでも会社に貢献できるようにがんばりたいです。3S活動を続けることが業績アップにもつながると信じています」と続ける。

今後の目標など

 有給休暇は以前から取りやすい会社だが、今後も取得率の向上を目指し、3S活動も改善を図りながら引き続き実施していく。

「残業を大幅に削減できたポイントは、全員で取り組んでいることです。三原3Sネットワークの勉強会で、他の会社を見に行けば刺激を受けますし、他の会社が見に来るとなると、負けたくないと皆でがんばります。同じ地域の同業社ですから、あそこよりきれいにしたいとか工夫したいとか、競争心をかき立てながら、全員で一緒に継続して取り組んでいることが、成果につながっていると思います。定時で帰って、売り上げも確保できて、従業員の皆さんにちょっといい給料が払える会社になりたいです。そのためには、今後も整理・整頓・掃除とスキルアップが欠かせません。さらに、多能工化に向けての努力と、新入社員の教育も引き続き必要だと考えています」と、土居脇氏は締めくくった。

取材日 2019年2月

会社概要

有限会社中国金型
所在地:竹原市吉名町992-7
事業内容:精密機械部品加工
従業員数:15名(男性12名、女性3名)
(2018年7現在)

情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com