チョルノービリ原発廃炉に寄与
独グループ会社が放射性廃棄物の回収・処理施設
株式会社ムロオシステムズ
ムロオシステムズ(呉市発祥で東京本社、潘忠信社長)グループ会社で原子力発電所の廃炉関連事業などを手掛けるNUKEMテクノロジーズエンジニアリングサービス(ドイツ)は、チョルノービリ原発(ウクライナ)敷地内で放射性廃棄物を回収・処理する施設の正式運用開始が承認された。原発の解体撤去や廃棄物の処理処分などには何十年もの期間が必要で、1986年に事故の起きた同原発も作業が進行中。同社は同処理施設の設計・建設や試運転、スタッフ研修などを包括的に担っており、実際の放射性廃棄物を用いた試験運用などを無事に完了した。
欧州連合の資金支援の下、G7とウクライナ政府の合意に基づき整備され、長年にわたり安全基準の確立や施設の耐久性評価、環境への影響を最小限に抑えるための技術革新が随時導入されてきたという。同施設の構成は▽中間貯蔵施設=発電所から排出される放射性廃棄物を一時的に保管し、最適な処理方法を選択する役割がある。▽既存貯蔵施設からの廃棄物回収施設=過去の廃棄物を安全に回収し、最新の処理技術を適用することで放射線リスクの低減を図る。▽廃棄物処理施設=焼却、圧縮、セメント固化などの処理技術を組み合わせ、長期的な安全管理を可能にする。▽低・中レベル短寿命廃棄物用の貯蔵施設=廃棄物を適切に分類し、長期貯蔵することで周辺環境への影響を最小限に抑える。
廃炉プロセスがさらに進み、放射性廃棄物の管理がより効率的で安全に行われると期待されている。周辺環境へのリスク低減も図られ、地域住民や環境に配慮した廃棄物管理の実現に寄与したいとする。
原発エンジニアリング企業のNUKEMは60年に設立し、廃止措置(廃炉)技術などで世界的に高い評価を受けている。2022年のウクライナ情勢の悪化前には100億円前後を売り上げたが、地政学的な問題によって欧州などで新規事業の進行が停止。ムロオシステムズは100%出資の現地法人が中央アジアのキルギス共和国で水力発電に参入するなどエネルギー分野にも力を入れており、破産管財人との交渉やドイツ政府の認可を経て24年9月に同社を買収した。グループの持つ技術力と国際的なネットワークを生かし、事業の積極展開を狙う。
トルクメニスタン政府と覚書
エネルギー分野で戦略的協力
ムロオシステムズは4月15日、トルクメニスタンのエネルギー省と「エネルギー分野における戦略的協力に関する覚書」を結んだ。同国は豊富な天然ガス資源を使った発電の供給量が既に国内需要を上回り、余剰電力の有効活用や産業創出が重要な課題となっている。詳細はこれからだが、同社は情報通信分野で培った強みを生かし、余剰エネルギーを活用できるような仕組みの共同開発や技術協力を含む包括的な連携に取り組む。
同社の25年3月期単独売上高は貿易プラットフォーマー事業などが伸長し、過去最高の21億8785万円(前年比約4%増)を見込む。ブロックチェーン技術採用の分散型計算センター(データセンター)運営といった非連結の海外事業を含めると約57億円。
「広島経済レポート」2025年5月15日号掲載記事より