広島お好み焼きの礎築く
伝統の味守り、全国の定番へ
株式会社ISEひろしま育ち
大手のノウハウ学ぶ新業態にも挑戦
お好み焼き「みっちゃん総本店 井畝満夫の店」の屋号で、県内5店、FCで広島と東京に3店を展開する。1950年に満夫さんの父・井三男(いさお)さんが広島市中区の中央通りに屋台を開いて以来、〝広島のソウルフード〟を守り続ける
今の原型をつくる
広島のお好み焼きのルーツは、水に溶いた小麦粉にネギなど乗せて焼いた「一銭洋食」だ。病弱だった井三男さんの代わりに店を切り盛りした満夫さんが戦後、市民の空腹を満たしたいと安価なキャベツやモヤシを入れ、焼きそばの上に生地を乗せる現在の原型を考案。初めてメニューとして提供したという。
当時一般的だったウスターソースは生地にしみ込んで口当たりを損ねると考え、ウスターソースを作る過程で廃棄される沈殿物に片栗粉を入れてとろみを付けたソースも発案。改良を重ね、現在のソースに定着させた
伝統の味を継承
各店舗で調理を担う焼き手は社内研修を終えた社員が担当する。生地の伸ばしから具材の焼き、生地と麺を重ねて形を整える仕上げなど、「毎日でも食べられる、あっさりと飽きのこない味」を追求。営業日ごとに味にばらつきが出ないように複数人で生地の伸ばし、焼き、仕上げの工程を分担して調理する手法を採 用し、1枚しか焼かない場合でも徹底している。最低5年の修行を重ね、定期的に味の質を確認するなど余念がない。伝統の味の継承に向けて2021年(令和3年)3月3日、満夫氏の1番弟子の上川学常務が二代目・井畝満夫を襲名した
お好み焼きを全国の定番に
広島に来る機会ない人にも本場の味を楽しんでほしいと、20数年前に冷凍・冷蔵お好み焼きの製造販売をスタート。県外の大手百貨店やスーパーなどから引き合いが増え、生産体制強化に向けて15年に本社兼工場を西区中広町から新築移転した。5㍍長の電気式鉄板を4台置いて手焼きする。鉄板はエリアごとに温度を調整し、店舗同様、焼きや仕上げなどの生産過程を個別化。素材の細胞を破壊しない瞬間冷凍機を導入し、食べる際に電子レンジで再加熱しても焼きたてのような味わいや香りを楽しめるようにしている。コロナ禍の巣ごもり需要を取り込み、販売が好調に推移する。全国メディアでも取り上げられ、21年はコロナ前の19年に比べて30%増の年20万枚を売り上げた。増産に向けた新たな設備投資も計画している。
19、21年には東京にFC店を出店。首都圏での認知度向上を目指す
すし居酒屋に挑戦
22年1月自動車ディーラーの広島マツダに全株式を譲渡し傘下に入った。車販を軸に、飲食や宿泊事業に事業領域を広げており、相乗効果を狙う。6月には回転ずし大手の「スシロー」グループにFC加盟し、中四国地方で初出店となるすし居酒屋「鮨 酒 肴 杉玉うらぶくろ」を中区袋町に開いた。
同社は、「本業のさらなる飛躍には仕入れや商品開発力、組織的な店舗運営など、全国大手のさまざまなノウハウを学ぶ必要があると考えました。全国展開を見据えた新たなFCブランドも構想しています。県民と一緒に育ててきた広島のソウルフードのさらなる発展に向け、今後もさまざまなチャレンジを続けます」と意気込む。
会社概要
株式会社ISE広島育ち
本 社:広島市佐伯区石内北5丁目3-13
設 立:1981年1月(創業1950年)
資 本 金:1200万円
売 上 高:8億円
従業員数:150人(パート、アルバイト含む)
事業内容:飲食店の経営/食料、日用雑貨品、土産品の企画、製造、販売/フランチャイズシステムによる加盟店の募集/加盟店の経営指導/飲食店の企画、管理、経営コンサルタント/飲食店の経営、従業員の教育、訓練/イベントの企画、制作、運営
T E L:082-208-1968
U R L:https://www.okonomi.co.jp/
※2022年8月当時の情報です。