少人数だからこそ多様な人材に
フィットした環境づくりに成功
ミリアグループ株式会社
1.小規模ならではの取組で男女共に働きやすい環境を実現。
一つ一つの積み重ねで″くるみん″にも認定
ミリアグループ株式会社(以下、ミリアグループ)は、従業員14名中9名が女性であり、うち4名が課長相当職の管理職を担っている。女性従業員は、事務職・営業職・開発職と満遍なく配置されている。
今回話を聞いた、常務取締役兼技術開発部部長の山根由裕氏はこう話す。
「代表取締役の沼田は、学生時代アメリカへ留学しており、若い頃からジェンダーフリーで、先進的な考えをもっています。それもあってか、会社設立当時から『仕事ばかりしていても良いものは生まれない。私生活こそ大切にしよう』『しっかりと休暇を取ることで、周りにアンテナを張り、良い仕事へつなげよう』『男女関係なく家事に参加しよう』といった価値観を持っています。弊社は従業員数が多くないため、従業員が一人でも欠けてしまうとチーム内で仕事が回らなくなることもあります。それもあり、働きやすい環境づくりは常に意識し、従業員一人一人に満足してもらえる職場環境を目指しています」。
ミリアグループにおける、従業員の両立支援や、男女ともに働きやすい環境づくりのための取組の指標として、子育てサポート企業「くるみん」の認定がある。(図1参照)
2005年4月に施行された「次世代育成支援対策推進法」により、企業は労働者の仕事と子育てに関する「一般事業主行動計画」を策定することとなった。常時雇用労働者が101人以上の企業は、行動計画を策定し、都道府県労働局に届け出ることが義務付けられたが、さらに行動計画に定めた目標を達成するなどの一定の基準を満たした企業は、厚生労働大臣による〝くるみん認定″を受けることができ、広島県は現在62件(※1)の企業がくるみん認定企業となっている。
ミリアグループは従業員数が少ないながら、13年12月から行動計画に定めた目標に向けた対策を実行し始め、16年に子育てサポート企業「くるみん」に認定された。
図1 ミリアグループが認定を受ける対象となった一般事業主行動計画
くるみんの取得にあたり、ミリアグループは育児・介護休業・育児介護短時間勤務に関する規程の見直しを行った。従来は法制度同様、3歳未満(2歳11カ月)の子供を養育する従業員のみ利用が可能だった育児短時間勤務を、小学校就学前の子を養育する従業員まで対象範囲を広げ、これまで2名の従業員が短時間勤務を取得してきた。
また、沼田代表取締役の後押しにより、13年には社内初となる「男性従業員の育児休業取得」が実現した。育児休業を取得したことにより、育児や家事についての苦労や楽しさが理解できたという。今もなお「イクメン」として、積極的に二児の子育てと仕事との両立をしているそうだ。
厚生労働省の調査によると(図2参照)、女性の育児休業取得率は07年から8割台で推移している一方で、男性は上昇傾向にあるものの、依然として5%程度と低水準であることが分かる(※2)。男女共に育児休業取得の阻害要因となっているのは「育児休業を取得しづらい職場の雰囲気」という回答割合が高いといった結果もある(※3)ように、「職場の雰囲気」は男性が育児休業を取得する上での、重要なポイントの一つであるようだ。
図2 男女別、育児休業取得率の推移
また、沼田代表取締役は特に残業に厳しく、10年以上前から「残業はだめ」と従業員に口を酸っぱくして伝えてきたそうだ。上司が率先し、定時退社を根気よく続けてきた結果、繁忙期である夏以外は定時で帰宅する風土になっているそうだ。さらに、人数が少ないながらも有給休暇を取りやすくするための仕組みとして、3人一組のチームでお客様対応をする体制をとっている。
このようにミリアグループは、トップのリーダーシップのもと「働きやすい環境」への具体的な行動計画を立て施策を行ったことで、職場環境を整えることができた。
※1 出典:厚生労働省広島労働局管内くるみんマーク認定企業名一覧参考
広島県のくるみん認定決定件数(複数回認定を含む)平成30年6月29日現在
※2 出典:平成29年度厚生労働省「雇用均等基本調査」
※3 出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング
「平成27年度 仕事と家庭の両立に関する実態把握のための調査」
2.上司に気軽に相談できる環境で管理職への昇進、不安も払拭
新卒でミリアグループへ入社し、営業本部アシスタントマネージャー、新卒採用担当者として活躍する政木さんに話を聞いた。県外の大学を卒業後、地元である広島の企業で営業事務として働きたいと思い、同社に入社。入社後は営業担当者の外回りのサポートや、工場との生産調整といった営業事務を担当すると同時に、新卒採用担当にも任命された。政木さんは、
「最初は右も左も分からない状態でしたが〝やれるだけやってみよう″と思い、自分で調べて仕事を身に付けていきました。社歴が浅いうちに〝自ら行動した結果、成果へつながるやりがい″を知ることができ、自発的に仕事を行う習慣ができたように思います」と話す。
「従業員が少なく、担当者が自分しかいない、という環境なので、同じミスを繰り返さない、無駄な業務を増やさないよう気を付けています。発生したミスは『なぜ?』を繰り返し、根本的な原因を考える習慣がつきました」と、政木さんは話す。
また、採用活動では、相手の表情や答え方を見て、できるだけ本心に寄り添えるよう心掛けているという。従業員から「政木さんの採用した人は、素敵な人が多いね」と褒められると、売り手市場で苦労が多い中、やりがいを感じるのだそうだ。
沼田代表取締役の勧めもあり、17年に管理職へチャレンジしたという政木さんはこう話す。
「管理職になる前、不安は全くありませんでした。入社からずっと営業事務と新卒採用担当を行っていたので、この業務のことであれば自信もついていました。何より業務の中で不安や課題があっても、代表取締役をはじめ、周囲に相談できる雰囲気なので、‶やってみよう″と自然と思えました」。
今後は、社内のシステム化・ペーパーレス化を進め、業務の効率化を図るとともにお客様への対応をより一層スムーズにしていきたいそうだ。
このようにミリアグループでは、男女区別なく若手の頃から仕事を任せられるため、力が付いた従業員が自然と管理職へと登用されている。
3.外国人労働者を採用し、さらなる人材の多様化にチャレンジ
関連会社である株式会社コトブキは、佐伯区湯来町に製造工場があるが、近年は人員の採用がなかなかできずにいた。しかし、今年度はベトナムとミャンマーの国籍を持つ外国人労働者2名を採用することができた。
山根常務取締役は、
「日本製の健康食品や化粧品の東南アジアでの人気が高まり、お客様が増えているという背景もあり、将来、製造部門の幹部として活躍してもらうため、日本に留学していた外国籍の2名を採用しました」と話す。ビザの取得や言葉の壁による認識の齟齬などで苦戦しながらも、試行錯誤して人材育成にチャレンジ中なのだそうだ。女性活躍はすでに当たり前のものとなっている同社では、人材の多様化への新たなステージに進んでいる。
取材担当者からの一言
ミリアグループは代表取締役のリーダーシップのもと、早くから「残業削減」の実施や、短期間で「くるみん」を取得するなど、男女共に働きやすい職場を整備してきた。女性管理職である政木さんから「会社から任されることがうれしい」という言葉が出たように、社歴が浅いうちから仕事を任せ、上層部との距離感が近い環境で、のびのびと育っている様子がうかがえた。
人材不足の中、労働力の確保として注目されるのが、「女性」「シニア」「外国人」である。現在、外国人労働者を雇用している事業所数及び外国人労働者の状況は、07年に届出が義務化されて以来、過去最高を更新(※4)しているものの、東京・愛知・大阪・神戸・埼玉の5都府県で全体の半数を超えている。広島県の外国人労働者数は日本全体の2.2%(※4)と、まだまだ雇い入れが少ない状況にある。ミリアグループでも、外国人労働者の雇い入れを始めたばかりで、試行錯誤の連続と苦笑いするが、失敗を恐れず様々な取組にチャレンジする会社の意欲がうかがえた。
※4 出典:厚生労働省(平成29年10月末現在)「外国人雇用状況」の届出状況まとめ
●取材日 2018年9月
●取材ご対応者
リアグループ株式会社
常務取締役 技術開発部部長 山根 由裕 氏
営業本部 営業支援 アシスタントマネージャー 政木 英子 氏
会社概要
ミリアグループ株式会社
所在地:広島市中区上幟町9-35
URL:http://www.myria.jp/
業務内容:バーモンド酢「アポロ」などの製造販売を行う株式会社コトブキの関連会社として、2006年に設立された。健康飲料・滋養飲料・美容飲料などの清涼飲料水や、健康食品の開発・製造、販売を行っている。
従業員数:14名
女性従業員比率:64.3%
女性管理職比率:50.0%
(2018年4月現在)
情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com)