男女どちらにも働きやすい環境を作ることで女性活躍推進に

株式会社フレスタ

1.女性の割合は高かったが、正社員の女性比率も年々高く

 株式会社フレスタ(以下、フレスタ)の女性従業員比率(従業員全体)は71.1%であり、女性の比率が高い企業である。しかし、その多くがパートタイマーやアルバイトといった非正規社員であり、正社員に限定すると女性の比率は低くなるが、
「20年前は8%ほどだった正社員に占める女性の割合は、現在21.9%にまで上昇してきました」
と、グループ人事総務部部長の渡辺裕治氏は話す。

図1 フレスタグループにおける従業員の男女比

 このように、管理職候補となる女性正社員の割合がじわじわと増加してきた要因である「女性正社員の就業継続」と、「正社員や管理職の登用などによる積極的な能力発揮」に向けた取組を中心に話を聞いた。

2.女性のための働きやすい施策は男性にとってのメリットにも

 「フレスタグループにおける過去3年間の新卒採用状況(表1)」にあるように、正社員の新卒採用段階では半数以上を女性が占める年が多いが、結婚や出産などのライフイベントを機に、女性が男性よりも多く離職するため、男女の定着に差が出るというのが、フレスタを含むスーパーマーケット業界の課題と言える。フレスタにおいても、男性正社員の平均勤続年数が15年7カ月であるのに対し、女性は10年7カ月と5年の開きがある(2018年8月現在)。

表1 フレスタグループにおける過去4年間の新卒採用状況

 そこで、離職率の低下のために07年からフレスタで取り組んだのが、全社員への人事面談だ。
「年に一度、人事にて全社員と面談することで、キャリアデザインや個人的な状況の把握ができます。また、相談できる体制を作ったことで、何の前触れもなく退職届を提出する社員が減少し、男・女正社員共に離職率が低下しました」。
渡辺部長自らが、全店舗を巡回し、面談しているそうだ。その他、正社員を対象として以下の「育児・介護サポート制度」を導入している。
「個々人の状況によりどの制度が有効かは異なります。その中でも『病児保育代金等支払い制度』に関しては、『子供の病気のために仕事を休む』という精神的な負担を軽減するとともに、現場の労働力不足を解消することにもなり、働き方改革にもつながったと考えています」。

表2 フレスタグループにおける主な育児・介護サポート制度

 「女性社員のために実施した施策が、男性社員にもメリットがあることが多くあります。女性を対象にした部分に対して、会社で配慮する姿勢を見せることが重要であり、さらに組織になじませて初めて効果が出てくるものだと考えています」
と渡辺部長が話す通り、勤務地を自宅付近等に限定して働ける地域限定勤務制度は、男性正社員も利用するそうだ。例えば、島しょ部にある店舗に勤務する男性社員は、地域の消防団活動の中心的役割を担っており、異動ができないため、地域限定としているなどだ。また、社内結婚後に夫婦で働き続けるために同制度を利用する場合もある。これらの施策の効果もあり、同社の正社員の平均勤続年数は、男女ともに10年間で約5年伸びた。

図2 フレスタグループにおける正社員の平均勤続年数(男女別)推移

3.20代のうちにキャリアアップをして管理職への道筋を

 もう一つの課題は、「正社員や管理職の登用などによる積極的な能力発揮」についてだ。まずは、正社員への登用についてだが、「スマイル社員」制度という、パートタイマーやアルバイトを対象とした職務能力制度を導入した。正社員主任職と同等の権限が付与される最上位の「スマイルチーフ」を設定し、正社員への登用が目指しやすくなり、毎年、3名程度が正社員に登用されているという。次に、女性管理職の登用についてだが、売り場の責任者(主任)レベルまでは女性の活躍が進んできた。マネージャーと、管理職(課長や店長以上)への登用となると、比較的少数ではあるが、近年微増している。

表3 フレスタグループにおける各職位の女性正社員数の推移

 「今の日本全体の平均出産年齢は約30歳なので、特に女性はそれまでにキャリアアップし、マネージャーになってほしいというのが、人事としての考えです。そして、子育てが一段落するなどしたら、さらに課長や店長を目指してほしい」
と渡辺部長は言う。店長となるためには、各自が強みとできる専門分野を持つとともに、店舗全体のマネジメント能力も必要だ。かつてはレジや日配(乳製品当の冷蔵商品、パンなど)を女性社員が担当し、水産や青果部門は男性社員といった固定的な役割分担があったそうだが、現在は多様な部門に女性社員を配置しているという。
「水産部門に女性社員を配置したら、多品種小ロットで商品を取り扱うようになり、お客様ニーズに合った売り場に変化するなど、多様な考えが入ると現場の改革が進むといった事例もあります。また、女性社員がさまざまな部門を経験することで、ステップアップにもつながりやすくなった」
と渡辺部長。このように配属や育成面においても男女区別なく行っている。

 しかし、一般的にスーパーの店長は、売り場や商品などの多様な判断、トラブルやクレーム処理などの事前に予期できぬ対応等が求められるため、精神的にもハードであり、時間的にも長く拘束されがちだ。このため、店長はスーパーマーケット業界で、特に女性社員に敬遠されがちな職となっているといえる。フレスタでは、店長とマネージャーの計2名体制で店舗のマネジメントを行ってきた。しかし、店長クラスの労働時間の削減策として、17年4月より「ストア・インプルーバー(SI)」と呼ぶ、マネージャーの補佐役を置く形へと各店舗で徐々に移行している。

 働き方改革により、これまでの仕事の進め方を見直すことにより、男女共に能力が発揮しやすい組織となれば、自然と女性店長や管理職も増えていくとフレスタは考える。現在フレスタグループ内の、唯一の女性店長である鹿林智子さんは、
「社内には優秀な女性社員がたくさんいます。もっと店長や管理職として活躍してほしいです」
と話す。店長会議などで、経験豊かな鹿林さんが意見を述べると、他の女性社員も刺激を受けるという。

 フレスタにおいて、16年に2名のみであった女性管理職は、19年には6名と増え、着々と女性活躍は進んでいる。ロールモデルが増えることで、さらに後進が増えていくことだろう。

取材担当者からの一言

 「卸売業・小売業」全体の課題として、女性従業員比率が51.7%(※1)と高いにもかかわらず、女性管理職比率が12.7%(※2)と低いことが挙げられる。フレスタでは、まずは第一段階として「女性正社員の就業継続」を実現させ、次の段階である「管理職の登用などによる積極的な能力発揮」のフェーズに入ってきた。女性の活躍推進を切り口にしてこれまでの仕事を見直し、働きやすい職場になることで、男女共に管理職として能力を発揮しやすくなるだろう。そして、ロールモデルとなる今の6名の女性管理職の方々が、やる気溢れる風を吹かせ、より加速させていくことを期待したい。

※1 出典:総務省統計局(2018年)「労働力調査 長期時系列データ 表5 第12・13回改定日本標準産業分類別就業者数」
※2 出典:厚生労働省(2018年)「平成30年度雇用均等基本調査 第8表 課長相当職以上(役員含む)に占める女性の割合」

●取材日 2019年11月
●取材ご対応者
グループ管理本部 グループ人事総務部 部長 兼 広報・危機管理対策担当 渡辺 裕治 氏
祇園店 店長 鹿林 智子 氏

会社概要

株式会社フレスタ
所在地:広島市西区横川町3-2-36
URL:http://www.fresta.co.jp/
業務内容:広島県を中心に岡山・山口で食品中心のスーパーマーケット全59店舗を展開している株式会社フレスタ。1887年の創業以来、「正直な商売」に徹した地域密着型の店舗運営を行う。多様なライフスタイルに合わせた幅広いサービス(関連会社)を展開し、近年では農業法人の運営や、海外展開を行っている。
従業員数:4,652名
女性従業員比率:71.1%
女性管理職比率:5.6%
(2019年10月現在)※人数や比率はフレスタグループ全体。

情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com