《サッカースタジアム建設始動》プロジェクトのキーマン3者に聞く③

広島経済レポート

24年2月開業、回遊性高めにぎわい創出

サンフレッチェ広島の新たな本拠地となるサッカースタジアムが2月1日、中区の中央公園広場で着工した。市はスタジアムの設計・施工事業者に大成建設など8社(フジタ、広成建設、東畑建築事務所、環境デザイン研究所、復建調査設計、あい設計、シーケィ・テック)で構成するJV(共同企業体)を選定。市、サンフレッチェ広島、大成建設の3者にコンセプトやプロジェクトにかける思いを聞いた。

回遊できるスタジアムパーク 全国のモデルケース目指す

大成建設 執行役員中国支店長吉野 雄一郎 氏
-スタジアム建設が始動しました。 国内で類を見ない中心市街地にある「街なかスタジアム」事業は、広島駅前や紙屋町・八丁堀一帯で進む再開発の要だと感じています。
スタジアム建設に対する市の基本的な考え方は、観戦環境の向上はもちろん、試合のない日も含めたにぎわい創出や365日の県民・市民の愛着を生み出す空間の実現です。09年に完成したカープの本拠地・マツダスタジアムの設計に携わった環境デザイン研究所などの心強いパートナーと共に案を練り、「開かれた回遊型スタジアムパーク」をイメージして四隅を空けた開放的な構造を採用。設計段階で東西を走る自由通路やスパイラル広場、だんだんテラスなど周辺の公園や広場と連続性のある動線づくりに力を入れました。加えて、Jリーグ興行に対する十分な知識と配慮、震度6強の地震にも耐える設計など、総合的な完成度の高さを評価していただけたのだと思います。
「平和都市ヒロシマ」を認識してもらえることも大切と考え、白い鳩がたたずむ姿を表現した白い屋根は「平和の翼」と名付け、「スタジアム自体から平和を発信していく」というメッセージを込めています。

-参考にした事例はありますか。

当社は建築・土木を主力に、近年は都市再開発にも力を入れています。21年の東京五輪のメイン会場となった新国立競技場もその一つ。設計・施工を当社が担い、日本を代表するランドマークにすべく、緑豊かな明治神宮外苑と調和するように木を多く用いたデザインを採用しました。こうした事例を広島にフィードバックします。

-周辺で進む再開発とどう連携しますか。

周辺の公園や広場と連続性のある動線づくりに注力。※画像提供:広島市 イメージパースは実際と異なる場合があります。
まちづくりの重要なポイントは「行き来する人が増える」ことです。中央公園一帯は紙屋町・八丁堀に隣接する中心部にありながらも、これまではなかなか人が集まる機会を主体的に生み出せていませんでした。同時に進む再開発と一体的に進めることで交流人口や実際に住む人が増え、まちそのものが活性化し、さらに先進的な街へと進化するでしょう。
大型ショッピングモールを訪れる人の心理から見て取れるように、昨今は一つの目的を達成するために目的地を訪れるという考え方が希薄になりつつあると感じます。実際に足を運んでみると、想定していた楽しみが一つだけでなく、二つも三つもある「複合の楽しみ」が地域の活性化には必要不可欠です。平和公園や広島城などの文化的な施設も含め、都心部に来たいと思えるメニューが増えることが「広島の力」になると考えます。

-竣工に向けて意気込みを教えてください。

県民・市民が注目する一大プロジェクトです。コロナ禍など難しい局面ですが、関係各社としっかりと連携して開業に向け、責任を持ってまとめ上げたい。
広島以外にも多くの自治体が地域の活性化に頭を悩ませています。このスタジアムが県民・市民から愛されるシンボルとなり、全国のモデルケースになればうれしい。

大成建設 執行役員中国支店長
吉野 雄一郎 氏 1963年2月1日生まれ、東京都出身。東京大学を卒業し、86年に入社。名古屋支店建築部長、建築総本部副本部長などを経て2020年6月から現職。モットーは「挑戦なくして成功なし」。

 

「広島経済レポート」2022年4月28日号掲載記事