あえてのショック療法で残業などの原因を浮き彫りに
不公平感の払拭で多様な人材を生かせる職場づくり
働き方改革優良事例18 株式会社フレスタ
ショック療法で問題点を可視化
パソコン自動オフで「残業組」少数派に
平成29年2月から終業時刻の午後6時に合わせて本部系の業務用パソコンを自動オフする仕組みを導入した。
残業する従業員はあらかじめ許可申請を出し、パソコンの上に掲示する「残業カード」を受け取る必要がある。強制的に仕事を終わらせることには「従業員の気付き」を促す狙いがある。
「掛け声だけでは、これまでの取組の延長線で、従業員の納得感は得られず、元の働き方に戻ってしまう」(渡辺裕治人事総務部長)。
強制的に仕事を終えるべき時刻を示すことで初めて「この仕事のやり方で良かったのか」という認識が生まれ、終業時刻から時間を逆算することで個々の従業員に「時間内でどう仕事を終わらせることができるか」を考えるきっかけを与えている。
定期的に残業している従業員の存在が可視化されるにようになったことで、残業発生の原因を検証し、仕事の割り振りの見直しや人員の補充など組織的な対応が必要か話し合う環境も整ったという。
残業削減による所得減を補う仕組みづくり
残業時間の削減策として打ち出したもう一つの戦略が「残業減による所得の減少分を補う仕組みの構築」だ。
過渡期の措置として、月平均の残業時間が20時間を下回った従業員を対象に削減幅に応じて最大20万円を上乗せする制度を導入、平成29年12月支給の賞与から適用する。
「取組が全社的に定着すれば、基本給のベースアップにより全体を上げる方式にシフトしたい」(渡辺部長)。
議論を顕在化させ、「現場の規範」を改革
「20時間を超える従業員に対しては残業時間を削減することを目標管理の項目とする」ことや「60時間を超えた従業員がいる部門の上長は賞与を1%減らす」といった方針も打ち出した。
あえて摩擦を起こすかのような方針を示した背景にあったのは、長時間労働の原因の一つに「現場の規範」にあるとの認識だった。店舗などの現場は「困ったときに、時間外を厭わず働いてくれる『無理がきく従業員』を高く評価する傾向が強い」(同)が、「会社としては長時間働くこと自体を評価することはできない」という考え方を明確にした。
渡辺部長はその狙いを「無理がきく従業員」の存在で見えにくかった長時間労働につながる現場の問題点を顕在化させ、「残業時間を減らすための対策を考える議論をテーブルの上に乗せること」と説明する。思惑通り、渡辺部長のもとには店長からの相談が集まり出し、組織として具体的な対応が打てる素地が整ってきたという。
公平な評価で多様な人材生かす
パートタイマーに職務能力評価制度
平成24年4月に「スマイル社員」と呼ぶパートタイマーやアルバイトを対象にした職務能力評価制度「新スマイル社員制度」を導入した。
「正社員とパート社員の違いは能力の違いではなく、勤務時間や勤務地域など働く上での条件の違いに過ぎない」(渡辺部長)との認識のもと、資格や職位呼称、役割を細かく整備。能力や意欲のある人に対しては次のステップに上がる階段を用意した一方、育児や介護などで就労できる条件に制約のある人にはそれに見合った働き方ができるように多様な選択肢も用意した。最上位の「スマイルチーフ」には正社員主任職と同等の権限が付与され、正社員への登用もより目指しやすくした。
公正で透明性の高い評価制度を導入することで、不公平感を払拭。人口減少社会の到来の中、働くモチベーションをアップし、少しでも長く働き続けてもらう環境を整える狙いもある。
仕事の仕組み見直し、組織で対応
補佐役置き、責任者の負担軽減
店長クラスの労働時間削減策として平成29年4月に導入したのが店長、マネジャーを補佐する役割を担う「ストア・インプルーバー(SI)」という職制だ。
店舗では管理監督者が店長、マネジャーの2人体制のため、休みの際のカバーなどで長時間労働を余儀なくされるという問題を抱えていた。昇格などで全店舗の管理監督者を3人にするのは難しいため、その間を埋める役割を担うSIの配置を決めたという。
SIの役割はミーティングで店長からの指示を伝えるなど、決められたルールを遂行する部分に限定。マネジメント機能は持たせず、管理監督者としての責任も負わない仕組みにすることで、スマイル社員や定年後の嘱託社員なども配置できるようにした。
会社概要
株式会社フレスタ
所在地:広島市西区横川町3-2-36
URL:http://www.fresta.co.jp/
事業内容:スーパーマーケット経営
従業員数:4,341人(2017年7月時点)
情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com)