《広島》変貌を遂げる広島市街地 再開発・大型プロジェクト その③
22年の地域経済③ 広島経済レポート
中区紙屋町・八丁堀地区の一帯で大型再開発の動きが活発だ。市営基町駐車場や本通商店街、サッカースタジアムを含む中央公園広場などで計画が相次ぐ。2018年に同地区は民間の再開発を促す国の「都市再生緊急整備地域」に指定された。20年9月にはその一部区域がより手厚い税制優遇などを受けられる「特定地域」に格上げされ、一層機運が高まっている。にぎわい創出や都市機能の拡充に向け、一帯はこれから大きく様変わりする。
【 ⑥ 新サッカースタジアム 】
中央公園広場の西側にはサンフレッチェ広島の本拠地となるサッカースタジアムを建設する。市は21年3月にスタジアムの設計・施工事業者に大成建設中国支店など8社で構成するJV(共同企業体)を選定。24年2月の完成を目指す。
公園広場8万5600平方㍍のうち、4万9900平方㍍に7階建て延べ6万平方㍍を建設。試合時に観客約3万人を収容できるようにする。四隅を大きく空けた開放的なデザインで、選手がプレーするフィールドと観客スタンドを近くして臨場感を高める。スタジアム内を一周するコンコースを設置。買い物をしながら観戦できるほか、試合のない日もランニングやスタジアムツアーコースに使えるようにする。市民が日常利用できる自由通路も整える計画。フィールドはサッカー以外にラグビーやスポーツ教室などにも活用してもらう。2、4階部分に設けるVIPラウンジやスカイボックスなどの席は、試合のない日に会議室やイベント用に貸し出す予定。
スタジアムを挟んで東西2カ所の広場エリアは21年8月、設計・整備事業者にNTT都市開発など10社の企業グループを選定。ランニングやフットサルが楽しめる「スポーツ&ウェルネス」、広島の文化などを発信する「広島カルチャー」など、広場を五つのゾーンに分ける。スタジアム東隣の芝生広場の回りにはカフェやスポーツショップなどを設置。西側にある本川沿いにはダイニングレストランや、バーベキュー用品などを貸し出すショップを設ける。同広場は24年7月に開業予定で、集客目標は年200万人。
中央図書館と映像文化ライブラリー、こども文化科学館内にあるこども図書館の3施設は、広島駅前の商業施設「エールエールA館」(南区)に25年度をめどに移転集約する。中央図書館の建物は築約50年と老朽化が進み、現在の耐震基準を満たしていないため取り壊す。跡地に質の高い文化芸術を鑑賞できるホールやコンベンション機能を有する文化芸術施設の整備を検討する。
こども文化科学館の建物は耐震改修し、移設したこども図書館跡に青少年センターが移る。青少年センターの建物は取り壊す方針。ファミリープールは中央公園外への移転や廃止などを検討している。
広島城の南西側にある三の丸には、刀や古文書など文化財の展示施設を建てる計画だ。有識者の意見を踏まえながら21年度内に基本計画案をまとめる。26年度の開館を目指す。民間資金を活用するパークPFIを使って飲食・物販施設や駐車場、観光バスの発着所、多目的広場も整備し、24年度に開業予定。南東側の中央バレーボール場は廃止する計画。
また、市は広島城天守閣の木造復元に向けて石垣の強度などの調査を進め、城の魅力向上につなげる。
「広島経済レポート」2022年新春号掲載記事