チーム単位で支え合う体制で休みやすく
子育て世代、男女が働きやすい職場づくり

デルタ工業株式会社

取り組んだ背景
 ~従業員の定着、働きやすさの実現に注力

 自動車用シートを開発・設計・製造する。府中町の本社、山口県の岩国市、防府市に工場があり、海外は中国やタイ、アメリカなど6カ国に拠点を構える。1953年の創業以来、従業員が働きやすい職場づくりに取り組み、特に2000年頃から大学卒の女性を積極的に雇用するようになり、従業員の定着や働きやすさの整備に一層力を入れるようになった。

 社内の労務分野を統括する総務部労務管理課に「労務相談室」を設け、労務に関する困りごとを気軽に相談できるようにしている。さまざまな労務上の課題を把握・分析し、経営者に意見を挙げて改善につなげる役割を担う同課課長の山口健司氏は
「社是に『常に和を尊び』という言葉があり、もともと個人よりもチームプレーを重視する社風があります。今で言う『働き方改革』に当たる改善活動を以前から地道に続けています」
と話す。

主な取組と工夫点

◆介護休業取得日数を上限365日に拡充
 ここ数年は介護休業制度の充実に取り組んできた。以前は法定の93日を上限としていたが、それを365日まで拡充し、さらに個々の状況に応じて分割して使えるようにした。山口氏は
「育児と異なり、介護は終わりが見えにくい。これまでに介護休業だけではなく有給休暇を使っても足りずに、欠勤で介護をした人もいました。本人の本意ではないのに介護のために貴重な人材を失うことは会社にとっても本人にとっても損失です。以前から何とかしたいと思っていました」
と、導入の経緯を話す。

◆子育て世代に優しい独自の育休制度
 女性従業員の増加に伴い、子育てを経験した従業員の声を集め、ニーズに沿った独自性のある育児休業制度を設けている。保育園待機児童問題に対応するため、14年からは保育園に入れるまで法定を超えて育休を取得できるようにした。さらに、児童館に預けた子供を迎えに行けるよう、子供が小学3年生まで時短で働ける制度も整備した。18年からは、妊娠・出産や不妊治療のほか、子どもの急な発熱時などで年間計40時間取得できる「特別時間公休」の制度も設けた。有休は1日または半日単位でしか使えないが、この時間公休は1時間単位のため使い勝手が良く、利用者は多いという。女性は当然のこと、男性の育休も増えており、
「技術部門で課長を務める男性が10年ほど前、1年間の育休を2回取得したことで、育休への意識が社内で変化。次第に男性も育休を取りやすくなっています」
と、山口氏。
 作業服の男女共通化によって社内意識も変化している。また、女性従業員の要望を受け、更衣室内に化粧直しができるパウダールームを設置した。

◆休暇取得促進のための体制・機運づくり
 有給休暇の取得促進のため6日間の計画有休を実施している。これは経営層からのトップダウンで取得を促し、管理職が毎月の取得状況を把握・フォローしている。さらに、個人単位ではなくチームで業務体制を組み、情報や技術の共有を図ることで、誰かに業務が集中することがないようにし、休みやすい環境づくりを進める。また、機運づくりのため2カ月に1度、社内報を発行し、社長メッセ―ジのほか新入社員紹介、社内イベントなどさまざまな情報を発信している。働き方改革に関連する新しい制度、取組や、制度利用者の声を積極的に載せ、従業員への共有、周知に生かしている。

◆独自の交流方法でチーム体制を円滑に
 チームで業務を円滑にこなすために、社内コミュニケーションにも力を入れている。例えば、5年ほど前から2~3カ月に1度のペースで行う「わくわくチャレンジ」では、専門の委員会がジェスチャーゲームなどさまざまなゲームを企画して、平日の昼休憩に各部署で挑戦してもらう。部署を越えて仕事以外の交流が生まれ、組織の活性化につながっている。また、バドミントン、フットサルなどスポーツイベントのほか、サッカーのテレビゲーム大会を社内で開いたことも。会社がチケットを確保したカープ観戦会や、社内バンドの演奏会なども定期的に開催している。

◆人材育成に注力、会社負担の語学研修や留学も
 資格取得や外部研修などの自己啓発を支援し、人材育成に力を入れている。若手育成の取組の1つとして語学研修も行う。社内にネイティブの講師を招き、上級者には就業時間中に、初心者には終業後に語学研修を会社の費用負担で開いている。海外にも拠点があるため、グローバルに活躍できる人材の育成に力を入れており、業務で英語を使う従業員だけではなく、プライベートで学びたい人の参加も多い。また、若手社員の海外留学制度も設けている。自薦他薦で毎年2~3人を留学させて、集中的に英語を学ぶ機会を提供する。

取組の中で苦労したこと
 ~業務のバックアップ体制で苦労も

 休暇制度など福利厚生が充実する一方で、製造部門では運用上の苦労もあったという。山口氏は
「ある部署で同時に2人が産休に入ることになり、シフトの見直しや体調への配慮などの対応が必要になったことがあった。これを機に、あらかじめ急に休みになった時の対応やシフト編成の工夫など、バックアップ体制を強化しています」
と話す。

取組の成果
 ~男性の4分の1が育休取得

 さまざまな取組の結果、直近3年間の女性の育休取得率は100%で、出産や育児を機に退社する従業員はいなくなった。また、女性が全員育休を取ることで休みやすい雰囲気が醸成され、育休取得の意識が男性にも広がっており、19年には男性で該当77人に対して19人と、4人に1人が育休を取得した。また「短時間勤務者が増えたこともあり、自分も効率を考えて仕事をするようになった」や「短時間勤務者への配慮や、休みの人をカバーし、サポートし合える雰囲気や環境が整ってきた」などの声も挙がっている。

課題や今後の目標
 ~フレックスタイムでより柔軟な働き方実現へ

 これまでの取組を続けながら、従業員が一層働きやすい環境づくりを目指すという。特に労働時間の削減、生産性の向上を一層強化していく方針だ。始業や終業の時間を規定の中で自由に選べる「フレックスタイム制」の導入や、より休みを取りやすくする仕組みとしての「バースデー休暇」の新設などで、より柔軟な働き方を実現していきたいという。

従業員からの評価

シート設計課
有田 優紀 主任

 16年に3人目の子どもが生まれ、2週間の育休を取りました。職場ではワークライフバランスに対する理解が進み、取得する男性が増えています。育休を通して、妻に多大な苦労をかけていることを、身を持って経験できました。休みの間、チームのメンバーにもフォローしてもらい感謝しています。子どもの発熱時などに使える特別時間公休も利用しやすく、助かっています。

経理課
中野 朝美 さん

 終業後に会社が開く従業員向け語学研修に入社間もなくから参加しています。18年には会社負担で米国への語学留学を経験させてもらいました。当初は趣味で勉強を始めた程度でしたが、帰国後は海外の会社からの入金処理の担当に。英語で書かれた関係書類を読めるようになり、留学経験を業務に生かしています。休日は外国人と交流できるボランティアを始めるなど、公私共に充実しています。

取材日 2020年2月

会社概要

デルタ工業株式会社
所在地:安芸郡府中町新地1-14
URL:http://www.deltakogyo.co.jp/
事業内容:自動車用部品(シート)の開発・設計・製造
従業員数:1271人(男性1062人、女性209人)
(2019年12月時点)

情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com