「まずはやってみる」試行錯誤し改革進める
社内整備で生産性やモチベーション向上

株式会社フォーデック

取り組んだ背景
 ~世代間バランスに課題、安定した定着と採用に向け改革着手

 中四国地区を営業エリアに、文具の卸販売、IT関連機器・サービス、オフィス家具などの販売を行う。現状、60代、40代、20代の従業員が多い一方で、その間の50代、30代が少なく、世代間バランスが経営課題となっているため、長期的な視点で従業員教育を実施している。また、今後の労働者人口の減少を見据え、今勤める従業員が安定して働きながら新しい人材も着実に採用・育成し、企業の成長を実現するために、働き方改革の必要性を感じていたという。常務取締役の岡本祐太郎氏は、
「時代や市場環境が大きく変化していく中で、将来を見据えて誰もが充実して働き続けられる職場環境の整備を進めなければと考え、働き方改革に本格的に取り組むことにしました」と話す。

主な取組と工夫点

◆部署を横断するプロジェクトチーム発足
 改革の推進役として、各拠点、各事業部の16人でつくる「働き方改革プロジェクトチーム」を2019年5月に発足した。新入社員からベテランまで幅広い年齢層をそろえ、役員からは岡本氏が参加する。業務効率化による時間外労働の削減や有給休暇の取得促進、生産性の向上、福利厚生の充実などさまざまなテーマについて2週間に1度のペースで議論を重ねている。岡本氏は、
「それぞれが自分の部署の課題を持ち寄り、改善について熱心に議論しています。私が意識しているのは、コストなどを気にせずに何でも思ったことを発言してもらうこと。まずは否定せずに意見を受け止めています。そうしないと当たり障りのない意見ばかりが出て、従業員の本音を引き出せなくなります」と話す。
このチームが主導し、ノー残業デーの実施、フレックスタイム制度の導入、働き方改革実践企業の認定を目標に、取組を進めた。

◆個人・部門ごとに日程を決めるノー残業デー
 19年11月からは週1回のノー残業デーを全社に導入した。曜日は個人、部門ごとに任せ、事情に合わせて自由に決められるようにした。
「当初、曜日を全社で統一した方がいいのではという意見もありましたが、個人や部署で繁閑の曜日が異なることもあり、個々のやりやすさを尊重しました」と岡本氏。
実施日はファイル共有ツールでお互いの予定を確認するほか、残業しないことを表明する「意思表示カード」を作り、ノー残業デーを実施する日にデスク上に掲示するように。定時退社を周囲に宣言することで終業間際の仕事の依頼などが減り、残業削減に効果があるという。

◆社内環境整備でモチベーションも向上
 事業部の一つに取引先のオフィス環境整備を支援する部署がある。世間で働き方改革の機運が高まる中、自社内でもオフィス環境の整備に先行して取り組まなければ説得力に欠けると考え、まず岡山支店を移転新築し環境整備を行った。天板を上下に昇降できるデスクの導入、複合機のペーパーレス化、集中力を高める音響システム、カフェスペースの設置など、最新鋭のオフィスに整えた。岡本氏は、
「岡山支店は物理的な環境(ハード面)を変えたことで、従業員の意識(ソフト面)も変わってきていると実感しています。本社ビルも老朽化が進んでいることから、岡山での経験を生かし、早期に本社を含む他拠点にも展開していきたい」と話す。

◆スキルマップで能力の見える化
 階層別の教育体系を確立し、それぞれの従業員の階層に応じた研修を行うことで、一人一人のスキルアップを図っている。また自社独自のスキルマップを19年5月に事業部ごとに作成し、業務上で必要なスキルを〝見える化〟して、効果的な人材育成、モチベーションの維持・向上につなげている。
 新入社員には入社直後の本社での集合研修のほか、定期的に同期が集うフォローアップ研修を実施。日ごろは事業部や支店が異なる職場で働いており、集うことで互いの近況や悩みを共有し、モチベーションの向上につなげている。毎年4~5人を新卒で採用しているが、ここ3年間の離職者はゼロを維持している。

多様な働き方を目指すフレックスタイム制度

 20年2月から「フレックスタイム制度」を本社のオフィス環境事業部などでスタートした。午前10時~午後3時をコアタイムとして、その前後の午前6~10時と、午後3~9時をフレキシブルタイムとした。当該部門はオフィス設計を手掛け、時期によっては夜遅くまで勤務することもある。その場合は翌朝にゆっくりと出社するなど、柔軟に働ける体制を目指している。岡本氏は、
「狙いの1つはクリエイティブな仕事環境を提供し、業務効率を高めること。その結果、残業を減らすことができればと考え、いずれは全社への展開を予定しています」と、展望を語る。

取組の中で苦労したこと
 ~従業員全員への浸透には時間がかかる

 ノー残業デーで一定の成果は見えたが「まだ実行できていない従業員がいることは認識しています。全ての従業員に、どうやって浸透させていくのかが課題」と岡本氏。
5年ほど前、「支社制」から「事業部制」に移行。支社の中に複数の事業部が入っており、支社をまたいだ各事業部内の縦の意思統一はしやすくなったが、今度は支社単位での情報共有が難しくなったという。
「従来の支社単位でも協力体制を敷き、なぜそれに取り組まなければならないのかを地道に伝え、全従業員を巻き込んでいきたいです」と、岡本氏は意気込む。

取組の成果
 ~有休取得、残業削減に成果

 ノー残業デーなどの取組が奏功し、開始から20年2月までの3カ月の運用で、1人当たりの月平均の残業時間が4~5時間減った。また、19年12月までに5日間の計画有休の取得を決め、各自に取得を促したことで、それまで有休をほぼ取得していなかった従業員も休むように。働き方改革の取組が少しずつ浸透したことで、育児休業や育児時短勤務についても「これまでよりも取得しやすい社風になってきた」との声も挙がっている。

課題や今後の目標
 ~まずはやってみる。試行錯誤しながら改革進める

 フレックスタイム制度について「とりあえず3カ月間は試行期間」とし、岡本氏は、
「まずはやってみる。よければ広げるし、だめだったら方向転換する。試行錯誤しながらやるしかありません。そんな気持ちでスピード感を持って、改革を進めることを意識しています」と話す。

 また、働き方改革が「働かない改革」にならないように気をつけているという。残業をしないことが最終目的ではなく、生産性を上げて空いた時間を家族との時間やスキルアップなど有効に活用することを目指す。今後について岡本氏は、
「『TIME IS FOR LIFE ~みんな笑顔でWIN WIN WIN ♪~』という改革のテーマを設けて、このテーマに相応しい会社になれるよう今後も取組を続けていきます」と、抱負を語った。

従業員からの評価

文具事業本部 営業部
吉本 夏海 さん
 文具の営業担当として働いていましたが、出産を機に育児休業を取得、19年11月に復帰しました。復帰するとノー残業デーの取組が始まっていたり、休みが取りやすい雰囲気になっていたりし、会社の変化に驚きました。

 女性営業職で育休を取得したのは2人目。私が取得することで、後輩の女性は取りやすい環境であるとわかり、安心してもらえたのでは。今は午後4時までの時短で働いています。また、営業として担当先を持つと時間外で対応しなければならないこともあるため、営業アシスタントとして復帰させてもらえたのもありがたかったです。女性にとって働きやすい職場環境であると感じています。家庭では家事・育児に集中できています。

取材日 2020年2月

会社概要

株式会社フォーデック
所在地:広島市西区商工センター6-9-39
URL:https://www.fordec.co.jp/
事業内容:文具卸、IT関連機器・サービス、オフィス家具等の販売
従業員数:446人(男性239人、女性207人) ※パート、アルバイト含む
(2019年5月時点)

情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com